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2024年

大麻草に多く含まれているテルペノイドの一種であるβ-カリオフィレンについて


2024/05/10

本学会に大麻草に多く含まれているテルペノイドの一種であるβ-カリオフィレンについてのお問い合わせがあったので、現時点での最新のレビュー論文の仮訳を紹介します。
β-カリオフィレンは、植物性カンナビノイドではありませんが、カンナビノイド受容体に作用することで注目されている成分です。


カンナビノイド受容体2型選択的アゴニストであるβ-カリオフィレンの感情・認知障害における作用

要旨
精神疾患は、世界的な疾病負担の中で最も蔓延している疾患の一つであり、2030年までにうつ病が最も大きくなると予想されている。COVID-19のパンデミックは、特に青少年の間でこのような課題を悪化させた可能性があり、青少年は孤立、日常生活の乱れ、医療アクセスの制限を経験した。


パンデミックは、認知症状と精神病理学的症状の両方を特徴とする「長期COVID」として知られる長期的な神経学的影響と関連している。一般に、長期COVIDを含む精神疾患は、神経炎症につながる広範な炎症に起因すると考えられている。

近年、エンドカンナビノイド系(ECS)が、うつ病や不安症の病態生理学に対処するための潜在的な標的として浮上した。具体的には、カンナビノイド2型受容体(CB2R)と選択的に相互作用する天然または合成カンナビノイドが、向精神薬としての活性が限られているか、あるいは活性がない神経精神疾患における新たな治療可能性を最近明らかにした。

最も有望な天然CB2Rリガンドの中でも、二環式セスキテルペンであるβ-カリオフィレン(BCP)は、優れた抗炎症・抗酸化治療薬として浮上している。本総説では、BCPの免疫調節作用と抗炎症作用を強調し、うつ病や不安症の治療薬としての可能性を明らかにする。

原文 Ricardi, C.; Barachini, S.; Consoli, G.; Marazziti, D.; Polini, B.; Chiellini, G. Beta-Caryophyllene, a Cannabinoid Receptor Type 2 Selective Agonist, in Emotional and Cognitive Disorders. Int. J. Mol. Sci. 2024, 25, 3203.
https://doi.org/10.3390/ijms25063203


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LinkIcon ダウンロード:カンナビノイド受容体2型選択的アゴニストであるβ-カリオフィレンの感情・認知障害における作用

【演題募集】第10回学術集会・総会の演題募集情報を追加しました


2024/04/30

演題募集ページ を公開しました。

本学会の一般向けの公式サイトを公開しました


2024/04/09


●一般向けの公式サイト( https://cannabinoids.jp )を公開しました。

本学会は、2015年の設立以来、m3.com <エムスリー> という32万人以上の医師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイトのサービスの1つであるWEBサイト開設の場を利用してきました。

新しいサイトでは、デザインを一新し、PC(パソコン)、スマートフォン、タブレットを含むすべてのデバイスに合わせてコンテンツを自動で最適化しています。サイトのコンテンツは下記の通りになっています。

最新情報、JCAC概要、学術大会、カンナビノイド基礎情報、E-ラーニング講座、出版/学術誌、倫理審査委員会等の活動、国際会議/論文投稿支援、リンク集、入会案内

一般向けサイト
https://cannabinoids.jp


75年ぶりに大麻法が改正したので、「法制度の改正」内容は更新

カンナビノイド医薬品、ハーブ医薬品、ハーブ大麻、ヘンプ由来CBD製品に分類して、合法と違法を解説しています。

●旧来のサイトは、会員入会手続きと会員向けコンテンツに

旧来からのWEBサイトは、医療従事者・研究者が加入する正会員と、賛助法人会員/賛助個人会員のための会員向けのサイトに区別し、会員加入手続きについては、引き続きm3.comのシステムを利用していきます。また、会員向けサイトは、設立当初からの過去9年間の発表資料や演題録画、約130タイトルを視聴することができ、会員限定のコンテンツを提供しています。

会員向けサイト
http://cannabis.kenkyuukai.jp/


引き続き、本学会をよろしくお願いします。

国連麻薬委員会にて「ハームリダクション(二次被害低減)」措置を認める決議が採択


2024/03/29


2024年3月18日から22日に行われていた第67会期国連麻薬委員会(CND)の3月22日にオーストリア・ウィーンにて歴史的な決議が行われました。

ほとんどの国連会議やフォーラムでは、コンセンサス(合意)のために必要に応じて投票を行います。しかし、ウィーンで行われる国連麻薬委員会(CND)では、すべての決議や政策文書が全会一致で合意されることを基本とし、特定の加盟国が進歩的な表現や気に入らないものをブロックすることが認められていました。

この全会一致の合意(ウィーン精神と呼ばれる)が壁となって、「ハームリダクション(二次被害低減)」を求めた提言書決議において、これまで長い間、否決されてきました。

ハームリダクション(二次被害低減)とは、ニコチンやアルコール、ギャンブル、違法薬物など、心身に悪影響を及ぼす行動がやめられない依存症に対して、二次的に起こり得る健康被害や社会的弊害を可能な限り減らすための対策することを示しています。

米国は、ロシアや中国と共に何十年にもわたって、ウィーンで「ハームリダクション(二次被害低減)」という用語が受け入れられるのを最も激しく妨げていた国でしたが、今回は180度の変革を示していました。何時間にもわたる交渉の末、ハームリダクションへの言及9件が1件に減らされたものの、ロシアによって投票が呼びかけられました。

その結果、投票権のある53か国中、賛成38、反対2、棄権6となり、この決議に対する圧倒的な支持が得られました。

採択された提言書
E/CN.7/2024/L.5/Rev.2
バランスのとれた包括的で科学的証拠に基づいたアプローチの一環として、違法薬物使用に伴う被害に対処するため、予防、治療、ケア、回復措置、その他の公衆衛生介入を通じて薬物過剰摂取の予防と対応を行う


賛成票38 (53 カ国中): アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、フィンランド、ガーナ、グアテマラ、ハンガリー、インド、インドネシア、イタリア、日本、リトアニア、マルタ、メキシコ、モロッコ、オランダ、ペルー、ポーランド、ポルトガル、韓国、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スイス、タイ、トリニダード・トバゴ、英国、米国、ウルグアイ

反対票2 (53 カ国中): 中国、ロシア連邦

棄権6 (53 カ国中): アルジェリア、アルメニア、バングラデシュ、ドミニカ共和国、イラン、ジンバブエ

ハームリダクションは、国連総会 (2001年) や人権理事会 (2023年)で長年にわたって行われてきたように「合意された文言」としての地位を少しずつ確立してきました。今回の決議は、ウィーンで行われる国連麻薬委員会(CND)の投票への忌避感(タブー)の慣習が打ち破られた瞬間でもありました。

我が国の薬物政策は、厚生労働省の医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課が担ってきましたが、2018年から同省の社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課に「依存症対策推進室」が設置され、ハームリダクションの考え方を担う部署ができています。また、第六次薬物乱用防止五か年戦略(2023年8月策定)においても、厳罰アプローチを堅持しつつ、依存症患者に対する回復と支援にも言及されており、このような背景から日本も提言書決議の賛成に投票したことが推測できます。

引用:
https://www.unodc.org/unodc/en/commissions/CND/session/67_Session_2024/draft-proposals.html
https://cndblog.org/2024/03/plenary-items-10-11-and-12/
https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2024/march/20240322_harm-reduction

補足説明

●厳罰アプローチ  1971−2010年頃
・薬物使用者に刑罰を科す
・ダメ。ゼッタイ。
・感情的イデオロギー
・問題を抱えた人を「ダメなやつ」と切り捨て、社会から排除、孤立させ、地下に潜らせる
<社会的に作られた”いじめ”の構造>


●健康アプローチ  国連共通見解の2018年〜
・ハームリダクション(harm reduction 二次被害軽減)
・2001年からのポルトガル薬物政策:すべての薬物を非犯罪化
・サイエンスに基づく新しい公衆衛生の考え方
・薬物問題を抱えた人を支援
・孤立しないようにする
・薬物周辺の問題を見る(貧困、健康、住居、就労、教育など)


参考文献:松本俊彦,古藤吾郎,上岡陽江編著「ハームリダクションとは何か」中外医学社、2017

<参考文献>

2016年 1998年以来の世界薬物特別総会(UNGASS2016)の成果文書A/RES/S-30/1
→従来の需要削減、供給削減、国際協力の3本柱に、健康、開発、人権、新たな脅威の4本柱を加えた。

http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=99841

2018年 国連人権理事会決議37/42「人権に関する世界の薬物問題に効果的な取組み及び対策の ための共同コミットメントの実施への貢献」, 「世界の薬物問題に効果的に取組み、対処するための共同コミットメットの実施と人権について」国連人権高等弁務官報告書A/HRC/39/39、国連システム事務局長調整委員会(CEB)にて「効果的な国連機関間の連携を通じ た国際薬物統制政策の実施を支援する国連システム共通の立場」を全会一致で支持
→ この年に初めて国連全体で、実質的に人権擁護と健康対策に焦点を当てた 公衆衛生アプローチが薬物政策の中心となった。

http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=89565

国連薬物犯罪事務所(UNODC)・世界保健機関(WHO)「薬物使用防止に関する国際基準第2版」→幼児、青年初期、青年・成人期の各段階でエビデンスに基づく予防と政策を示す。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105664

2019年 国連システム調整タスクチーム「過去10年間に私たちが学んだこと:国連の薬物関連制度によって得られ、生み出された知見の要約」→国連システム共通の立場で分析された報告書。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103532

第62会期国連麻薬委員会「世界薬物問題に対処する共同コミットメントの実施加速化の ための国内的,地域的,国際的あらゆるレベルでの活動強化にかかる」閣僚宣言, 国連エイズ共同計画(UNAIDS)世界保健機関(WHO)国連開発計画(UNDP)らが 「人権及び薬物政策に関する国際ガイドライン」を発表,
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103026

国連薬物犯罪事務所(UNODC)が「薬物と持続可能な開発目標(SDGs)の市民社会ガイド」を発表,
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103112

国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界保健機関(WHO)が 「刑事司法制度に接する薬物使用障害者の治療とケア」を発表
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=109437

2020年 国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界保健機関(WHO)が 「薬物使用障害の治療に関する国際基準(2020年版)」を発行
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=106040

2021年 収監に関する国連システムの共通見解→薬物政策における非犯罪化を提唱.
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=113534

2022年国連総会決議_包括的、統合的かつ均衡的なアプローチを通じて世界の薬物問題への取組みと対策A_RES_77_238
2023年国連人権高等弁務官事務所報告書A/HRC/54/53

http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=143035

3月10日の春の学術セミナー2024の演題動画及び資料を会員限定サイトで公開


2024/03/21


本学会の春の学術セミナー2024が3月10日(日)に福岡市博多で開催しました。 本学会としては、初めての地方開催でしたが、スタッフ、参加者あわせて35名の参加がありました。

また、昨年末の大麻法の75年振りの大幅な改正へのきっかけに大きな貢献をした秋野公造参議院議員に対して、本学会からJCAC Leadership Awardを贈呈しました。

過去9年間で、約120演題・動画の視聴、講師の発表した120演題の資料(一部非公開な資料は除く)をすべて見ることができます。最近、会員になった方はぜひ過去の演題で気になったものを見ていただければと思います。

会員限定サイトでご確認下さい。 <動画>
http://cannabis.kenkyuukai.jp/video/


会員限定サイトでご確認下さい。<演題資料>
ダウンロード:http://cannabis.kenkyuukai.jp/subject/subject_list.asp

注:当学会では、学会運営の効率化のためにm3.comのシステムを利用しています。 m3.comのIDのない会員様は見ることができません。



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ダウンロード: LinkIcon 3月10日(日)春の学術セミナーチラシ

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写真: JCAC Leadership Award

米国:マリファナ(大麻)のスケジュールIからVへの再分類を勧告した文書が公開


2024/01/22


米国保健福祉省(HHS)の高官は23年8月29日、米国司法省麻薬取締局(DEA)局長宛の書簡を送付し、マリファナ(大麻)を連邦規制物質法(CSA)のスケジュールIIIに再分類するよう要請しました。

情報公開法(FOIA)要求を利用してスケジュール再分類メモの入手を求めていた弁護士マシュー・C・ゾーン氏が24年1月13日にブログにて、23年8月29日付けの252頁の勧告文書を一般公開しました。

252頁のうち、前半の78頁までの「マリファナ(大麻)を規制物質法のスケジュールVに再スケジュールする勧告の根拠」を仮訳しました。後半は、米国保健福祉省次官補室(OASH)によるCAMU(医療用途)評価の報告となります。


規制物質法(CSA)では、薬物のスケジュールを決定する 8 つの要素があります。

1.実際または相対的に乱用される可能性。
2.知られている場合、その薬理学的効果の科学的証拠。
3.薬物またはその他の物質に関する現在の科学的知識の状態。
4.その歴史と現在の乱用パターン。
5.乱用の範囲、期間、重大性。
6.公衆衛生にリスクがある場合、どのようなリスクがあるか。
7.その精神的または生理学的依存の責任。
8.物質がすでに管理されている物質の直接の前駆体であるかどうか。

これらの8つの要素を詳細に検討しており、次の勧告を出しています。


●勧告(本文仮訳の一部を抜粋)

1.マリファナ(大麻)は、乱用の可能性が スケジュール IおよびIIの薬物やその他の物質よりも低い。

・マリファナに対する一般的な反応として、多幸感などの肯定的な主観的反応のほか、知覚変化、鎮静反応、不安反応、精神医学的、社会的、認知的変化、生理的変化などがある。
・NSDUHの疫学的データによると、マリファナは、比較対象とした違法薬物の中で、過去1年および過去1ヵ月ベースで、米国で最も頻繁に乱用されている違法薬物である。
・非医療的使用の有病率が高いにもかかわらず、疫学的指標を総合的に評価すると、マリファナはスケジュールIまたはIIの薬物に比べて深刻な結果をもたらさないことが示唆されている。

2.マリファナ(大麻)は現在、米国で治療における医療使用が認められている。

・実施された州公認プログラムに従って活動する免許を持った医療従事者(HCP)によるマリファナの医療使用が米国で現在広く行われており、そのような医療使用がこれらの州の管轄下で医療行為を規制する各組織によって認められていると結論づけた。
・FDAは、CAMU(医療用途)テストのパート2の検討対象として7つの適応症を選択した。これらの適応症には、病状に関連した食欲不振、不安、てんかん、炎症性腸疾患、吐き気・嘔吐(化学療法によるものなど)、疼痛、心的外傷後ストレス障害などが含まれる。
・入手可能なデータは、米国でマリファナが臨床で使用されている治療用途のいくつかについて、ある程度の信頼できるレベルの科学的裏付けを提供している。

3.マリファナ(大麻)の乱用は、中等度または低度の身体的依存または高度の精神的依存を引き起こす可能性がある。

・大麻離脱症候群は、マリファナを慢性的に多量に使用している人において報告されているが、時々マリファナを使用する人におけるその発症は立証されていない。
・大麻離脱症候群は、焦燥、妄想、発作、さらには死亡といったより深刻な症状を含むこともあるアルコールに関連した離脱症候群に比べると、比較的軽いようである。
・精神依存を生じる人もいるが、深刻な結果をもたらす可能性は低く、マリファナを使用するほとんどの人に高い精神依存は生じないことが示唆される。


●薬物のスケジュールについて

連邦規制物質法(Controlled Substances Act, CSA)は、薬物を5段階に分類しており、現在、マリファナ(大麻)はスケジュールIに分類されています。分類の最終権限は麻薬取締局(DEA)にあります。( )は、今回の文書で比較対象となった薬物です。

スケジュールI:医療目的での使用禁止、一般に認められた安全性がない
        (ヘロイン、マリファナ(大麻))
スケジュールII:医療目的で使用可能だが、厳しい制約が課される
       (フェンタニル、オキシコドン、ヒドロコドン、コカイン)
スケジュールIII:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクが低・中程度、心理的依存症リスクが高と認識
        (ケタミン、マリノール(合成THC))
スケジュールIV:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクがIIIより低いと認識
        (ベンゾジアゼピン、ゾルピデム、トラマドール)

スケジュールV:医療目的で使用可能だが、身体的依存症リスクがIVより低いと認識

対象外:(アルコール、エピディオレックス;承認時はスケジュールXであった)


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ダウンロード: LinkIcon 米国司法省大麻スケジュールV勧告(前半部仮訳)

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ダウンロード: LinkIcon 米国司法省大麻スケジュールV勧告(原文英語、全252頁)

欧州薬局方(Ph. Eur.)に大麻花が収載することについて


2024/01/16


大麻花(Cannabis flower)は、欧州薬局方 (Ph. Eur.) 追補 11.5 (2024 年 1 月) に掲載され、施行日は 2024 年 7 月 1 日となります。

薬局方とは、各国で定められている医薬品の品質規格書のことです。
大麻花や大麻抽出物モノグラフについては、ドイツ、デンマーク、スイスが先行して収載しています。米国薬局方(USP HMC)にも大麻花のモノグラフ草案が公開され、最終版の発行を待つ段階となっています。

定義
カンナビス・サティバ(Cannabis sativa L.)の雌花序を完全に成熟させ、全体または断片化して乾燥したもの。

規格
高THCタイプ(THC優勢タイプ)    THC≧5% CBD≦1%
THC/CBDタイプ(THC/CBD中間タイプ)THC≧1% CBD≧1%
高CBDタイプ(CBD優勢タイプ)    THC≦1% CBD≧5%

同定
形態学的検査とクロマトグラフィー検査

品質
異物:最大2%まで、種子を含まず、ハーブ薬全体が長さ 1.0 cm 以上の葉を含まないこと。
乾燥減量:最大 12.0%まで
ヒ素:0.2 ppm
カドミウム:0.3ppm
鉛:0.5ppm
水銀:0.1 ppm

マイコトキシン(アフラトキシンPh. Eur. 2.8.18)、殺虫剤(Ph. Eur. 2.8.13) および微生物学的品質(Ph. Eur. 5.1.8 または5.1.4、投与経路に応じて)は、一般的な欧州薬局方(Ph. Eur.) を参照する必要があります。


注意点:欧州薬局方(Ph. Eur.)に大麻花が収載されても、欧州全域でハーブ大麻が医薬品として直ちに流通するわけではありません。EU医薬品制度におけるハーブ医薬品モノグラフへの収載のための科学的データの評価(各国が実施する)が必須となります。その辺りの事情については、次のQ&Aを参照下さい。

大麻由来医薬品およびEU医薬品規制におけるハーブ医薬品モノグラフの範囲に関するQ&A

本Q&Aは、大麻由来成分の製造に携わる関係者がEUの医薬品規制制度について豊富な経験を有していない可能性があることから、EUにおける医薬品の製造販売承認を取得するための規制要件を明確にすること(Q1)、およびEUのハーブ医薬品モノグラフに関するハーブ医薬品委員会(HMPC)の作業について説明すること(Q2、Q3)を目的としている。

質問 1a
EUには、大麻由来の医薬品に関する特定の枠組みがありますか?
質問 1b
大麻由来の活性成分を含む医薬品は、EUでどのように認可されますか?
質問 1c
ハーブ医薬品に特別な規定はありますか?
質問 2a
EUハーブモノグラフとは何ですか?
質問 2b
HMPCはすべての植物由来医薬品についてEUのハーブモノグラフを作成できますか?
質問 2c
カンナビス・フラワー(Cannabis flos)またはその他の大麻由来のハーブ成分およびハーブ調剤に関するEUのハーブモノグラフを作成するためのデータはどのように評価されますか?
質問 2d
カンナビス・フラワーまたはその他の大麻由来のハーブ成分およびハーブ調剤の確立された使用をカバーするEUハーブモノグラフを確立するために、データはどのように評価されますか?
質問 2e
カンナビス・フラワーまたはその他の大麻由来のハーブ成分およびハーブ調剤の伝統的な使用をカバーするEUハーブモノグラフを確立するために、データはどのように評価されますか?
質問 3
HMPCによる評価のために科学的データを提出する方法とその手順は?


<参考>
欧州医薬品庁「大麻由来医薬品の用語と定義の整理」2022年
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=126877

詳しくは、下記資料をダウンロードしてください。


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ダウンロード: LinkIcon 欧州薬局方 大麻花(2024)

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ダウンロード: LinkIcon 欧州医薬品庁大麻由来医薬品FAQ

リアルワールドエビデンスの価値: 医療用大麻の場合 12の提言


2023/12/25


医療用大麻のエビデンスをどのように構築すべきか?の1つの答えとして、リアルワールドエビデンス(RWE)が注目されています。レビュー論文がありましたので仮訳しました。


要旨
ランダム化比較試験(RCT)は長い間、医学的エビデンスのゴールドスタンダードと考えられてきた。大麻由来医薬品(CBMPs)に関しては、このRCT重視の姿勢が、英国における非常に制限的なガイドラインにつながり、患者のアクセスを制限している。

現在、大麻由来医薬品(CBMP)に関するRCTエビデンスは不十分であるというのが一般的な意見である。商業的な理由もさることながら、大きな問題は、RCTが全ての植物性医薬品の研究に適していないことである。

この課題に対する一つの解決策は、エビデンスの基盤を広げるために、患者報告アウトカム(PRO)を用いたリアルワールドエビデンス(RWE)を用いることである。このようなデータは、医療用大麻が患者の生活にプラスの影響を与えることをますます強調している。

この論文では、介入と患者を医療下で縦断的に研究するこのアプローチの価値について概説する。大麻由来医薬品(CBMP)との関連において、RWEには幅広い利点がある。これには、より大規模な患者群の研究、大麻由来医薬品(CBMP)の構成要素のより広範な範囲と比率の使用、より多くのより稀な病態の組み入れなどが含まれる。重要なことは、RCTとは対照的に、重大な合併症を持つ患者や幅広い人口統計学的プロファイルの患者も研究できるため、生態学的妥当性が高く、患者数が増加する一方で、大幅なコスト削減が可能になることである。

最後に、医療用大麻に関するRWEの価値について、12の重要な提言を概説する。本稿が、政策立案者や処方者が医療用大麻に関連するRWEの重要性を理解し、患者にとって不利益な現状を克服するためのアプローチを開発する一助となれば幸いである。

12の主要な提言

1. 大麻は優れた安全性プロファイルを有し、確立された医薬品(medicinal products)である。多くの患者中心のアプローチが適用可能であり、すでに適用されていることから、ランダム化比較試験(RCT)エビデンスの欠如という懸念は見当違いである。

2. リアルワールドエビデンス(RWE)アプローチは、広範な疾患にわたる大麻由来医薬品(CBMP)の臨床効果エビデンスの開発を加速させる鍵であるため、現在のRCT中心から脱却し、RWEの結果を取り入れる必要がある。医療用大麻のRWEにおける患者数は、これまでのすべてのRCTの合計よりもはるかに多く、時間的感度も高い(継続的な縦断的データ取得のため)。

3. RWEは、RCTの結果では得られない特定の患者に関するデータを提供できる。医療の現実は、すべての患者にとって、すべての新しい治療がn=1の実験であるということである。個々の患者のアウトカム(転帰)測定は、治療価値のゴールドスタンダードである。

4. RWEはRCTよりもはるかに多くの患者から得られるため、より生態学的に妥当なデータを提供する。RCTでは通常、併存疾患のある患者は除外されるが、臨床現場ではそのような患者が大多数を占めるからである。

5. 新薬の広範な有用性と臨床アウトカム(転帰)の生態学的妥当性を向上させるためには、RWEが不可欠であるとのコンセンサスが、実務者や規制当局の間で高まっている。このような進歩は、個人の治療プロトコルを最適化し、21世紀の医療における重要な目標である個別化医療や精密医療への移行を支援する上で大いに役立つであろう。

6. 西洋医学のRCTでは、歴史的にWEIRD(西洋人、高学歴、工業化、富裕、民主主義)の参加者が圧倒的に多いため、その結果は一般集団を代表するものではない。このような部分集団に基づく有効性は、医療における民族的・人種的格差をもたらす。これは、リアルワールドから得たより代表的なデータの取得によって、積極的に対抗することができる。

7 .欧州医薬品庁(EMA)は最近、疾患、集団、医薬品の用途と性能に関するリアルワールドのエビデンスを提供するため、データ解析とリアルワールド問診ネットワーク(DARWIN EU)を立ち上げ、リアルワールドデータ(RWD)の価値に対する理解の高まりを裏付けている。

8. RWEは、現在の科学的エビデンスベースを発展させるための、より多くのデータの必要性に対処することができる。これまでのところ、医療用大麻の患者や処方箋の枚数について、国を超えて均質なデータ収集方法はない。カナダでは、大規模なデータベースの開発により、副作用を監視し、より効果的に管理できるようになった。そして、その結果を規制や政策立案に反映させることができる。

9. 大麻由来医薬品(CBMP)の利用可能なRWEエビデンスは、様々な臨床状態におけるその利点を強調している。特に治療抵抗性の患者や特定の病状において、大麻由来医薬品(CBMP)は重要な治療選択肢となりうる。

10.  患者報告アウトカム(PRO)は重要である。優れた医療行為に関するGMC(英国医療総合評議会)のガイダンスでは、すべての登録医師が患者の意見や経験を考慮し、尊重しなければならないことを明確にしている。理想的には、医師は適応をより明確にするために、患者とともにエビデンスを構築すべきである。データギャップが大きい分野では、より厳密な研究やRCTが必要である。

11. 安全性データの収集は不可欠である。医師やその他の医療提供者は、あらゆる治療の結果をモニターできる必要がある。副作用は、例えば英国のイエローカード制度や医薬品固有のデータベースを通じて登録され、対処されなければならない。

12. ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)は引き続き重要である。害があれば報告する必要がある。特に医療用大麻の処方と依存に注意を払うべきである。特定の医療用大麻依存に関する質問票が開発されており、臨床ファーマコビジランスに含めるべきである。

参考
リアルワールドエビデンス(RWE)について
https://www.phrma-jp.org/wordpress/wp-content/uploads/2022/02/Current_Status_Challenges_and_Future_Perspectives_of_Real-World_Data_and_Real-World_Evidence_in_Japan.pdf

原文
Anne Katrin Schlag, Rayyan R. Zafar,Michael T. Lynskey, Alkyoni Athanasiou-Fragkouli, Lawrence D. Phillips, and David J. Nutt. The value of real world evidence: The case of medical cannabis. Front Psychiatry. 2022; 13: 1027159. https://doi.org/10.3389%2Ffpsyt.2022.1027159



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ダウンロード: LinkIcon リアルワールドエビデンスの価値(2022)

春の学術セミナー2024

開催期間

2024/03/10 13:30 〜 2024/03/10 16:30

募集期間

『演題募集期間中』

登録受付開始: 2023/12/18 00:00

登録受付締切: 2024/02/10 00:00

概要

24年3月10日(日)の一般演題発表者を募集しています

 学会理事、正会員(医療従事者)様からは、カンナビノイドの使用による症例報告、海外事例調査報告、国際会議参加報告、海外論文紹介などの発表者を求めています。

 賛助会員(法人、個人)様からは、CBD製品の利用者アンケートの報告、会員外の医師と連携した症例報告、海外事例調査報告などの発表者を求めています。

過去の一般演題(ご参考)
 症例報告 0.1%CBD軟膏による皮膚炎症製疾患の治療経験
      CBDでの急性アルコール中毒症状の改善例
      CBDオイル使用体験談 境界型糖尿病とうつ病の症例報告
      獣医分野・犬猫へのCBDサプリメント利用事例
 海外事例 タイにおけるカンナビノイド利用の現状と展望
      臨床研究及び市販品から見たCBDの摂取量の目安
 調査報告 ヘンプシードオイルと内因性カンナビノドの関係性
      PURE CBDオイル製品の購入者分析及び開発報告
 会議報告 第9回国際カンナビノイド医療学会(ICAM)参加報告

形式:15分(10分発表+5分質疑応答)又は30分(20分発表+10分質疑応答)

過去8年間の110演題の発表は、本学会が導入しているm3.comシステムにより、会員限定サイトにて、発表者のパワーポイント資料及び動画を見ることができる環境を整えています。

一般演題発表者は、当学会ホームページの「演題募集」サイトから必要事項を記載してお申込み下さい。
一般演題発表内容やテーマについて事前に相談したい方は、事務局までお問い合わせ下さい。

改正大麻取締法が臨時国会で審議可決されて法律として公布


2023/12/14


厚生労働省による21年大麻等の薬物対策のあり方検討会(全8回)、22年大麻規制検討小委員会(全4回)を経て、23年1月12日の厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)にて法改正の方向性が了承されました。

令和4年度第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30193.html


法改正の審議から公布まで流れは下記の通りです。

本学会からは、参議院 厚生労働委員会の参考人として太組理事長が対応しました。

関係者の尽力により、大麻由来の医薬品については、医師も患者も使用禁止とした大麻取締法第四条が全削除となり、大きな第一歩になったものと評価できます。

今後は、改正法に基づく政令・省令などの細則が決定していくものと思われますので、引き続き注視していきます。


大麻草の栽培の規制に関する法律案、麻薬及び向精神薬取締法を一部改正する法律案
令和5年10月24日閣議決定
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/212.html

大麻取締法75年ぶり改正へ 参考人質疑【#国会中継】衆議院 厚生労働委員会 〜令和5年11月10日〜
https://www.youtube.com/watch?v=iKhXVkxJmTo

【#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法などの改正案で参考人質疑 〜令和5年11月30日〜
https://www.youtube.com/watch?v=X1JzUNZ-8PM

【#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法ほか改正案 〜令和5年12月5日〜
https://www.youtube.com/watch?v=fUzUHniGYNo

【#国会中継】参議院 本会議 〜令和5年12月6日〜
https://www.youtube.com/watch?v=rJOWU90m6Ew

議案審議経過情報
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDA7E6.htm

令和5年12月13日官報号外第260号 
法律第八十四号 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律 公布
https://kanpou.npb.go.jp/

令和5年12月15日掲載
「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の公布について
(令和5年12月13日医薬発1213第1号)(PDF,3309KB)
【医薬局監視指導・麻薬対策課 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法関係】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T231215I0010.pdf


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ダウンロード: LinkIcon 改正大麻法/麻向法

米国FDA 大麻および大麻由来化合物: 臨床研究のための品質に関する考慮事項 産業界向けガイダンス


2023/11/30



米国食品医薬品局(FDA)から大麻の臨床試験に関するガイダンスが23年1月に発効されました。下記、はじめにの部分を掲載し、詳しくは仮訳した本文(ダウンロード)をご覧ください。



I.はじめに

本ガイダンスは、大麻または大麻由来化合物を含むヒト用医薬品の開発に関連する臨床研究に関連するいくつかのトピックに関するFDAの現在の考え方を概説するものである2。連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)201条(g)に定義されるように、医薬品には、疾病の診断、治癒、緩和、予防、または治療を目的とするあらゆる製品、または身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的とするあらゆる製品(食品を除く)が含まれる3。

一般的に、これは、治療上の利益を主張して、または他の疾患に関連する主張で販売されるすべての製品(大麻または大麻由来化合物を含む)は、薬物とみなされることを意味する。生物学的製剤でない医薬品が合法的に州際通商で販売されるためには、一般的に(1)新薬承認申請(NDA)または簡略化新薬承認申請(ANDA)プロセスを通じてFDAの市販前承認を受けるか、(2)特定の一般用非処方薬の場合は、承認されたNDAまたはANDAなしで販売するためのFD&C法の要件を満たす必要がある4。

ヒト用医薬品の製造に使用される可能性のある大麻及び大麻由来化合物には、植物由来の原料、抽出物及び高純度物質が含まれる。本ガイダンスは、このような大麻および大麻由来化合物を臨床研究のためのヒト医薬品に使用するために開発することに関心のあるスポンサーに対する推奨事項を提供するものである。

本ガイダンスは、他の完全合成医薬品と同様に規制される、大麻関連化合物(例:ドロナビノール)として知られる大麻に含まれる物質の完全合成版の開発には言及していない。このガイダンスは、ヒトに使用する医薬品の開発に限定されており、FDAが規制する他の製品は対象としていません。

このガイダンスは、大麻に関連する法的定義と規制管理(セクションIIを参照)に対応し、大麻および大麻由来化合物を含む医薬品に関する公聴会で提起された特定の質問に対応している5。また、このガイダンスは、他の医薬品開発者よりもFDAや我々の権限に馴染みが薄いかもしれない関係者に、FDA規制の重要な概念を紹介している。

一般に、FDAのガイダンス文書は法的強制力のある責任を定めるものではない。その代わり、ガイダンスは、トピックに関するFDAの現在の考え方を記述したものであり、特定の規制または法的要件が引用されていない限り、推奨としてのみみなされるべきである。FDAのガイダンスにおけるshouldの使用は、何かが提案または推奨されているが、必須ではないことを意味する。


目次
I.はじめに 1
II.背景   2
III.推奨事項 3
 A.大麻の供給源 4
 B.品質に関する情報源 4
 C.規制薬物法(CSA)における管理状況の検討 8

原文はこちら
https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/cannabis-and-cannabis-derived-compounds-quality-considerations-clinical-research-guidance-industry


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


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ダウンロード: LinkIcon 大麻および大麻由来化合物: 臨床研究のための品質に関する考慮事項 産業界向けガイダンス

カナダ保健省:カンナビジオールの評価 大麻を含有する健康食品に関する科学諮問委員会報告書

2023/11/30



カナダは、1998年に産業用大麻を合法化、2001年に医療用大麻を合法化、2018年に嗜好用大麻を合法化し、世界の大麻政策をリードしている国の1つです。

カナダ保健省の科学諮問委員会によってカンナビジオール(CBD)の評価が行われ報告書に22年7月にまとめられた。

本報告書の勧告は、次の通りです。詳しくは本文をご参照下さい。

勧告A
委員会は、健康な成人が他のすべての薬物や物質の使用について薬剤師と相談することを条件に、CBDを1日20 rから1日200 mgの経口投与で短期使用(最大30日間)することは安全であり、容認できることに全会一致で同意した。

勧告B
委員会は、CBDを含むすべての健康食品に、CBDと他の薬物やアルコールとの相互作用の可能性について記載し、妊娠中、授乳中、妊娠を検討している人、大麻、カンナビノイド、製造過程の他の成分に対してアレルギーや過敏症を持つ人には使用しないことを強く推奨する。
また、CBD製品が胎児の発育に有害な影響を及ぼす可能性があるため、本製品は妊娠中、妊娠を検討している人、授乳中の人には使用しないでください、という警告を製品ラベルおよび添付文書に目立つように記載することが強く推奨されている。

勧告C
委員会は、CBDを含む健康食品のパッケージには、明確な服用方法と潜在的な副作用の警告を記載し、副作用は高用量でより悪化することを強調することを推奨する。

勧告D
CBDは依存性を持たないが、委員会は、大麻を含む健康製品には、それらの適応症への使用を検証した決定的な研究がないため、オピオイドやアルコールの消費を抑えることを目的としないことを明確にする警告を表示するよう推奨している。

勧告E
委員会は、CBDを含む健康食品の承認には、考えられる効果やリスク、安全性に関する情報、CBDの非処方薬としての使用に関する研究知識のギャップについて説明するための一般教育を伴うべきであることを推奨する。

勧告 F
委員会は次のことを勧告する。
- CBDを含む健康食品のラベルは、複数の使いやすい報告オプションを提供することによって、消費者がその製品を使用した結果生じた副作用を報告することを奨励すべきである。副作用を報告するためのすべてのプラットフォームとリソースは、より広いカナダのコミュニティにとって公平なアクセスを確保するように設計されるべきである。
- CBDを含む健康食品は箱入りにすべきである。そうすれば、販売するたびに、その製品に関する重要な詳細を記載した折り込みチラシを同封することができる。
- 他の薬を服用している場合は、薬剤師に相談することが奨励されるべきである。したがって、CBDを含む健康製品は薬局でのみ入手可能であるべきである。

勧告 G
伴侶動物におけるCBDの使用について入手可能なエビデンスのうち、小委員会のメンバーは、犬におけるCBDの使用については十分な安全性のエビデンスのみが存在することに同意した。特に、0.2〜2mg/kgの超低用量で1日2回経口投与した場合である。

勧告 H
小委員会のメンバーは、犬の変形性関節症に伴う痛みの治療に対するCBDの有効性に関する十分なエビデンスがあることに同意したが、特定の用量を推奨するには情報が不十分であった。

勧告I
- 小委員会は、犬専用のCBD製品は、獣医師による変形性関節症の診断が確定していることが望ましいと勧告した。
- より多くの安全性と有効性の情報が得られるまで、飼い主はペットにCBDを投与する前に獣医師に相談すべきである。

勧告 J
委員会は、大麻、CBD、その他の植物性カンナビノイドの安全性と有効性に関する質の高い臨床研究が、政府や資金提供機関によってさらに支援されるべきであると勧告する。


原文:Report of the Science Advisory Committee on Health Products Containing Cannabis
https://www.canada.ca/en/health-canada/corporate/about-health-canada/public-engagement/external-advisory-bodies/health-products-containing-cannabis/review-cannabidiol-health-products-containing-cannabis.html

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。



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ダウンロード: LinkIcon カナダ保健省カンナビジオールの評価

国際的な薬物政策の動向 22年12月の国連決議と23年8月の国連報告書より


2023/11/29

2023年6月26日の「薬物乱用と不正取引に反対する国際デー」にアントニオ・グテーレス国連事務総長は、薬物使用者への人権を守ることを次のように訴えました。

何千万人もの人々が薬物乱用に苦しんでいます。治療を受けているのは5分の1以下です。

薬物使用者は二重の被害を受けています。第一に、薬物そのものがもたらす有害な影響、第二に、彼らが直面するスティグマ(烙印)と差別です。

薬物使用者は、HIV/AIDSや肝炎のような感染症の治療や医療サービスを受けることさえ、しばしば大きな障壁に直面します。一方、麻薬密売組織は薬物使用者を食い物にし続け、危険で依存性の高い合成麻薬の生産を急速に拡大しています。

今年の「薬物乱用と不正取引に反対する国際デー」は、スティグマと差別をなくし、予防を強化することによって、人々を第一に考える必要性に焦点を当てています。

これは、軽微な薬物犯罪に対する処罰や投獄ではなく、リハビリテーションを重視することを意味します。

予防や治療プログラム、保健サービスの拡大など、薬物を使用する人々の人権を守ることを意味します。

人々の苦しみから利益を得ている麻薬密売人に対する免罪符をなくすことで、同様に人々と地域社会を守ることを意味します。

そして何よりも、政府が率先して行動することです。私がポルトガルの首相であったとき、私たちは、密売人を取り締まり、予防、治療、危害の軽減措置(ハームリダクション)に資源を再配分する一方で、個人的な使用のための薬物所持に対して非犯罪的な対応を実施しました。

その結果、薬物の消費量とそれに関連する感染症罹患率は激減し、警察や税関が押収する薬物の数は増え、そして最も重要なこととして、人命が救われました。今日、ポルトガルの薬物過剰摂取率と薬物使用による死亡率は、ヨーロッパで最も低い国のひとつとなっています。

グローバル・コミュニティとして、薬物乱用、不正取引、そして世界中の薬物使用者が耐えているスティグマをなくすための活動を続けましょう。

https://unis.unvienna.org/unis/en/pressrels/2023/unissgsm1325.html


これらの表明の背景となった22年12月の国連総会決議77/238と、23年8月の国連人権理事会に提出された国連人権高等弁務官事務所報告書「世界の薬物問題のあらゆる側面への取組みと対策における人権の課題」を仮訳しました。

特に国連総会決議(賛成116、反対9、棄権45か国)では、「薬物乱用のない社会を積極的に促進する」という1998年以来、長年使われ続けてきた文言を消去し、人権擁護を強調した文章となっています。(日本も賛成へ投票しています)


<参考文献>

2016年 1998年以来の世界薬物特別総会(UNGASS2016)の成果文書A/RES/S-30/1
→従来の需要削減、供給削減、国際協力の3本柱に、健康、開発、人権、新たな脅威の4本柱を加えた。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=99841

2018年 国連人権理事会決議37/42「人権に関する世界の薬物問題に効果的な取組み及び対策の ための共同コミットメントの実施への貢献」, 「世界の薬物問題に効果的に取組み、対処するための共同コミットメットの実施と人権について」国連人権高等弁務官報告書A/HRC/39/39、国連システム事務局長調整委員会(CEB)にて「効果的な国連機関間の連携を通じ た国際薬物統制政策の実施を支援する国連システム共通の立場」を全会一致で支持
→ この年に初めて国連全体で、実質的に人権擁護と健康対策に焦点を当てた
公衆衛生アプローチが薬物政策の中心となった。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=89565

国連薬物犯罪事務所(UNODC)・世界保健機関(WHO)「薬物使用防止に関する国際基準第2版」→幼児、青年初期、青年・成人期の各段階でエビデンスに基づく予防と政策を示す。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105664

2019年 国連システム調整タスクチーム「過去10年間に私たちが学んだこと:国連の薬物関連制度によって得られ、生み出された知見の要約」→国連システム共通の立場で分析された報告書。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103532

第62会期国連麻薬委員会「世界薬物問題に対処する共同コミットメントの実施加速化の ための国内的,地域的,国際的あらゆるレベルでの活動強化にかかる」閣僚宣言,
国連エイズ共同計画(UNAIDS)世界保健機関(WHO)国連開発計画(UNDP)らが
「人権及び薬物政策に関する国際ガイドライン」を発表、
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103026

国連薬物犯罪事務所(UNODC)が「薬物と持続可能な開発目標(SDGs)の市民社会ガイド」を発表、
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103112
国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界保健機関(WHO)が
「刑事司法制度に接する薬物使用障害者の治療とケア」を発表
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=109437

2020年 国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界保健機関(WHO)が
「薬物使用障害の治療に関する国際基準(2020年版)」を発行
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=106040

2021年 収監に関する国連システムの共通見解→薬物政策における非犯罪化を提唱.
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=113534


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

免責事項:和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願いします。日本臨床カンナビノイド学会は、本翻訳物に記載されている情報より生じる損失または損害に対して、いかなる人物あるいは団体にも責任を負うものではありません。


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ダウンロード: LinkIcon 2022年国連総会決議_包括的、統合的かつ均衡的なアプローチを通じて世界の薬物問題への取組みと対策A_RES_77_238

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ダウンロード: LinkIcon 2023年国連人権高等弁務官事務所報告書A/HRC/54/53

11月19日の第9回学術集会の演題動画及び資料を会員限定サイトで公開


2023/11/28


第9回学術集会を東京都内会場にて実施しました。65名の参加がありました。当日の演題動画と演題資料を会員限定サイトにアップしました。

また、過去8年間で、約120演題・動画の視聴、講師の発表した120演題の資料(一部非公開な資料は除く)をすべて見ることができます。最近、会員になった方はぜひ過去の演題で気になったものを見ていただければと思います。

会員限定サイトでご確認下さい。 <動画>
http://cannabis.kenkyuukai.jp/video/

会員限定サイトでご確認下さい。<演題資料>
http://cannabis.kenkyuukai.jp/subject/subject_list.asp

注:当学会では、学会運営の効率化のためにm3,comのシステムを利用しています。
m3.comのIDのない会員様は見ることができません。

11月19日(日)第9回学術集会の参加案内

2023/10/23

11月19日(日)のプログラム内容が掲載されたチラシです。
ダウンロードしてご確認下さい。

参加方法は、このホームページの「学術大会」をクリックして手続をお願いします。

また、m3.comのシステムを利用していない方、一般参加者は、下記の銀行振込参加申込書をダウンロードして学会への参加ができます。ぜひご利用下さい。

法人会員様の複数人数での申込みの場合は、銀行振込参加申込書をご利用下さい。

参加締切は、11月10日(金)まで
(懇親会の人数確定のため、早めに申込みをお願いします)

正会員の方は、下記のフォームから会員総会の出欠に必ず回答をお願いします。
https://forms.gle/RjWUG4EDpsMixgAXA

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第9回学術集会チラシ



太組一朗本学理事長、並びに秋野公造参院議員はオーストラリアの患者団体であるEpilepsy Action Australiaから感謝状を贈呈

(2023/10/07)
10月4日、一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会の太組一朗理事長、並びに秋野公造参院議員はオーストラリアの患者団体である”Epilepsy Action Australia”から感謝状を贈呈されました。

これは同国在住の難治てんかん患者であるKaya Kerbajちゃん(4歳)とご家族が、治療目的に服用しているCBDオイル(現地では処方箋医薬品として流通)を国内へ携帯するための認可取得へ尽力したことへの敬意を表したものです。

同患者が服用していたCBD製品にはTHC等の規制成分が含まれていないこと、大麻草に該当する部位から製造されていないことなどが確認された上で持ち込みが認められることとなりました。

日本への渡航を希望する海外在住者が治療目的にCBD製品を持ち込むことが公式に認められたのは本例が初となります。なおKayaちゃんは日本滞在を満喫しているとのことです。

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感謝状の贈呈の様子

「医療等の用途を目的とした指定薬物を微量含有するカンナビノイド製品をこれまで通り使用できること』などをM地雅一厚生労働副大臣に対して要望

(2023/10/04)
2023年9月27日一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会(太組一朗理事長・聖マリアンナ医科大学脳神経外科教授)は、一般社団法人Green Zone Japan(正高佑志代表理事)並びにカンナビノイド医療患者会(PCAT: 平良万有実代表)と連名で、『大田原症候群をはじめとした多くの難病患者が、医療等の用途を目的とした指定薬物を微量含有するカンナビノイド製品をこれまで通り使用できること』などをM地雅一厚生労働副大臣に対して要望し、要望書を手交しました。前週に啓発団体であるGreen Zone Japanと患者団体であるPCATから学会が受けた要望を反映したものです。

M地雅一厚生労働副大臣からは『患者が使えなくなるようなことがあってはならない』とし、正規用途を日本臨床カンナビノイド学会らと議論していく考えを示しました。

この度の要望実現おいて多大なご尽力を頂きました秋野公造参院議員、並びに厚生労働省監視・指導麻薬対策課の皆様に改めて心からの御礼を申し上げます。


(解説)

今回の要望は、令和5年9月10日付で新たに指定薬物に定義されたTHCVが微量に含有されるCBD製品(ブロードスペクトラム)の使用によってのみ、重篤な発作が抑制され得る症例がPCAT患者会にも複数存在することを根拠とし、これらの製品へのアクセスを一律で制限することがないように要望したものです。

欧米等六カ国においても薬事承認を受けたカンナビノイド製品が標準医療の枠内で提供されつつあることに関して実態把握のための調査が必要です。本邦ではCBD製品が大麻由来であり食品・サプリメント扱いであることを理由に医療従事者からの理解が乏しく適切な使用の妨げとなっており医療提供者側への継続的かつ適切な啓発が必要です。これらについて国からも理解と支援を頂きたい旨をお伝えしました。

M地雅一厚生労働副大臣からは更に、正規用途とするための制度整備を早急に行うこと、必要な調査及び啓発に関しても学会主導で行うことに対し厚生労働省からも適切な助言を行うようにとの指導を頂きました。

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23年9月27日要望時の様子

大麻・カンナビノイド研究に上限20万円の助成支援 5名限定で募集開始

(2023/07/13)
本学会では、大麻・カンナビノイド研究に上限20万円の助成支援を5名限定で募集開始します。支援対象者の応募期間は、23年7月14日から24年6月30日とします。本制度は、21年度から毎年実施している会員限定の支援メニューです。

1990年代に内因性カンナビノイド系(Endocannabinoid system)の発見により、大麻及びカンナビノイド研究が世界中で急速に発展しています。2020年12月にWHO勧告を受けて、国連麻薬委員会が大麻及び大麻樹脂の医療価値を認める方針に転換してから、各国での研究がますます盛んになっています(図1参照)。

我が国においても、国内外の情勢の変化を受けて、21年の厚生労働省の有識者会議「大麻等の薬物対策のあり方検討会」、22年の厚生労働省の審議会「大麻規制検討小委員会」を経て、23年の厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)において、大麻由来の医薬品使用を解禁し、大麻研究者免許を廃止して麻薬研究者免許に一元化して研究環境の整備を行う方針となっています(注1)。

本学会では、医学・薬学系の研究者(大学院生及び学部生を含む)、医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの国家資格を有する医療従事者であれば、関連する国際会議の参加者支援及び学術論文投稿支援を行います。例えば、学術論文投稿の支援に上限20万円までの支援を行います。

本学会の学会誌“Cannabis and Cannabinoid Research”(大麻&カンナビノイド研究)への投稿関連費用も支援対象となっており、この領域の研究が発展していくことが期待されています。

なお、支援対象者は、本学会の正会員になることが条件となっています。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=27059

注1令和4年度第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30193.html 

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図1:学術論文データベースPubMedにおける大麻論文数の推移(1950-2022年)

本学会の公式ジャーナル(学会誌)“Cannabis and Cannabinoid Research”は、会員限定サイトで購読可能となりました

(2023/07/07)

日本臨床カンナビノイド学会(JCAC)の公式ジャーナル(学会誌)が世界的な生物医学系の学術出版社であるMary Ann Liebert社の「Cannabis and Cannabinoid Research」になりました。

Cannabis and Cannabinoid Researchは、2016年1月に創刊され、インパクトファクター:3.7を有し、医療用大麻、カンナビノイド、および内因性カンナビノイドの生化学的メカニズムの科学的、医学的、および社会心理的探究に専念する査読済みのオープンアクセスジャーナルです。

Cannabis and Cannabinoid Researchの対象範囲は
下記の通りです。

・内因性カンナビノイド系の生化学プロセス
・カンナビノイド受容体およびシグナル伝達
・大麻とカンナビノイドに基づく医薬品
・最適な投薬および薬物動態
・短期および長期の脳および行動への影響
・毒性試験
・神経因性疼痛および慢性神経傷害を含む鎮痛効果
・てんかん、多発性硬化症および緑内障を含む神経学的障害
・大麻の抗痙攣薬および鎮痙薬としての使用
・HIVを含む免疫機能および慢性炎症
・ガンおよびガン関連治療
・マリファナの誤用と依存のスクリーニングと評価
・社会的、行動的、公衆衛生上の影響
・倫理、規制、合法化、公共政策

なお、本学術誌は、ICRS(International Cannabinoid Research Society)および
IACM(International Association for Cannabinoid Medicines)の先駆的な2つの国際カンナビノイド学会の公式ジャーナル(学会誌)です。

Cannabis and Cannabinoid Researchは、個人購読すると523.00米ドル(73220円:1ドル=140円換算)の費用が掛かりますが、本学会の正会員になれば、2万円(入会費1万円、年会費1万円)で購読が可能となります。

2025年以降の改正大麻取締法/麻薬及び向精神薬取締法の施行に伴い、カンナビノイド医薬品の流通が日本でも予定される中、日本国内の医療従事者、医学薬学系の研究者によるCannabis and Cannabinoid Researchの購読者が増えると思われます。

さらに、カンナビノイドの基礎から応用研究まで幅広い領域をカバーした
Cannabis and Cannabinoid Researchへの日本発の論文投稿が増えることが期待されます。

注:2023年度会費をお支払いしないと、会員限定サイトへのアクセスはできないようになっています。購読希望の方は年会費のお支払い/更新手続きをお願いします。

Cannabis and Cannabinoid Research(本学会のロゴマークをご確認下さい)
http://www.liebertpub.com/overview/cannabis-and-cannabinoid-research/633/

過去のバックナンバーの購読/閲覧は、会員限定サイト「学会誌へのアクセス」からお入りください。

日本臨床カンナビノイド学会 WEBサイト
http://cannabis.kenkyuukai.jp/

 

研究成果:CBDサプリメントは日本人のてんかん発作を抑制

(2023/01/10)

日本臨床カンナビノイド学会理事らによる研究チームが国内初の調査結果を学術誌にて報告

概要:
一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師(一般社団法人Green Zone Japan)と同学会理事長の太組一朗医師(聖マリアンナ医科大学)らの研究チームは、国内のCBDサプリメントを使用中の難治てんかん患者・家族を対象とした匿名のオンライン調査を実施し、その安全性や有効性について初めて明らかにしました。本研究成果は2022年12月発行の”Neurology Asia”に掲載され、以下の URLから無料で参照頂けます。
https://www.neurology-asia.org/articles/neuroasia-2022-27(4)-891.pdf

研究背景:
大麻草に含有される成分の一種であるカンナビジオール(CBD)は現在、難治てんかんの治療薬として国内で治験が実施されていますが、同成分はサプリメントとして日本国内で先行して流通し、一部の患者が医療目的に使用しています。これらの安全性や有効性についての評価は過去に行われたことがありませんでした。

方法:
2021年6月にCBDを服用している難治性てんかん患者家族38名にオンライン自記式質問票を送付し、回答を依頼しました。

結果:
38名中28名から回答が得られました。診断として最も多かったのはウエスト症候群(7名)でした。15名(53.6%)の患者が発作頻度の減少を報告し、そのうち2名(7.1%)では発作が完全に消失していました。患者の診断名や発作型と治療効果の間に有意な相関は認められませんでした。
9 名の患者(32.1%)になんらかの有害事象が認められましたがいずれも軽度であり、有害事象を理由にCBDを中止した例はありませんでした。CBD摂取量の中央値は12.0 mg/kg/dayでした。


本研究成果の意義:
これは日本国内で流通しているCBDサプリメントがてんかん発作抑制に有効であることを示した初めての横断調査であり、日本人を含むアジア人種にとってもCBDが効果的であることを示唆する結果です。
また現在国内で進行中のCBD医薬品(EpidiolexR?)治験対象はドラべ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に伴う難治てんかんに限られていますが、本調査はその他の難治てんかん患者にとっても、CBDが有効な治療選択肢となる可能性を示唆するものです。

掲載論文についての詳細:
タイトル:Cannabidiol supplement reduces epileptic seizures in the Japanese population: Cross-sectional study for intractable epilepsy patients
著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、太組一朗、山本仁
掲載誌:Neurology Asia
発行:ASEAN Neurological Association
ISSN:(ISSN 1823-6138)
URL: https://www.neurology-asia.org/articles/neuroasia-2022-27(4)-891.pdf

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図表付き:

研究成果:大麻健康被害のリスクは若年使用と精神疾患の既往・家族歴


(2022/12/22)


-日本臨床カンナビノイド学会理事らによる研究チームが日本初の大規模調査結果を公表-

概要:

日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師(一般社団法人Green Zone Japan)と同学会理事の松本俊彦医師(国立精神・神経医療研究センター)らの研究チームは、国内の大麻使用経験者を対象とした匿名のオンライン調査を実施し、大麻による健康被害のリスク因子について明らかにしました。本研究成果は2022年12月19日にオンライン先行で公開された“Neuropsychopharmacology Reports”誌に掲載されました。

研究背景:

日本では大麻が厳罰とされているため大規模な疫学調査は行われていませんでした。そこで今回の研究チームはSNSを利用した匿名オンライン調査を2021年に実施し、大麻使用に関連した健康被害の実態について調査しました。その結果、大麻の現在使用者の9.5%が大麻使用障害に該当し、また1.5%が残遺性大麻関連障害に該当する可能性が示されました。(2021正高ら 日本アルコール・薬物医学会雑誌)

大麻使用に伴う健康被害が出現するリスクについても国内では大規模な調査報告がないため今回、追加解析を実施しました。


方法と結果:

過去1年以内に大麻を使用した経験がある3142名の回答を、大麻使用障害(大麻依存症)と残遺性大麻関連障害(大麻精神病)の有無でそれぞれニ群にわけて、二項ロジスティック解析を行いそれぞれのリスク因子を検討したところ、大麻使用障害に有意に関連する要因として“大麻の初回使用年齢の低さ“, “家族に精神障害や依存症、自殺などの既往を有する者がいること“, “大麻使用に先行する精神疾患の罹患“, “乾燥大麻以外の大麻製品の使用経験“の4項目が同定されました。また残遺性大麻関連障害については、“大麻の初回使用年齢の低さ“と“家族に精神障害や依存症、自殺などの既往を有する者がいること“の二項目が同定されました。

本研究成果の意義:

本研究は大麻使用が問題となる一部のユーザーが、問題なく大麻を使用可能なユーザーとどのような違いを有するかについての日本国内における初の大規模調査であり、若年時からの使用と本人の精神疾患の罹患、ならびに精神疾患・依存症の遺伝傾向などがリスクとなり得る可能性を示唆するものです。

【掲載論文についての詳細】

タイトル:Risk factors for cannabis use disorders and cannabis psychosis in Japan: Second report of a survey
on cannabis-related health problems among community cannabis users using social networking services

著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、赤星栄志、松本俊彦

掲載誌:Neuropsychopharmacology Reports

発行:日本神経精神薬理学会

Online ISSN:2574-173X

URL: https://doi.org/10.1002/npr2.12307

治験成功と法改正に向けた緊急要請国際シンポジウムと要望書提出を実施しました


(2022/12/12)


2022年12月7日、一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会(太組一朗理事長・聖マリアンナ医科大学脳神経外科教授)主催による「大麻由来医薬品の治験成功と法改正に向けた緊急要請国際集会」が参院議員会館特別会議室にて開催しました。

太組理事長による開会の辞に続き、治験への道筋を国会質疑を通じて政治的に道を開いた秋野公造参議院議員(公明党)から、これまでの経緯の御説明を頂きました。さらに竹内大輔氏(厚生労働省・監視指導麻薬対策課課長補佐)から行政の取組と今後の方針について説明がありました。治験実施主体であるGW製薬からは、Alastair Woods氏(Cllinical Operation Director)が緊急来日し、治験の実施計画と進捗状況について解説を頂きました。

さらに正高佑志日本臨床カンナビノイド学会副理事長による国内難治てんかん患者を対象としたCBD使用実績についての報告がなされたのに続き、国内患者団体(カンナビノイド医療患者会)を代表して宮部貴幸氏から、ウエスト症候群などのその他の難治てんかんにも処方箋医薬品としてのCBDが供給される体制を望む意見が患者さんおよびご家族(宮部かれんさん・貴幸さん)からビデオレターで届けられました。
加えて太組一朗理事長より、てんかん以外の疾患(慢性疼痛、神経変性疾患、発達障害)などへのカンナビノイド医療の可能性についての提言がなされました。

総合討論ではてんかん患者・家族2名(森みどりさん・杉野啓基さん)から、一日も早い法改正と処方箋医薬品としての大麻由来医薬品の承認を望む意見が述べられました。また治験サイトであるてんかん診療支援施設における更なる整備も議論されました。

シンポジウム終了後に、GW製薬日本支社の篠原久治社長とともに、秋野公造参院議員の仲介により厚生労働省を訪れ、伊佐進一厚生労働副大臣(公明党)に対して早期の法改正を進めていただきたいこと、並びに治験対象三疾患(ドラべ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に伴う難治てんかん)以外の難治てんかん、及び難治性疼痛、神経変性疾患、発達障害など幅広い疾患についても大麻由来医薬品が使えるようになること、てんかん診療拠点病院の更なる整備、を要望しました。

副大臣からは、患者の直接のお声に耳を傾けて下さったうえで、早期の法改正に向けて取り組むこと、その他の適応についても学術領域、製薬企業と連携しつつ、保険診療内での可能性を前向きに検討していく、てんかん診療拠点病院についてもさらに必要な整備をすすめる、必要な調査も行う旨の回答を頂きました。

なおシンポジウムの内容については、後日動画にて公開する予定です。

研究結果:CBDの用途はリラクゼーション・睡眠改善・不安軽減・健康増進・抑うつ軽減であることが明らかに


(2022/11/30)



日本臨床カンナビノイド学会とGreen Zone Japanが国内初のユーザー調査結果を学術誌にて報告

概要:
日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師(一般社団法人Green Zone Japan)と同学会前理事長の新垣実医師(医療法人新美会)らの研究チームは、日本国内のカンナビジオール(CBD)製品ユーザーを対象とした匿名のオンライン調査を実施し、日本におけるCBD製品の用途や有効性について初めて明らかにしました。本研究成果は国内の査読学術誌である『日本統合医療学会誌 Vol.15 No.2(2022年11月)』に掲載されました。

研究背景:
大麻草に含有される成分の一種であるカンナビジオール(CBD)は難治てんかんの特効薬として治験実施が予定されていますが、同時にサプリメント・化粧品・嗜好品として幅広く流通し、2021年の国内市場規模は180億円と試算されています。これらの用途や有効性についての調査はこれまでに行われたことがありませんでした。

方法:
CBD使用経験者(過去1年以内にTHCを含む大麻使用者を除く)を対象としFacebook,、Twitter、YoutubeなどのSNSを用いて回答を依頼したところ、799件の有効回答が得られました。CBD製品の用途として多かったのはリラクゼーション(77.8%)、睡眠改善(66.3%)、不安(56.2%)、健康増進(50.8%)、抑うつ(47.8%)であり、使用者は平均して5.5の目的に対してCBDを使用していました。

結果:
使用前後の各症状についての重症度自己評価で50%以上の改善を自覚していた割合は以下のとおりでした。(頭痛70.9%、慢性疼痛67.8%、睡眠障害67.4%、物質使用障害66.7%、神経痛65.5%、抑うつ62.4%、不安59.6%、関節痛54.5%、膠原病50.0%、皮膚疾患49.7%、てんかん42.1%、ぜんそく37.8%)
一方で副作用が疑われる症状の出現率は7.4%で、重篤なものは認められませんでした。

本研究成果の意義:
この結果は日本国内で食品・サプリメント・雑貨として利用されている製品が使用者の生活の質改善に貢献していることを示す初の検証結果であり、今後てんかん以外の症状に対しても、医療用途での適応拡大を検討する意義があることを示すものと考えられます。


【掲載論文についての詳細】
タイトル:日本におけるカンナビジオール製品の使用実態に関する横断調査
著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、赤星栄志、新垣実
掲載誌:日本統合医療学会誌(Vol.15 No.2 2022年11月号)
発行:一般社団法人 日本統合医療学会
ISSN:2435-5372


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大麻由来医薬品の治験成功と法改正に向けた緊急要請国際集会


(2022/11/29)


我が国においても、大麻由来医薬品を巡る情勢が大きく変わろうとしています。
本学会では、本件の関係者を一堂に会する場を設ける国際緊急集会を企画します。


主催:日本臨床カンナビノイド学会

日時:12月7日水曜日 18:00-19:30
場所:参議院議員会館 特別会議室

座長:
太組一朗(日本臨床カンナビノイド学会理事長、聖マリアンナ医科大学教授)
正高佑志(日本臨床カンナビノイド学会副理事長、GREEN ZONE Japan 代表理事)

<プログラム>
開会の辞と学会紹介:太組一朗

患者さんビデオメッセージ

患者の声を基にした国会質疑と政府の答弁:秋野公造(参議院議員)

これまでの取組みと今後の見込み:厚労省担当官

日本国内における難治てんかんへの CBD使用の取り組みと問題点 :正高佑志

Outline of clinical trial:Alastair Woods, Clinical Operations Director, GW pharma(逐次通訳あり)

大麻由来医薬品の適応拡大への期待(疼痛・ADHD・神経変性疾患および難治てんかん):太組一朗

総合討論

閉会の辞:太組一朗


注意事項:この緊急要請集会に参加希望のマスコミの方は、学会事務局までご連絡ください。一般の方はご参加いただけませんので、後日のウェブ配信をお待ちください。

医療目的の大麻花序:品質属性に関する米国薬局方(USP)の考慮事項


(2022/11/24)


我が国では、安全性と有効性が確認された大麻由来医薬品の使用が可能になるような法改正が検討されています。

一方、欧州および米国では、医薬品の品質規格である欧州薬局方、米国薬局方のそれぞれで医療目的の大麻花序(カンナビスフラワー)が検討されています。

薬局方での検討すべき事項についてまとめた論文がありましたので、その仮訳を公開します。仮訳全文は下記からダウンロードをお願いします。

タイトル:医療目的の大麻花序:品質属性に関する米国薬局方(USP)の考慮事項

要旨

大麻雌花序(Cannabis sativa)は、医療用として活発に利用され、その関心は高まっている。そのため、大麻草の品質特性を定義することは、汚染された製品、規格外品、不純物による公衆衛生上のリスクを軽減し、健全で再現性のある基礎および臨床研究を支援することにつながる。

大麻草は、複雑な二次代謝産物を含み、成分の分布が不均一なマトリックスであるため、その品質を確保するには、適切なサンプリング手順と一連の試験、分析手順、および身元、成分(例:カンナビノイド)の内容、および汚染物質の制限を定義するための許容基準が必要である。

米国薬局方(USP)は、科学的根拠に基づく独立した公衆衛生機関として、大麻草の専門家パネルを結成し、大麻草の主要な品質特性を定義するために必要な仕様を評価してきた。この専門家委員会では、大麻草の化学型を区別する必要があるという点で意見が一致している。二次代謝産物のプロファイルに基づき、専門家委員会は大麻草を3つの大まかなカテゴリーに分類することを提案している。

これらの3つの主要な化学型(ケモタイプ)は、以下のカンナビノイド成分に基づいてラベリングするために有用であることが確認されている。(1)テトラヒドロカンナビノール(THC)優位の化学型、(2)THCとカンナビジオール(CBD)の両方を含む中間の化学型、(3)CBD優位の化学型である。

これらの化学型に属する大麻植物は、他のカンナビノイドの含有量および/またはモノおよびセスキテルペンのプロファイルに基づいて、さらに細かく分類される場合がある。

重要な成分の同定と定量を行うための形態学的試験とクロマトグラフィー試験が提示されている。残留農薬、微生物レベル、マイコトキシン、および元素汚染物質を含む汚染物質の制限値は、毒性学的考察に基づき、一般試験およびアッセイに関する既存のUSP手順と一致するように提示されている。

この総説で概説された原則は、公衆衛生保護のために必要な大麻花序の公的品質仕様の基礎として使用することができ、大麻草の安全性と治療の可能性に関する科学的研究を促進することができるはずである。


原文
Nandakumara D. Sarma*, Andrew Waye, Mahmoud A. ElSohlyMahmoud A. ElSohly, Paula N. Brown, Sytze Elzinga, Holly E. Johnson, Robin J. Marles, Jeremy E. Melanson, Ethan Russo, Lawrence Deyton, Christopher Hudalla, Gordon A. Vrdoljak, Joshua H. Wurzer, Ikhlas A. Khan, Nam-Cheol Kim, and Gabriel I. Giancaspro. Cannabis Inflorescence for Medical Purposes: USP Considerations for Quality Attributes
Journal of Natural Products. 2020, 83, 4, 1334?1351
https://doi.org/10.1021/acs.jnatprod.9b01200 



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10月2日第8回学術集会の演題動画及び資料を会員限定サイトで公開


(2022/10/08)


第8回学術集会は、3年ぶりに対面式で東京都内会場にて実施しました。80名の参加がありました。当日の演題動画と演題資料を会員限定サイトにアップしましたので、欠席された方はぜひご覧ください。22年6月9日に大幅に合法化したことで話題となっているタイ王国のカンナビノイド医療の最新情報や、薬物依存治療の現場、日本国内での治験状況、カンナビノイド受容体研究、外用の症例報告、薬機法等の法律解説、CBD市場調査と、多岐にわたる内容となっています。

また、過去7年間で、約100演題・動画の視聴、講師の発表した100演題の資料(一部非公開な資料は除く)をすべて見ることができます。最近、会員になった方はぜひ過去の演題で気になったものを見ていただければと思います。

会員限定サイトでご確認下さい。 <動画>
http://cannabis.kenkyuukai.jp/video/

会員限定サイトでご確認下さい。<演題資料>
http://cannabis.kenkyuukai.jp/subject/subject_list.asp

注:当学会では、学会運営の効率化のためにm3,comのシステムを利用しています。
  m3.comのIDのない会員様は見ることができません。

大麻草及び大麻製品の同定及び分析のための推奨方法


2022/09/20


国連薬物犯罪事務所(UNODC)は1997年に設立された国際連合の機関で、薬物規制と薬物犯罪対応に加え、人身売買や資金洗浄を含めた組織犯罪や汚職などの腐敗対応を目的とする組織です。

UNODCが22年3月に発行した「大麻草及び大麻製品の同定及び分析のための推奨方法」は、各国の法医学薬物試験所のための推奨分析方法の調和と確立を目的したマニュアルです。

本報告書は、前回の2009年版の改訂・更新版となります。

本報告書p26の大麻草の植物部位別のTHC分布がよく引用されています。
10--12 % 雌花
1--2 % 葉
0.1--0.3 % 茎
< 0.03 % 根

我が国においても、23年以降の改正大麻取締法は、従来からの茎・種が合法で、花と葉が違法という植物部位の規制から、マリファナの主成分であるTHC濃度に基づく成分規制への変更を予定しています。

本書の仮訳版が大麻草および大麻製品の分析を予定している我が国の大学等の研究機関および民間での各種試験所の参考になればと思います。

目次

1. はじめに p1

1.1 背景 p1
1.2 マニュアルの目的及び使用方法 p2

2. 大麻製品の市場及びトレンド p5

3. 一般的説明 p7

3.1 大麻草の名称 p7
3.2 定義 p7
3.3 同義語 p7
3.4 分類学 p8
3.5 外観 p8
3.6 品種改良及び栽培 p10
3.7 大麻製品 p12
3.8 産業用又は園芸用の大麻 p17
3.9 医療及び科学目的の大麻 p17

4. 大麻の化学的特性 p19

4.1 生合成 p22
4.2 THCの化学合成 p23
4.3 カンナビノイドの安定性 p23
4.4 異なる溶媒でのカンナビノイドの 抽出 p25
4.5 大麻草及び製品のTHC分布 p25
4.6 薬物型大麻と産業用大麻の比較 p26

5. 大麻製品の定性及び定量分析 p27

5.1 サンプリング p27
5.2 大麻陽性の同定のための最低限の基準 p29
5.3 物理的試験 p29
5.4 化学的試験 p36

6. 参考文献 p67


原文
https://www.unodc.org/unodc/en/scientists/recommended-methods-for-the-identification-and-analysis-of-cannabis-and-cannabis-products.html



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ダウンロード: LinkIcon 大麻草及び大麻製品の同定及び分析のための推奨方法(2022)

WHOによる薬用大麻の初の科学的評価:世界的な悪戦苦闘から患者への影響まで

 

2022/08/26


●要旨
背景 ?
「大麻及び大麻樹脂」は、大麻植物に由来し、ハーブ(薬草)として、伝統医学において、又は医薬品の有効成分として使用されている。1961年以降、麻薬に関する単一条約の中で最も制限の厳しいカテゴリー(等級)であるスケジュールIVに収載されている。2016年12月2日に世界保健機関(WHO)により、科学的に見直し、再スケジュールするプロセスが開始された。それは、2020年12月2日に国連麻薬委員会(CND)による遅延及び前例のない特異的な投票に提出されるまで多くの障害を乗り切り、スケジュールIVから「大麻及び大麻樹脂」を削除することができた。
デザイン/方法論/アプローチ -
WHOのスケジュール勧告、委員会の投票に至るプロセス、その後の影響を世界、国、患者・臨床医レベルで評価する。4 年間の経過を説明し、否決された勧告と採択された勧告の両方の実際的な意味を検討した。
発見 -
このプロセスは歴史的に前例のないものであり、一般に薬用大麻と科学的根拠(エビデンス)に基づくスケジュール管理の両方が、政治的に関連するものであった。手続き上の障壁が、市民社会の利害関係者の適切な関与を妨げた。勧告の採択と否決の結果、各国は医療目的の「大麻及び大麻樹脂」へのアクセスと利用可能性について、分散的で非均一なシステムを作り続けることができるようになった。

<本論文の一部抜粋>

●はじめに

WHOが大麻審査の開始を発表してからちょうど4年後の2020年12月2日(CND, 2016a, p.8; WHO, 2016c, p.7-8)、国連麻薬委員会(CND)は大麻関連9勧告のうち1つを採択し、1つは投票を要求されず、3つは否決、さらに4つは投票にかけられなかった(表1)p.2

●背景

麻薬単一条約(C61)のスケジュールIVに「大麻及び大麻樹脂」を配置したことは、いかなる種類の科学的評価によっても検証されていない p.4

「大麻及び大麻樹脂」の見直しの要請が以下の6回あった p.5
国連麻薬委員会(CND)(2009; WHO, 2016d, p.32参照)
国際麻薬統制委員会(INCB, 2014, p.93-94)
2015年WHO ECDD(WHO, 2016d, p.32)
2016 年チェコ共和国(WHO, 2016b, p.248)
2016年国際ホスピス・緩和ケア協会(Ghehioue`che and Riboulet-Zemouli, 2016)。
2018年カリブ海共同体(Antoine and Douglas, 2018)

●審査プロセス

2年にわたるECDDの審査プロセスは、バランスのとれた独立した方法で、効果的に意見、情報、科学を収集したと思われる。p.6

●勧告

ECDD勧告は、各国が合成医薬品(基本的にMarinolとSyndros)とハーブの大麻医薬品(例えば、Asmasol、Bediol、Cannador、Sativexなど)の両方の形態の医薬品に同じ制度を提供し、また薬局での調合薬やアーユルヴェーダの処方などの非専売医薬品にもスケジュールVの制度を適用できるようにしようとしていた p.7

(麻薬単一条約の)第2条第6項が修正されない限り、国連麻薬委員会(CND)による大麻関連規制薬物(CCD)のスケジュールIからの削除は何の効果も持たない。したがって、大麻関連規制薬物(CCD)をスケジュールIから外すというECDD勧告の機会や妥当性は、こうした条約の制約に照らして疑問である。 p.8

●投票

非医療用途への過度な注目は、国連麻薬委員会(CND)の議論を医療目的、治療、ヘルスケアの問題から逸脱させた。p.10

●政策的な意味合い

「長く愛されてきた薬用植物」が、1964年の麻薬単一条約(C61)発効以来57年ぶりに再び正当な医療となった。一方では、WHOの他の8つの勧告が否決されたため、世界は、医療制度、医師、薬剤師、患者、伝統的治療者のために通常提供されるスケジュールの規制ガイダンスを失ったままとなった。P.11

●結論

大麻の削除スケジューリング・プロセスは、国連麻薬委員会(CND)とWHOが1946年の設立以来、初めて歴史的な誤りを認め、行動を起こし、科学的根拠に基づき、それを修正することを可能にした。p. 12

国連の投票結果がどうであれ、WHOの専門機関が大麻由来医薬品の正当性を承認したことで、世界中の医師、看護師、その他の医療専門家たちは、医学における-そして治療としての-大麻関連規制薬物(CCD)の新しい時代の到来を告げることができるようになるだろう。
p.12

原文
Riboulet-Zemouli K., Krawitz M., “WHO’s first scientific review of medicinal Cannabis: from global struggle to patient implications”. Drugs, Habits and Social Policy, 2022. Vol. 23 No. 1, p. 5-21.
https://doi.org/10.1108/DHS-11-2021-0060

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ダウンロード: LinkIcon WHOによる薬用大麻の初の科学的評価:世界的な悪戦苦闘から患者への影響まで(2022)

カンナビジオール(CBD)におけるWHO/ECDD報告書とWHO勧告について

 

2022/08/24


我が国では、昨年の厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」、今年の大麻規制検討小員会において、大麻取締法の植物部位の規制からTHC成分規制への変更が検討されています。THC成分規制は、すでに多くの国で採用されています。

例えば、タイ王国では、1979年麻薬法におけるスケジュール5の区分から大麻が削除(22年6月9日施行)されましたが、大麻エキスでTHC濃度0.2%以下は合法で、0.2%を超えるものは麻薬扱いとなっています。この0.2%の製品基準は、WHO勧告と同じものとなっています。

下記では、0.2%の製品基準に関するWHO関連の資料のまとめとなります。


●CBDのWHO勧告の流れ

日本政府から提案のあった2009年の国連麻薬委員会(CND)決議52/5(注1)により、大麻草の健康への影響が見直されていないことを指摘し、世界保健機関・依存性薬物専門家委員会(WHO/ECDD)に最新の報告書を提出するように要請がありました。

WHOは科学的根拠に基づいたプロセスで精神作用物質の審査を実施するために、ECDDメンバーが従うべき手順である「国際統制のための精神作用物質のWHO審査ガイドライン」(注2)という文書を2010年に採択しました。

ガイドラインによると、審査手続及び薬物評価は、事前審査(ピア・レビュー)と批判的審査(クリティカル・レビュー)で構成され、ECDD会議からの成果は、“WHO Technical Report Series Collection”の報告書で公式発表となります。

カンナビジオール(CBD)は、WHO/ECDDの2016年11月の第38会期報告に基づいて、審査手続きのプロセスに入り、2017年11月の第39会期に事前審査報告書(注3)が発行され、第39会期報告書(注4)に記載されました。

その後、WHO/ECDDの2018年6月の大麻及び大麻関連物質のみに焦点をあてた第40会期にカンナビジオール(CBD)批判的審査報告書(注5)を発行して、速報版として国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)へのレター(2018年7月23日)にて、「純粋なCBDであると考えられる製剤は、国際薬物統制条約の範囲内でスケジュールにすべきではないと勧告した。」ことを示しました(注6)。

公式には、第40会期WHO/ECDD報告書(注7)にCBDの勧告が収載されています。純粋なCBD、つまりCBDという物質そのものの依存及び乱用の可能性評価を行い、国際的な薬物条約の規制対象外であることが確認されたのです。

一方、CBDオイルやCBDベイプペンなどの大麻草由来のCBD製品は、第40会期WHO/ECDDに引き続き、2018年11月の第41会期の「大麻エキス」「大麻チンキ」の枠組みで批判的審査が行われました(注8)。その結果、国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)へのレター(2019年1月24日)にて、次のような勧告を示した(注9)。

カンナビジオール製剤
?委員会は、1961年麻薬単一条約のスケジュールIに、「カンナビジオールが大部分を占め、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールを0.2%以下含む製剤は国際的な統制下としない。」という脚注を追加することを勧告した。勧告5.5

よく間違えるのは、WHO勧告のTHC濃度0.2%は「製品基準」であって、大麻草の「品種基準」ではありません。例えば、米国やカナダでのヘンプ(産業用大麻)は、THC濃度0.3%以下をヘンプとし、それ以上をマリファナとしています。このときの0.3%は、農作物としての「品種基準」であって、CBDオイルなどの「製品基準」ではありません。

また、日本語で「製剤」とすると、医薬品又はその原料組成物の意味となりますが、国連の定義では、大麻草由来の成分を抽出した調整物を示しており、より一般的な製品も含まれています。


●WHO勧告の結果

大麻及び大麻関連物質のWHO勧告は、意見の隔たりが大きく、2020年3月の国連麻薬委員会(CND)において投票(53カ国)の延期(注10)を経て、第63会期の2020年12月2日のCNDによって、勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約のスケジュールWから削除することのみが採択されました。他のWHO勧告は否決(5.2.1, 5.4, 5.5)、投票にかけられず(5.2.2, 5.3.1, 5.3.2, 5.6)という対応になりました(注11)。

CBDに関しては、第40会期WHO/ECDD報告書(注7)で前述のような勧告がありましたが、国連麻薬委員会(CND)において投票そのものが要求されていませんでした。

しかし、麻薬単一条約のスケジュールの見直しの科学的根拠は、これまで紹介してきたWHO/ECDDの事前審査報告書、批判的審査報告書、WHO/ECDD報告書、WHO勧告となります。国連の正式な審査プロセスを経たものとして、国際的に価値のあるものとなっています。


●参考文献

注1:「不正目的のための大麻種子の使用に関するあらゆる側面の探求:改訂草案/アゼルバイジャンと日本」https://digitallibrary.un.org/record/655565?ln=en
注2:Guidance on the WHO review of psychoactive substances for international control
https://www.who.int/publications/i/item/978-92-4-150055-5
注3:5. Pre-Reviews of Substances/5.2 Cannabidiol
日本語版(WHO/ECDD事前審査報告書):http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=73799
注4:WHO Expert Committee on Drug Dependence Thirty-ninth report
WHO Technical Report Series No.1009 March,2018 p.41-43,46
https://www.who.int/teams/health-product-and-policy-standards/controlled-substances/who-review-of-cannabis-and-cannabis-related-substances
日本語版:当ホームページの下方のファイルをダウンロードしてください。
注5:Critical review: Cannabidiol
日本語版(WHO/ECDD批判的審査報告書):http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=106377
注6: 日本語版 国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)へのレターhttp://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=83062
注7:WHO Expert Committee on Drug Dependence Fortieth report WHO Technical Report Series No.1013 2019 p.13-17 
日本語版:当ホームページの下方のファイルをダウンロードしてください。
注8:WHO Expert Committee on Drug Dependence forty-first report WHO Technical Report Series No.1018  2019 p.34-55 
日本語版:当ホームページの下方のファイルをダウンロードして下さい。
注9:Cannabis recommendations
日本語版:当ホームページの下方のファイルをダウンロードして下さい。
注10:WHO勧告の採択延期および国際的な意見の不一致について
日本語版:http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103194
注11:WHO勧告の結果:国連は大麻及び大麻樹脂を附表Wから削除を決定。「最も危険で医療価値なし」という分類を変更し、医療価値を認める
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108328



FileName:
LinkIcon 注4 WHO 依存性薬物専門家委員会第39回報告書

FileName:
LinkIcon 注7 WHO 依存性薬物専門家委員会第40回報告書

FileName:
LinkIcon 注8 WHO 依存性薬物専門家委員会第41回報告書

FileName:
LinkIcon 注9 WHO大麻勧告2919年1月24日

ヘンプのCBDとテルペン類 -未来の食品と加工技術のための素材

 

2022/08/12


本学会に、ヘンプ由来のCBDとテルペン類についてのお問い合わせがあったので、それに該当する論文を仮訳しました。


ヘンプのCBDとテルペン類 -未来の食品と加工技術のための素材

-ヘンプのカンナビジオールやテルペン類に関する世界各国の法的規制についてまとめている。
-CBDとテルペンの食品への添加の現状と課題について議論されている。
-ヘンプの加工技術における最近の進歩と研究ニーズが強調されている。

概要

ヘンプ(Cannabis Sativa L.)は、世界的に広く栽培されている植物である。近年、ヘンプに含まれるカンナビジオール(CBD)およびテルペン類は、抗不安、鎮痛、リラックス促進、抗炎症、抗菌作用など、ヒトへの健康効果や薬効があることから、ますます研究上の関心を集めている。

しかし、ヘンプのCBDやテルペンの食品系への研究・応用は、様々な法的規制や消費者基盤、技術的課題から、ほとんど報告されていない。また、高品質で食品安全性の高いCBDやテルペンを食品用に安定生産するための乾燥、抽出、精製などのヘンプの加工技術についても、十分な検討がなされておらず、十分なレビューに欠ける。

そこで、本総説では、ヘンプのCBDやテルペンの基本的な特徴や世界各国の関連する法的規制を整理し、ヘンプCBDやテルペンの食品への配合やヘンプバイオマスの加工技術の現状と技術的課題を明らかにし、解決策や今後の動向、研究ニーズなどを明らかにする。

このレビューから得られた知見は、ヘンプの加工とCBD/テルペンの食品への応用に関するより多くの食品関連研究を刺激する可能性がある。また、ヘンプ産業が貴重なバイオリソースとしてのヘンプの加工効率を向上させ、食品メーカーが将来の機能性食品成分としてヘンプのCBDとテルペンを使用する道を切り開くのに役立つ可能性がある。

1. はじめに

2. ヘンプのカンナビジオールの食品素材への応用
2.1. ヘンプCBDの基本的な特徴
2.2. ヘンプCBDの機能性食品素材としての可能性と課題
2.2.1. 法的規制
2.2.2. 消費者の意識とニーズ
2.2.3. 技術的な課題
2.3. 潜在的な技術的解決策と将来

3. ヘンプテルペンの未来型食品素材への展開
3.1. ヘンプのテルペンの基本的な特徴
3.2. ヘンプのテルペンの機能性食品素材としての可能性と課題

4. ヘンプの加工技術
4.1. 乾燥技術
4.1.1. ヘンプ産業における従来の乾燥技術
4.1.2. 新たな乾燥技術
4.1.3. 課題及び研究ニーズ
4.2. 抽出技術
4.2.1. 溶媒抽出
4.2.2. 超臨界流体抽出
4.2.3. 新しい抽出技術
4.2.4. 課題及び研究ニーズ

5. 精製技術
5.1. 分子蒸留法
5.2. 分取クロマトグラフィー
5.3. 晶析

6. 結論と今後の展望

原文
Chang Chen, Zhongli Pan, Cannabidiol and terpenes from hemp ? ingredients for future foods and processing technologies. Journal of Future Foods, Volume 1, Issue 2, December 2021, Pages 113-127
https://doi.org/10.1016/j.jfutfo.2022.01.001

FileName:
ダウンロード: LinkIcon ヘンプのCBDとテルペン類(2021)

医薬品成分としてのCBD:各国の薬局方について


2022/07/22


薬局方(やっきょくほう)とは、医薬品に関する品質規格書のことです。通常、医薬品の成分は、薬局方に収載され、欧州薬局方、ドイツ薬局方、米国薬局方、日本薬局方など各国で整備されています。

日本でも印度大麻草、印度大麻エキス、印度大麻チンキが1886年(明治19年)から1951年(昭和26年)の65年間は、日本薬局方(第1局から第5局)に収載され、医薬品として使われていた歴史があります(書籍「カンナビノイドの科学」参照)。

CBD(カンナビジオール)は、ドイツ薬局方外規格(DAC)/新処方フォーミュラリ(NRF)モノグラフC-052 として2016年に収載され、現在2020年版となっています。
下記、2020年版については、日本語仮訳をしたものをご参照下さい。

2022年には、CBDモノグラフとして、欧州薬局方案(PA/PH/Exp.11/T(21)50ANP、米国薬局方案USPが提案されています。

いずれの薬局方において、Δ9-THCの制限値がいずれも0.1%以下です。

●ドイツ薬局方DAC/NRF 2020/2 C-052

由来:C.sativa L.合成品又は調剤
同定:
A.IR(赤外吸収スペクトル 2.2.24)
B.TLC(薄層クロマトグラフィー)
品質:
1. 比旋光度(2.2.7)128-135
2.LC(液体クロマトグラフィー2.2.29)
3.強熱残分(2.4.14)0.1%以下
不純物:
A.CBN 0.10%以下
B.Δ9-THC 0.10%以下
C.Δ8-THC 0.10%以下
個々の不純物:各々0.10%以下
総不純物:0.5%以下


●欧州薬局方(案)PA/PH/Exp.11/T(21)50ANP

由来:天然由来の単離物(アイソレート)
同定:
A. IR(赤外吸収スペクトル 2.2.24)
B. 比旋光度(2.2.7)128-135
品質:
1.LC(液体クロマトグラフィー2.2.29)98.0-102.0%
2.含水率(2.5.32)0.5%以下
3.強熱残分(2.4.14)0.1%以下
不純物:
A.CBDV 0.15%以下
B.CBT 0.2%以下
C.CBN 0.15%以下
D.Δ9-THC 0.10%以下
E.CBD-HQ 0.10%以下
F.CBC
G.CBDA
H.Δ9-THCA F.G.H.(Ph.Eur.2004,5.10)
個々の不純物:各々0.10%以下
総不純物:0.8%以下

●米国薬局方(案)USP Draft

由来:C.sativa L.又は合成品
同定:未定
品質:98.0-102.0%
不純物:
A.CBN 0.10%以下
B.Δ9-THC 0.10%以下
C.Δ8-THC 0.10%以下
個々の不純物:各々0.10%以下
総不純物:2.0%以下


日本薬局方
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000066530.html

ドイツ薬局方
https://www.bfarm.de/DE/Arzneimittel/Zulassung/Zulassungsrelevante-Themen/Arzneibuch/_node.html

ドイツの薬用大麻について
https://www.cannabisagentur.de/

CBDモノグラフ欧州薬局方案
https://www.gmp-compliance.org/gmp-news/ph-eur-draft-monograph-for-cbd

CBDモノグラフ米国薬局方案
https://www.gmp-compliance.org/gmp-news/usp-draft-monograph-for-cbd


FileName:
ダウンロード: LinkIcon ドイツ薬局方モノグラフ-カンナビジオール

カンナビジオール(CBD)の抗菌活性の可能性

 

2022/07/15


本学会に、CBDの抗菌性についてのお問い合わせがありましたので、関連する論文を仮訳して、下記に公開します。

概要
抗菌剤耐性は、細菌感染症の予防と治療の成功に大きく依存する現代医学の存続を脅かすものである。残念ながら、特にグラム陰性菌に対する新しい治療薬は、臨床パイプラインにほとんど存在しない。

今回我々は、大麻草の非精神活性成分であるカンナビジオールの抗菌活性を詳細に評価した。我々は、グラム陽性活性に関する以前の報告を確認し、高耐性黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、およびクロストリジウム・ディフィシルを含む、試験した病原体の幅を広げた。

この結果は、カンナビジオール(CBD)がバイオフィルムに対して優れた活性を持ち、耐性を誘発する傾向がほとんどなく、in vivo(生体内試験)での局所的な有効性があることを示している。

複数の作用機序の研究から、カンナビジオールの主要な作用機序として膜破壊が指摘されている。さらに重要なことは、カンナビジオールが「緊急の脅威」である病原菌Neisseria gonorrhoeae(淋菌)を含むグラム陰性菌のサブセットを選択的に殺すことができることを初めて報告することである。構造活性相関研究は、カンナビジオールアナログ(類似体)が、切望される新しいクラスの抗生物質として前進する可能性を示している。

はじめに

細菌は抗生物質に対する耐性を増しており、米国疾病対策予防センター(CDC)は 2019 年の報告書で、「ポスト抗生物質時代の到来に言及するのはやめるべきだ-すでに到来している」と述べている 1。この「ポスト抗生物質時代」とは、手術、がん治療、臓器移植、腎臓透析、糖尿病などの慢性疾患により感染リスクが高まっている数百万人の人々が、治療不可能な病気になる可能性に直面することを意味する。

残念ながら、抗生物質開発における不利な経済性 2,3,4 により、ほぼすべての大手製薬会社は抗生物質研究を放棄し、中小のバイオテクノロジー企業は不安定な財務状況に置かれ、臨床パイプラインに新しい治療薬はほとんど残っていない 5,6,7。これは特にグラム陰性感染症に当てはまることで、1960 年代以降、基本的に新しい分子クラスが発見されず、臨床使用が承認されていない。しかし、耐性グラム陽性感染症が依然としてかなりの死亡率をもたらしているため、グラム陽性治療薬の改善も必要である 1。

大麻草の主な非精神活性成分であるカンナビジオール(CBD)は、アルキル置換シクロヘキセンテルペン環系にペンチル置換ビスフェノール芳香族基(ペンチルレゾルシノール)が結合した低分子(MW 314 Da)のフィトカンナビノイドである(図 1a)。CBD は、Cannabis sativa L.の植物から抽出できる 100 種類以上のカンナビノイドの一つであり、その多くが生物学的活性を有することが示されている 8。

CBDは 1940 年にミネソタ州の野生のヘンプから初めて単離されたが 9、その構造が完全に解明されたのは1963 年のことであった 10。CBD は非常に顕著なポリファーマコロジ(多重標的の薬理相互作用)を持っており、様々な疾患への適応が広範囲にテストされている。カンナビノイドの臨床研究では、化学療法による吐き気や嘔吐の軽減、HIV/AIDS における食欲増進、慢性疼痛、多発性硬化症や対麻痺による痙縮、うつ病、不安障害、睡眠障害、精神病、緑内障、トゥレット症候群 11 の治療について検討されている。

CBD は、抗炎症作用 12 および神経保護作用 13 を有している。CBD の高純度オイルベースの液体製剤(米国では EpidiolexR、欧州連合(EU)では Epidyolex)が、2018 年に食品医薬品局(FDA)から、2019 年に欧州医薬品庁(EMA)から、ドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群という二つのてんかんの経口治療薬として承認された 14,15,16。しかし、未規制の CBD オイル製品も広く一般に使用されており、合法性、品質、安全性など様々な懸念があり 17、特に小児 18 では、正式な臨床承認前に CBD がドラベ症候群の治療に使用されたこともある 19。

van Klingerenとten Ham20による1976年の発表では、グラム陽性ブドウ球菌と連鎖球菌に対する精製抽出CBDとΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の両方の最小発育阻止濃度(MIC)が1?5μg mL-1の範囲で報告されており、CBDの多くの薬理特性の中に抗菌活性が含まれている。両カンナビノイドは、4%血清を含む培地で大部分が不活性化され(MIC 50 μg mL-1)、グラム陰性大腸菌、Salmonella Typhi、またはProteus vulgaris(MIC >100 μg mL-1)に対する活性は示さなかった。精製された化合物とは対照的に、大麻抽出物の抗菌特性については、多くの先行論文21および後続論文22が報告されている。

CBDの抗菌活性の最初の記述は、新しい報告23が現在の臨床に関連する6つのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株に対する5つの主要なカンナビノイド(CBD、カンナビクロメン[CBC]、カンナビゲロール[CBG]、THCおよびカンナビノール[CBN])のMIC値は0.5〜2μg mL-1の範囲であることを示した。すべての効力を評価するまではほとんど無視されていたようである。また、多くの合成誘導体も試験された。最近の報告では、CBGの抗菌特性24がさらに明らかにされている。

CBDは、その抗炎症作用の報告に基づいて、にきび(NCT03573518)およびアトピー性皮膚炎(NCT03824405)の局所治療のための第2相臨床試験中である。両皮膚疾患は細菌感染とも関連していることから、CBDの抗菌特性についてより詳細に検討することに興味を持った。今回の研究の重要な特徴は、これまでの研究で用いられた精製された抽出CBDではなく、合成CBDに基づいていることで、植物源の違いによるバッチ間の変動の可能性を回避し、微量ではあるが潜在的に強力な生物由来の不純物による結果のバイアスを回避している。

我々の研究は、CBDが、様々な薬剤耐性株を含む広範囲のグラム陽性菌に対して一貫した活性を有することを実証した。興味深いことに、この活性は、淋菌のような懸念される病原体を含むグラム陰性菌の小さなサブセットにも及んでいる。予備的な構造活性相関研究は、CBDの抗生物質特性を改善する余地があることを示しており、全身in vivo活性を持つアナログを開発するためにさらなる研究が必要であることを示している。


続きの仮訳は、下記PDFをダウンロードしてください。



FileName:
LinkIcon カンナビジオール(CBD)の抗菌活性の可能性(2021)

欧州医薬品庁「大麻由来医薬品の用語と定義の整理」


2022/06/24


欧州医薬品庁ハーブ医薬品委員会:Committee on Herbal Medicinal Products (HMPC)では、治療目的の大麻草の利用について関心が高まっていることを受けて、2021年9月版の「大麻由来医薬品の用語と定義の整理」を公開しました。

本学会では、原文の仮訳を行いましたので公開します。

本文では、「CBDオイル」および「大麻オイル」は、欧州薬局方と関連する「大麻エキス」や「大麻種子油」の用語と比べて不十分な定義であることを指摘しています。


大麻由来医薬品の用語と定義の整理
Compilation of terms and definitions for Cannabis-derived medicinal products

本書の範囲

本書は、大麻由来製品の治療への関心が高まる中、大麻由来医薬品の表示及び製造において、より調和のとれたアプローチを促進するため、欧州委員会の要請に基づき、ハーブ医薬品委員会(HMPC)が制定したものである。

本書の目的は、医薬品に関する EU 法規制、EU 医薬品品質ガイドライン、欧州薬局方の規格を考慮し、大麻由来医薬品の評価に関連する既存の科学的・法的用語を要約することである。

HMPC は、広範な概観を確立するために、西洋ハーブ成分、西洋ハーブ又は西洋ハーブ医薬品に関連する用語だけでなく、単離された成分の非網羅的な選択も考慮に入れている。
本書は、異なるEU加盟国における大麻由来成分又は製品の使用、分類及び法的地位について言及するものではなく、またこれを妨げるものでもない。


目次

1. はじめに .. 3
2. 用語の定義の整理 .... 3
2.1. 医薬品.... 3
2.2. 西洋ハーブ成分..... 4
2.2.1. 植物 大麻草(Cannabis sativa L.)..... 5
2.2.2. 植物部位.... 5
2.3. 西洋ハーブ調剤..... 6
2.3.1. 一般的に使用される用語と関連する欧州薬局方の用語/定義.... 7
2.3.2. 一般的に使用される用語 - 定義が不十分.... 9
2.4. 大麻草の成分..... 10
2.4.1. カンナビノイド ..... 10
2.4.2. 揮発性テルペン類(精油)..... 13
2.4.3. フェノール化合物.... 13
2.5. 大麻由来医薬品の開発において考慮すべきその他の用語...13

訳注:「西洋ハーブ」という用語は、生薬(crude drug)、日本の漢方薬(Kampo medicine)、中国の中薬(traditional Chinese medicine)と区別される植物薬(herbal medicine, herbal drug, botanical medicine, botanical drug, plant medicine, plant drug)に相当する。本文では、植物薬や植物性医薬品(herbal medicinal product, botanical drug product)の訳語を使わず、漢方薬や中薬との区別を強調するために「西洋ハーブ」で統一した。

参考文献
袴塚高志.西洋ハーブ医薬品について. ファルマシア Vol.50 No.10 2014
LinkIcon https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/10/50_978/_pdf
漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記 https://www.nikkankyo.org/seihin/seihin4.htm


原文
Compilation of terms and definitions for Cannabis-derived medicinal products
LinkIcon https://www.ema.europa.eu/documents/other/compilation-terms-definitions-cannabis-derived-medicinal-products_en.pdf



FileName:
ダウンロード: LinkIcon 大麻由来医薬品の用語と定義の整理

ドイツ政府 大麻公聴会キックオフ 「大麻だけど安全!」


2022/06/16


ドイツでは、1996年に産業用大麻を合法化し、2017年に薬用大麻(ハーブ製品、カンナビノイド医薬品)を合法化しています。


2022年6月からは、嗜好用大麻(大麻ハーブ)の規制管理のあり方についての公聴会が始まりました。薬物政策を180度転換するものになるので、多くの利害関係者との対話をもつことが大きな特徴となっています。

プレスリリース及びよくある質問(FAQ)を仮訳しました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これからは大麻ハーブの話題で新境地を切り開く!」
ブライエナート(ドイツ連邦政府薬物・依存症担当委員)

消費目的のために成人への大麻ハーブを管理することに関する計画的な立法プロセスの準備として、5つの専門家による公聴会のうち最初のものが、6月14日から連邦保健省で開催されます。依存症医学、依存症支援、法律、ビジネス、協会などの分野の第一人者や、連邦州、地方自治体、連邦省庁、連邦当局の代表者など、総勢200名以上が中心となって議論を行う予定です。また、海外の有識者も発言します。

5回の専門家公聴会を予定しています。

・健康および消費者保護
・青少年の保護と予防
・供給体制、環境、経済性の問題
・消費目的の大麻ハーブの規制供給導入に伴う刑事責任、規制措置、ライセンス供与
・国際的経験


連邦政府の薬物・依存症担当委員であるブルクハルト・ブリエナート氏は、「時が来た:我々は立法の準備段階を開始する!」とコメントしています。ようやく発表することができ、私自身、特別な喜びを感じています。他の多くの人と同様、私はドイツで大麻使用者の犯罪化をようやく止め、近代的で健康志向の大麻政策を開始するために何年も活動してきました。

公聴会では、実施に際して、どのような施策が青少年、健康、消費者の最良の保護を保証できるかを議論します。なぜなら、1つだけはっきりしていることは、私たちは特に子どもたちや若者を起こりうるリスク(危険性)から守りたいということだからです。"

この5回の公聴会と招聘された専門家との対話は、今後の鍵となる論点提案書の確かな基礎となるものです。

第5回公聴会「国際的経験」は、2022年6月30日にベルリン・アライアンス・フォーラムで報道関係者向けに開催される予定です。

取材は、薬物・依存症対策庁の報道官を通じて可能になりました。

詳細については、www.bundesdrogenbeauftragter.de/cannabis-aber-sicher/ をご覧ください。

FAQ - よくある質問

ドイツで大麻ハーブは合法になるのですか?

連立パートナーは、「認可された店舗で成人に対する消費目的の大麻ハーブの管理された流通」を認めることに合意している。明確に定義された法的枠組みの中で、大麻ハーブの販売、購入、所持が許されるようになる予定です。立法プロセスの第一の目標および指針は、消費者のために最良の健康保護を確保し、子供や若者の保護を確実にすることです。

ドイツで大麻ハーブの管理が行われるのはいつですか?

この連立協定の実行は複雑な事業であるため、十分な準備が必要です。したがって、2022年夏には、青少年、健康・消費者保護、栽培、取引、課税などの中心的な問題について、薬物・依存症担当委員の主導のもと、体系的な協議プロセスを経て議論することになっています。今年中に最初の法案を提出することを目指しています。

公聴会の内容とは?

この公聴会は、プロジェクトの実施に必要な専門知識を蓄積し、他の国の経験で補完することを目的としています。また、異論や反論をオープンにし、議論できる場を作ることです。そのため、専門家と社会的利益団体の代表者の両方が、規制と解放をめぐる中心的な問題を明らかにすることになります。当初は5部構成で、連邦政府の薬物・依存症担当委員ブルクハルト・ブリエナート氏が中心となり、連邦保健省と連携して協議が行われる予定です。法案作成に関わる多数の連邦省庁も、協議のイベントに参加しています。

公聴会はいつから始まるのですか?

2022年6月中旬から数日間、専門家や社会的利益団体の代表者が集まり、大麻ハーブの供給規制の実施に関連した議論を行う。正確な日程は、このページでお知らせします。

公聴会は一般に公開されていますか?参加できますか?

公聴会プロセスの目的は、できるだけ幅広く、体系的な方法ですべての関連するステークホルダー(利害関係者)を巻き込み、平等かつ適切な発言権を与えることです。後者は、参加人数を制限する必要があります。参加者の輪は、連邦保健省や他の連邦省庁と協議の上、薬物・依存症担当委員が決定します。参加申し込みはできません。ただし、テーマや参加者、可能な限り参加者の中心的な発言を薬物・依存症対策委員会のホームページで公開することにより、透明性を確保しています。2022年6月30日に開催される「国際専門家ヒアリング〜国際経験者会議〜」の模様もストリーミングでご覧いただけます。

大麻ハーブの商業栽培と流通のライセンスはすでにあるのですか?

いいえ。生産と配給の正確な方法はまだ検討中であり、その後の立法プロセスで定義される予定です。

家庭での栽培は可能か?大麻ハーブ所持の前科は覆るのか?道路交通にはどのような制限が適用されますか?大麻は何歳から使えるようになるのですか?

現段階では、これらと同様の質問に対して、答えを出すことはできません。これらの問題は、後の立法過程で明らかにされるでしょう。

公聴会の概要

I 2022年6月14日: 健康および消費者保護
ii 2022年6月15日:青少年の保護と予防
iii 2022年6月28日:供給体制、環境・経済問題
iv 2022年6月29日:刑事責任、管理措置、ライセンス
V 2022年6月30日: 国際専門家会議 - 国際的な経験に関する会議

I 健康および消費者保護
日時:2022年6月14日午前9時〜午後4時

招待された参加者

最高国家衛生当局の作業部会(AOLG)。
保健大臣会合依存に関するワーキンググループ(GMK)
小児科・思春期専門医会(BVKJ)
連邦消費者保護・食品安全局(BVL)
児童・青少年保護のための連邦ワーキンググループ(BAJ)
ドイツ医学協会 (BAK)
連邦医薬品・医療機器研究所(BfArM)
連邦リスクアセスメント研究所(BfR)
連邦心理療法士協会(BPtK)
連邦薬物業務受入・人道的薬物政策協会(akzept e.V.)
連邦自治体アンブレラ組織協会
ドイツ連邦薬剤師会(ABDA)
連邦健康教育センター(BZgA)
ドイツ・エイズ・エイド(DAH)
ドイツ薬物・薬物依存監視センター(DBDD)
ドイツ小児青少年医学会 (DGKJ)
ドイツ予防・健康促進協会(DGPG)
ドイツ精神医学・心理療法・サイコソマティクス・神経学会(DGPPN)
ドイツ依存研究・依存療法学会 (DG-Sucht)
ドイツ依存学会(DGS)
ドイツ依存問題センター(DHS)
ドイツヘンプ協会(DHV)
ドイツ児童青年期依存問題研究センター(DZSKJ)
IFT-ノルド
治療研究所(IFT)
レンダー(ドイツ)青年・家庭大臣会議(JFMK
アディクション問題担当の州事務所
全国健康リテラシー行動計画(ハーティー・スクール)
ゲッティンゲン大学医療センター(UMG)
ドイツ消費者団体連盟 (vzbv)

II 青少年の保護と予防
日時:2022年6月15日午前9時〜午後4時


III 供給体制、環境、経済性の問題
日時:2022年6月28日午前9時〜午後4時


IV 刑事責任、管理措置、ライセンス
日時:2022年6月29日午前9時〜午後4時


V 国際専門家会議 - 国際経験に関する会議
日時:2022年6月30日午前9時〜午後4時

この公聴会は録音され、ストリームとして公開されます。


原文引用 ドイツ連邦政府 薬物・依存症問題担当委員
https://www.bundesdrogenbeauftragter.de/presse/detail/kick-off-fuer-den-cannabis-konsultationsprozess-cannabis-aber-sicher/


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

日本政府「骨太の方針」に大麻由来医薬品が掲載


2022/06/10


22年6月7日に経済財政運営と改革の基本方針 2022(骨太の方針)が閣議決定されました。その中で大麻由来医薬品について「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。」と明記されました。本学会では、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進めるために、今後とも関係各位の皆様と協力して取り組んで行く予定です。

経済財政運営と改革の基本方針 2022(一部抜粋)p33

第4章 中長期の経済財政運営
2. 持続可能な社会保障制度の構築
(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)

経済安全保障や医薬品産業ビジョン 2021 等の観点も踏まえ、医薬品の品質・安定供給の確保とともに創薬力を強化し、様々な手段を講じて科学技術力の向上とイノベーションを実現する。がん・難病に係る創薬推進等のため、臨床情報と全ゲノム解析の結果等の情報を連携させ搭載する情報基盤を構築し、その利活用に係る環境を早急に整備する。がん専門医療人材を養成するとともに、「がん対策推進基本計画」の見直し、新たな治療法を患者に届ける取組を推進する等がん対策を推進する。大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。

経済財政運営と改革の基本方針 2022
新しい資本主義へ 〜課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜
LinkIcon https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/0607/shiryo_04-1.pdf

大麻使用障害は5〜7割が遺伝的要因。7番染色体に新しい大麻使用障害のリスク遺伝子を発見


2022/06/03


大麻使用障害と遺伝についてのお問い合わせがありましたので、関連するレポートの仮訳をしました。


タイトル:
大麻使用障害に関する大規模ゲノムワイド関連解析のメタアナリシス

概要
背景 大麻使用障害に対する罹病性のばらつきは、遺伝的要素が強く(双子や家族の推定遺伝率は約50〜70%)、精神病理 のリスク増加などのネガティブな結果と関連している。本研究の目的は、大麻使用障害に関連する新規の遺伝子変異を同定するために、大規模なゲノムワイド関連研究(GWAS)を実施することであった。

方法 大麻使用障害のGWASメタ解析を行い、遺伝子座との関連を明らかにするために、Psychiatric Genomics Consortium Substance Use Disorders working group, iPSYCH, deCODEのサンプル(症例20916サンプルと対照363116サンプル)を使用し、大麻使用障害の症例と対照サンプルを対比させた。

大麻使用障害と関心のある22の形質(表現型との相関関係が既に発表されている(例:精神疾患)、または大麻使用障害との関連が示唆されている(例:日内変動))との間の遺伝的重複を調べるために、連鎖不平衡スコア回帰を用いて遺伝的相関関係を算出した。

結果 2つのゲノムワイドで有意な遺伝子座を同定した。7番染色体の新規遺伝子座(FOXP2、リードSNP rs7783012、オッズ比[OR]1-11、95%CI 1-07-1-15、p=1-84 × 10-?)と、8番染色体の既往遺伝子座(CHRNA2およびEPHX2近傍、リー ドSNP rs4732724、OR 0-89、95%CI 0・86-0・93、p=6-46 × 10-?)であった。

大麻使用障害と大麻使用は遺伝的に相関していたが(rg 0-50, p=1-50 × 10-21),検証した22の形質のうち12の形質と有意に異なる遺伝的相関を示し,大麻使用と大麻使用障害の遺伝的背景が少なくとも部分的に異なることを示唆していた。

大麻使用障害は、ADHD、大うつ病、統合失調症などの他の精神病理と正の遺伝的相関を示した。

解釈 今回の結果は、大麻使用障害は他の精神病理と遺伝的罹病性(遺伝的に病気になりやすい体質)を共有しているという理論を支持し、大麻使用に対して遺伝的罹病性と大麻使用障害の間に違いがある。


はじめに

大麻の使用は一般的であるが、ほとんどの大麻使用者は大麻使用障害に進行しない。大麻使用障害の罹病の約50〜70%は、遺伝的要因によるものとされている1。

大麻使用障害に関する3つのゲノムワイド関連研究(GWAS)2-4では、ゲノムワイドに有意な変異体が同定されているが、サンプルサイズが不十分であること(これまでの最大規模の研究のサンプルサイズは51372、症例数は2387)、サンプル間の不均一性のため、再現性のある知見は少ない:CHRNA2(ニコチン性アセチルコリン受容体をコードする)のシス-eQTLでタグ付けされた1つの遺伝子座のみが確実に同定されている3。

生涯の大麻使用に関するGWAS(総サンプル数184,765、症例数43,380)では、8つのゲノムワイドな有意な遺伝子座と35の有意な遺伝子が同定された5。双子の研究では、大麻実験の初期段階と後の大麻使用障害との間に高い遺伝的相関関係があることが示唆されている6。しかし、大麻を気軽に使用することは、さまざまな社会環境の影響や年齢-期間コホート効果の影響を受ける一方で、大麻使用障害への進行は他の精神病理と関連している。

アルコール消費とアルコール使用障害の遺伝的原因は、他の精神疾患や特性との異なる遺伝的関連性を含め、部分的に異なることが示唆されている7,8。そこで、大麻使用障害のゲノム上の罹病性を調べることに加えて、大麻使用と大麻使用障害の根底にある遺伝的影響が、行動や脳の測定に関して異なるかどうかを検証した。

続きは、PDFファイルをダウンロードしてお読みください。

原文:
A large-scale genome-wide association study meta-analysis of cannabis use disorder. Lancet Psychiatry 2020 (12):1032-1045.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7674631/

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。




FileName:
ダウンロード: LinkIcon 大麻使用障害に関する大規模ゲノムワイド関連解析のメタアナリシス(2020)

米国の薬用大麻と嗜好用大麻のTHC濃度は、どれぐらいあるのか?


2022/05/27


米国では、2018年農業法によって、THC濃度が0.3%以下のものをヘンプ、0.3%を超えるものをマリファナと区別しています。

一方、医療目的の大麻(薬用大麻)と、嗜好目的の大麻(嗜好用大麻)では、THCやCBD濃度がどのように違うのかについてあまり知られていません。

この疑問点を詳細に調査した論文がありましたので仮訳をしました。


タイトル:米国における薬用および嗜好用大麻の効力マッピング

概要
大麻関連のオンライン検索は、特に薬局から情報を得た場合、薬用大麻に対する肯定的な態度と関連している。薬用大麻の主な使用理由は痛みであるため、薬局のウェブサイトからの情報は、痛み患者の大麻に対する姿勢を形成する可能性がある。

これは、大麻が神経障害性疼痛において低テトラヒドロカンナビノール(THC)濃度(5〜10%未満)で有効性を実証しており、嗜好領域で高い報酬を得ている強力な大麻(THC15%以上)とは対照的であることと関連している。痛みにおけるCBDの役割は明確ではないが、それは人気を得ている。

したがって、オンラインで広告されている薬用大麻の効力は、嗜好目的で広告されている大麻と同様であり、薬用大麻に対する誤解を生む可能性があるという仮説を立てた。

現在、合法的な大麻市場における広告の効能に関する知識が不足しているため、自分の症状のために大麻を使おうとしている患者を保護するために、オンライン広告に関する明確なポリシーを作成することが制限されている。

そこで、米国の薬局でオンライン販売されている大麻製品のTHCとCBDの含有量を評価し、製品の薬用としての適性を判断するとともに、合法的な薬用・嗜好用プログラムで提供されている製品の効力を比較した。薬局のウェブサイトから提供されたすべてのハーブ大麻製品のTHCとCBD濃度を記録し、州間または州内で比較した。西部4州(CA、CO、NM、WA)および北東部5州(ME、MA、NH、RI、VT)を対象とした。653の薬局で合計8,505の大麻製品がサンプリングされた。

大麻の薬用と嗜好用には明確な違いがあるものの,薬用プログラムでオンライン広告された平均THC濃度は,異なるプログラムを持つ州間,または同じ州内(COまたはWA)の薬用と嗜好用プログラム間で比較すると,嗜好用プログラム(21.5%±6.0)と同程度の薬用プログラム(19.2%±6.2)であった。

CBD濃度が低いと、THCの高い製品が伴っていた。薬用・嗜好用プログラムを問わず、大半の製品はTHCが15%以上であると宣伝されていた(製品の70.3%〜91.4%)。これらの記載濃度は、医療目的、特に慢性神経障害性疼痛の患者には適さないように思われる。

このような情報は、高活性大麻が痛みの治療に安全であるという誤解を招きかねない。このデータは、合法的な薬局の製品や違法市場の全国的な製品に含まれるTHCやCBDを実際に測定した報告とも一致し、これらの製品を摂取した患者が急性酩酊や長期的な副作用のリスクを負う可能性を示している。

本研究は、大麻に対する誤解を防ぎ、疼痛患者のリスクを軽減するための政策立案の根拠となるものである。


原文
Mary Catherine Cash ,Katharine Cunnane ,Chuyin Fan,E. Alfonso Romero-Sandova,
Mapping cannabis potency in medical and recreational programs in the United States,
PLoS ONE 2020,15(3): e0230167.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0230167

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

健康な人におけるCBDオイルの安全性、薬物動態および薬力学的特性


2022/05/20


CBDオイル(CBD:THC=20:1)のタイプについての薬物動態や薬物検査についての貴重な臨床データです。仮訳しましたので、興味のある方はダウンロードしてお読みください。


健康な人におけるCBDオイル(スペクトラムイエローオイル)の安全性、薬物動態および薬力学的特性

要旨
薬物動態(PK)および薬力学(PD)データの発表がないため、医療目的で使用される大麻の適切な投与量に関する意思決定が限られている。この複数回投与試験では、スペクトラムイエローオイル(Spectrum Yellow oil)(20 mg/mL カンナビジオール(CBD)/<1 mg/mL ?9-テトラヒドロカンナビノール(THC))の安全性、忍容性、PKおよびPDが評価された。

参加者(n = 43)は、
120 mg CBDおよび5.4 mg THC日用、
240 mg CBDおよび10.8 mg THC日用、
360 mg CBDおよび16.2 mg THC日用、
480 mg CBDおよび21.6 mg THC日用
またはプラセボの5群のいずれかに無作為に割り付けられた。

試験薬は12時間ごとに7日間連続で投与された。治療出現有害事象(TEAE)、THC、CBDおよび代謝物の血漿および尿中濃度、ならびに自己報告による主観的な影響を収集した。

ほぼすべての有害事象(44/45)は軽度または中等度の重症度であり、重篤なものはなかった。TEAEの最も高い発生率(67%)は、2つの高用量治療群であった。

最も多くの有害事象(17/45)は、最初の治療日に発生した。定常状態の血漿中CBD濃度は7日目までに到達した。7日目のCBD曝露は用量比例を示した(AUC0-t slope = 1.03 [0.70, 1.36], Cmax slope = 0.92 [0.53, 1.31] )。ほとんどの血漿中THC濃度は定量限界以下であった。

1日目から7日目にかけて、プラセボと試験薬の有効成分との間に一貫した主観的効果の差は見られなかった。

スペクトラムイエローオイルで忍容性を改善するための慎重なアプローチは、最初の用量がCBD総量240mgおよびTHC総量10.8mg以下の分割投与で、忍容性に基づいて必要に応じて時間をかけて漸増させることかもしれない。


原文
Erica N Peters,corresponding author Irina Mosesova, Laura MacNair, Ryan Vandrey, M Hunter Land, Mark A Ware, Cynthia Turcotte, and Marcel O Bonn-Miller. Safety, Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Spectrum Yellow Oil in Healthy Participants. Journal of Analytical Toxiclogy. 2022 May; 46(4): 393?407.
https://dx.doi.org/10.1093/jat/bkab026 

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ダウンロード: LinkIcon 健康な人におけるCBDオイルの安全性、薬物動態および薬力学的特性


CBDとヘンプ生地の効果について


2022/04/14


本学会にCBDを塗布した衣料品についてのエビデンスのお問い合わせがあり、それに該当する論文がありましたので、下記に示します。

タイトル:
Cannabis sativa L.抽出物のカンナビジオール(CBD)で修飾された生物活性をもつヘンプ生地

概要
ヘンプ繊維の品種であるBialobrzeskieは、その化学組成にフェノール酸を含み、固有の抗酸化作用と抗菌作用を有している。この原料を繊維製造に使用することで、人間の皮膚に良い影響を与える機能性衣類を作ることができる。本研究の目的は、純粋な産業用ヘンプの原料を用いた生物学的に活性な機能性衣類を開発することであり、布の表面に塗布したカンナビジオール(CBD)抽出物が繊維の生物活性を強化する。衣料技術の設計は、ヘンプ固有の特性を安定したレベルに保ち、植物栽培から衣料品製造までのバリューチェーンの各段階で化学物質を使用しないことに焦点を当てた。

研究では、ヘンプ生地のフェノール酸含有量とFRAP(The Ferric Ion Reducing Antioxidant Power)抗酸化活性を評価した。CBDを配合したヘンプ生地は、衣料品に使用された。ヒト試験では、15名のボランティアに6週間着用してもらい、ヘンプ衣服の皮膚への影響を評価した。皮膚のパラメータは、皮膚の水分、経表皮水分損失、皮脂のテストを含む皮膚の生物物理学的特性の測定を含む独自の方法論に従って、衣類の着用前と着用後の6週間の2回テストされた。また、繊維に含まれる活性物質がヒトのケラチノサイトのin vitro(試験管内)培養に及ぼす影響も評価された。

その結果、CBD抽出物を生地表面に塗布したヘンプの機能性衣料の着用は安全であり、皮膚状態の改善をもたらし、皮膚の老化を遅らせることに影響を与えることが証明された。繊維とカンナビジオールの結合活性によるハイブリッド生物活性を有する純ヘンプ機能性衣類を対象とする発明は、特許出願中(特許出願番号:P.438388、2021年)である。


原文
Malgorzata Zimniewska, Mariola Pawlaczyk, Barbara Romanowska, Agnieszka Gryszczy?ska, Edyta Kwiatkowska, and Patrycja Przybylska, Bioactive Hemp Clothing Modified with Cannabidiol (CBD) Cannabis sativa L. Extract. Materials (Basel). 2021 Oct; 14(20): 6031.
https://dx.doi.org/10.3390%2Fma14206031


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

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ダウンロード: LinkIcon カンナビジオール(CBD)で修飾された生物活性をもつヘンプ生地

国際疼痛学会声明:カンナビノイド(大麻を含む)に関する非技術的なサマリー 2021


2022/04/04


本学会にカンナビノイドと痛みについてのお問い合わせがありましたので下記に参考情報としてお知らせします。

国際疼痛学会(IASP)により1979年に定められた痛みの定義が、2020年7月に41年ぶりに改定されています。

●痛みの定義 2020 日本語訳(日本疼痛学会 2020.7.25)

「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、
あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」

付記
痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々
な程度で影響を受けます。
痛みと侵害受容は異なる現象です。 感覚ニューロンの活動だけから痛みの存
在を推測することはできません。
個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。
痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。
痛みは,通常,適応的な役割を果たしますが,その一方で,身体機能や社会的
および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。
言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。コミュニ
ケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験
している可能性を否定するものではありません

●日本痛み関連学会

日本疼痛学会,日本ペインクリニック学会,日本慢性疼痛学会,日本腰痛学会,日本運動器疼痛学会,日本口腔顔面痛学会,日本ペインリハビリテーション学会,日本頭痛学会


●国際疼痛学会声明:カンナビノイド(大麻を含む)に関する非技術的なサマリー 2021

2021 年 3 月 19 日金曜日
国際疼痛学会声明:カンナビノイドに関する非技術的なサマリー 2021
以下の声明は 2021 年 2 月 9 日の IASP 評議会で承認されました。(https://www.iasppain.org/summarystatement)

IASP では大麻とカンナビノイドの前臨床研究と臨床上の安全性と有効性を検討した結果、重要な研究上の隔たりが明らかになりました。質の高い臨床エビデンスがないため、IASPは現在、大麻とカンナビノイドの痛みの緩和のための一般的な使用を支持していません。IASP は、この研究における隔たりを埋めるための前臨床および臨床研究と、このテーマに関する教育が急務であると認識しています。

背景

国際疼痛学会(IASP)は、研究、教育、臨床実践を支援し、あらゆる疼痛疾患の患者の転帰を改善するために活動しています。世界の痛みの軽減を改善することを目的とした世界的な組織として,IASP には公衆衛生を護る事や痛みの研究と治療に関連する問題に対処する義務があります。そのような問題の一つに、痛みの緩和を目的とした大麻やカンナビノイドへの関心の高まりとその使用の課題があります。世界では、大麻やカンナビノイドの使用を認めている国や地域が増えていますが、その際には、新薬を承認するための従来の確立された規制プロセスが適用されないまま進んでいる場合もあります。

この差し迫った問題に対応するために、IASP はプレシデンシャルタスクフォースを設置しました。Andrew Rice 教授(Imperial College London)の指導のもと、タスクフォースは、痛みを軽減するための 大麻およびカンナビノイドの有効性と、そうした使用の安全性に関する IASP の立場表明を作成しました。ポジション・ステートメントに反映させるために、タスクフォースは 2 年半かけて、入手可能な研究を徹底的に評価し、これまでで最も詳細で堅実な分析を行いました。この取り組みから得られた科学的な成果は、雑誌「PAIN」に掲載されています。

まとめ
現時点では、大麻とカンナビノイドの痛みに対する一般的な使用を IASP が支持するには、十分な高品質のヒト臨床安全性と有効性のエビデンスが存在しません。実験室での多種多様なカンナビノイドに関する研究では、効果的な痛みの緩和が期待されていますが、そのほとんどがまだ実際の疼痛患者でテストされていません。

この問題について、人々が十分な情報を提供され、保護されるためには、生産、販売、表示に関する規制の安全性、基準、管理をより厳格にすることが推奨されます。また、タスクフォースは、エビデンスにいくつかの隔たりがあることを見つけています。これらの隔たりを解消するための先決順位を定めた研究アジェンダも発表しました。 これらの先決事項には、大麻またはカンナビノイドから最も恩恵を受ける可能性のある痛みを持つ患者と、最も害を受ける可能性のある患者の特徴を特定することが含まれています。また、試験対象となる化学物質の種類を増やし、適切な投与量とその効果を特定し、最適な投与方法を決定する必要があります。また、研究チームに患者のパートナーを加えることも推奨されます。

結論
現時点で IASP は大麻やカンナビノイドの痛みに対する一般的な使用を支持することは
できません、 しかしこれは、大麻やカンナビノイドの使用によって恩恵を受けた痛みを持つ人々の生活体験を否定するものではありません。IASP は慢性的な痛みと、それによる機能、健康、生活の質に与える影響を軽減するためには、時には薬を含みますが、薬に限定されない、複数のアプローチが必要であると考えています。これらのアプローチは、各個人の具体的なニーズに応じて異なります。 これは、この大麻・カンナビノイドの問題に対するドアを閉めるということではなく、痛みの緩和のための大麻の使用に関連する潜在的な利益と害をよりよく理解するために、より厳密で堅実な研究を求めているのであり、規制基準と安全策によって患者と一般市民の安全を確保するためであります。

引用 https://upra-jpn.org/archives/339

参考「日本痛み関連学会連合」
https://upra-jpn.org/

CBDの変換とその向精神作用に関するレポートを仮訳


2022/03/23


2018年米国農業法によるヘンプ由来CBD(カンナビジオール)の合法化に伴い、CBD誘導体となる半合成カンナビノイドが注目されています。本学会にCBD誘導体についての質問がありましたので、CBDの変換とその向精神作用に関するレポートの仮訳をしました。

本レポートでは、CBDから変換できる下記の19の化合物と101の立体異性体を紹介しています。
CBN、CBD、?9-THC、?7-THC、?8-THC、?10-THC、?11-THC、11- hydroxy-CBD、5′-hydroxy-CBD、11,5′-hydroxy-CBD、11- hydroxy-THC、11,5′-dihydroxy-THC、8-hydroxy-iso-HHC、9α-hydroxy-HHC、9-methoxy-HHC、10-methoxy-HHC、9-ethoxy-HHC、10-ethoxy-HHC、iso-THC

目次
1. はじめに
2. 材料と方法
3. 結果および考察
3.1. カンナビノイドの向精神作用
3.2. CBDの変換
3.2.1. CBD、その分解生成物、その他のカンナビノイドの検出における分析上の課題
3.2.2. 酸性条件下での CBD の変換
3.2.3. In vitro 研究:人工胃液及び他のモデル系における CBD の変換
3.2.4. In vivo 研究:動物及びヒトにおけるCBDの変換
3.2.5. CBD 製品の保管中の CBD の転換
4. 結論


結論(抜粋)

CBDの薬理効果に関連する論文の数は増えており,CBD製品の販売者は,ほとんどの場合臨床的な証拠がないにもかかわらず,特定の健康強調表示で商品を宣伝することを奨励している[113]。 市場に出回るそのような製品の数が増えるとともに、これらの製品の効能に関連する消費者の安全性や消費者への欺瞞に関する懸念が広がっている。

これらの疑問の1つは,in vitro(試験管内)及びin vivo(生体内)条件下におけるCBDの向精神性カンナビノイドへの潜在的変換であり,これは現在進行中の科学的議論の話題である。塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸などの強酸で処理すると、CBDが向精神薬であるΔ9-THCおよびΔ8-THCに変換されることは、多くの論文で疑いなく証明されている。これらの知見のいくつかは、例えば人工胃液を用いた培養など、in vitroの条件下でも起こることが証明されている。

CBDのin vivoでのΔ9-THCへの変換は、大部分の動物実験では支持されず、Δ9-THC及びその代謝物である11-ヒドロキシ-THCと11-COOH-THCAは血中及び脳組織で検出されなかったので、これらの結果のin vivo条件への移行が、現在進行中の論争の主要なポイントであると思われる。

さらに,ヒトのいずれの研究においても,CBDの経口投与後にΔ9-THC及びその代謝物のいずれも検出されなかった。GC/MSやLC-MS/MSのような検出方法から生じる困難は、矛盾する結果のいくつかを説明するのに役立ち、進行中の議論に寄与しているかもしれない。しかしながら,発表されたデータのほとんどは,CBD製品の経口摂取により,CBDが薬理作用の閾値を超える量のΔ9-THCに変換される可能性は,ヒトの生体内ではあまり高くないという結論を支持している。

しかし,CBD製品の包括的なリスク評価には,Δ9-THC(又は他の向精神性カンナビノイド)のin vivoでの生成の監視だけでなく,製品自体で生じる摂取前の反応も必要である。CBDの向精神性代謝物への変換を支持する、この論文で決定された最も強力で最も臨床的に関連性のある証拠は、不適切な保管の間である。例えば、CBDは保管条件下でΔ9-THCに環化するかもしれないが、たとえ両方の化合物がさらにCBNに分解されたとしても、そのCBN自体が向精神作用を示す可能性がある。

したがって、製造業者は、CBDの分解による向精神性化合物の形成を考慮して、完成品にCBDの長期安定性に特化した保存性試験を含めることが特に必要である。したがって、興味深い可能性として、食品中の脂質化合物を酸化から保護するために使用される酸化防止剤と同様に、CBDの分解を防止したり遅らせたりするのに役立つ化合物や条件について試験することも考えられる。


原文
Patricia Golombek, Marco Muller, Ines Barthlott, Constanze Sproll and Dirk W. Lachenmeie,
Conversion of Cannabidiol (CBD) into Psychotropic Cannabinoids Including Tetrahydrocannabinol (THC): A Controversy in the Scientific Literature. Toxics 2020, 8(2), 41;
https://doi.org/10.3390/toxics8020041

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ダウンロード:CBDのTHCを含む向精神性カンナビノイドへの変換:科学文献における論争(2020)

国際大麻ツールキット(iCannToolkit):大麻使用を測定するための最低基準。基準THC量の1単位=5r


2022/01/27


専門家のコンセンサスに基づく、大麻使用量を定量化するための最低基準の枠組みに関する論文の仮訳です。

ここでは、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)等が21年5月から大麻研究者に推奨している基準THC量の1単位=5rを紹介しています。

THCの1単位とは、アルコール単位と同じような考え方であり、アルコールの1単位は10gです。これによって、ビール、日本酒、焼酎、ワイン、チューハイなどの飲酒量比較が容易になります。
参考:飲酒量の単位
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html

大麻製品は、効力、化学型、種類(ハーブ、樹脂、濃縮液)、摂取方法が多岐に渡るため、目安の単位が必要とされていました。THCの最小毒性量(LOAEL)が2〜8rというエビデンスを根拠に基準THC量の1単位を5rとしています。実際には10rぐらいないと効力が足りない(感じられない)と常に議論されていますが、より低リスクになることを推奨するために5rの値が採用されています。

ちなみに、5mgのTHCは、カナダの合法化している嗜好用大麻のカテゴリーである食用大麻(エディブル)基準などの上限値の半分に相当しています。

エディブル(食用大麻):1包装当り10mg
大麻抽出物(経口):1単位(カプセル等)当りTHC10mg、1包装ごとにTHC1000mgまで
大麻抽出物(吸入):1包装ごとにTHC10mgまで
大麻外用剤(皮膚等):1包装ごとにTHC1000mgまで
注:10mg=0.01g 1000mg=1.0g

参考:カナダのリスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)の推奨事項
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=121280



論文タイトル
国際大麻ツールキット(iCannToolkit):大麻使用を測定するための最低基準に関する学際的な専門家のコンセンサス

背景:大麻使用を測定するための国際的に合意された最低限の方法がないため、大麻使用が心理社会的、神経認知的、臨床的、公衆衛生的に及ぼす影響に関する多分野のエビデンスを統合することができない。

方法:大麻の国際的な専門家25名が集まり、多様な環境下で世界的に大麻使用を測定するための最低基準の学際的な枠組みについて議論した。

結果:専門家によるコンセンサスでは、3つの層からなる階層的な枠組みに合意した。各層(普遍的な測定法、設定に応じた測定法、生物学的測定法)は、それぞれ異なる研究の優先順位と最低基準、コスト、実施のしやすさを反映していた。妥当で正確な評価法を開発するためには、さらなる研究が必要である。

結論:提案された枠組みを研究、公衆衛生、臨床実践、医療の場で一貫して使用することで、大麻消費、関連する有害性、およびその軽減のためのアプローチに関する国際的な証拠の調和が促進されるであろう。

原文
Lorenzetti, V, Hindocha, C, Petrilli, K, Griffiths, P, Brown, J, Castillo-Carniglia, A, et al. The International Cannabis Toolkit (iCannToolkit): a multidisciplinary expert consensus on minimum standards for measuring cannabis use. Addiction. 2021; 1? 8.
https://doi.org/10.1111/add.15702


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ダウンロード: LinkIcon 国際大麻ツールキット(iCannToolkit)(2021)

「薬物問題への健康と社会的対応:欧州ガイド2021」の大麻版の仮訳を公開


2022/01/21


EMCDDA(欧州薬物・薬物依存監視センター)では、薬物問題に対応するために、「薬物問題への健康と社会的対応:欧州ガイド2021」を製作し、そのミニガイドに相当する「大麻:健康と社会的対応」を取りまとめました。


大麻:健康と社会的対応

はじめに

このミニガイドは、大規模なセットの一つであり、これらを合わせて「薬物問題への健康と社会的対応:欧州ガイド2021」が構成されています。このミニガイドは、大麻関連の問題に対する健康と社会的対応を計画・実施する際に考慮すべき最も重要な側面の概要を示し、対応策の利用可能性と有効性をレビューしています。また、政策や実践への影響についても考察しています。最終更新日:2021年10月19日

主要課題

大麻は、欧州をはじめ世界で最も広く使用されている違法薬物です。ハーブ状の大麻や大麻樹脂だけでなく、より新しい形態の大麻も増えており、違法市場で観察されることがあります。さらに、テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量は低いものの、大麻植物から抽出したエキスを含む様々な市販品が多くの国で登場しています。

また、いくつかの国では、治療目的のために特定の状況下で大麻製品を入手することを許可しており、一部の国では娯楽目的の消費を許容することを提案しているため、規制の対応はより多様で複雑になっています。このように、健康面や社会面での関心は依然として違法な大麻の消費に集中していますが、定義や対応の両面から、この分野はより複雑になってきています。

大麻の使用は、身体的・精神的な健康、社会的・経済的な問題を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。このような問題は、若いうちに使用を開始し、定期的かつ長期的な使用に発展した場合に発生しやすくなります。したがって、大麻使用とそれに関連する問題に対処する健康と社会的対応の主な目的は以下の通りです。

?思春期(10〜19歳)から若年成人期(20〜29歳)までの間、使用を防ぐ、または発症を遅らせることができます。
?大麻の使用が、時々の使用から常用へとエスカレートするのを防ぎます。
?有害な使用方法の削減、および
?大麻の使用が問題となっている人に、治療を含む介入を行います。

対応の選択肢

?社会的能力や拒否スキル、健康的な意思決定や対処法を身につけ、薬物使用に関する規範的な誤解を正すような多要素を含む学校での介入、家族への介入、構造化されたコンピューターを使った介入などの予防プログラム。
?認知行動療法、動機付け面接、随伴性管理(不測の事態の管理)などの治療介入;ウェブやコンピューターを利用した介入もある。若年層の患者には多次元的家族療法も選択肢の一つです。
?例えば、大麻を吸うこと、特にタバコと一緒に吸うことに関連する害に対処するなど、ハームリダクション(健康・社会的被害の軽減)のための介入を行います。

欧州の情勢

?普遍的な予防が広く行われているが、採用されているアプローチは、この分野の科学的根拠に基づくものを必ずしも反映していません。適切に設計された学校ベースの予防プログラムは、大麻の使用を減らすことが示されています。欧州のいくつかの国では、選択的な予防アプローチが用いられており、最も一般的なのは若年犯罪者や養護施設の青少年を対象としたものですが、その効果についてはほとんど知られていません。推奨されている予防的アプローチと簡単な介入は、広く使われていないようです。

?EU加盟国の約半数では、大麻に特化した治療が行われていると報告されていますが、多くの国では、大麻の問題を抱える人々に対する治療は、一般的な薬物治療プログラムの中で行われています。治療は一般的にコミュニティや外来で行われ、最近ではオンラインで行われることも増えています。しかし、大麻関連の問題に対して提供されている治療の範囲と性質をEUレベルでまとめることは困難です。

薬物問題に対する健康と社会的対応を開発するための行動枠組み

薬物問題への対応を発展させるための3つの大まかな段階

薬物問題への健康と社会的対応とは、死亡、感染症、依存症、精神衛生上の問題、社会的排除など、違法薬物使用による健康と社会的な悪影響に対処するために行われる行動や介入のことです。このような対応を開発して実施するには、EU、国、地域、個人のレベルにかかわらず、3つの基本的なステップがあります。

?取り組むべき薬物問題の性質を明らかにすること。
?これらの問題に取り組むために、効果的と思われる介入策を選択すること。
?これらの介入の影響を実施、監視、評価すること。

「薬物問題に対する健康と社会的対応を開発・実施するための行動枠組み」では、各段階で考慮しなければならない最も重要な要素が詳細に示されています。

詳細は以下のPDFファイルをダウンロードして本文を参照してください。

原文はこちら
Health and social responses to drug problems: a European guide 2021
https://www.emcdda.europa.eu/publications/health-and-social-responses-a-european-guide_en


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


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ダウンロード: LinkIcon 欧州ガイド 大麻:健康と社会的対応

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ダウンロード: LinkIcon 欧州ガイド 薬物問題に対する健康と社会的対応を開発・実施するための行動枠組み

欧州の合成カンナビノイド・レビュー(2021年9月)


2022/01/11


合成カンナビノイドついてお問い合わせがあったので、欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)が発行する合成カンナビノイドの最新資料を仮訳しました。米国のヘンプ由来CBDの合法化に伴い、CBD誘導体となる半合成カンナビノイドが注目されています。

用語の整理を含めて御参照下さい。


◆植物性カンナビノド Phyto‐cannabinoids
大麻草(Cannabis sativa L.)に特異的に含まれる生理活性物質の総称。Δ9-THC, CBD, THCA, CBDA, CBG, CBN, Δ8-THC, CBGA, CBC, THCV, CBDVなど100種類以上ある。
化学的には、メロテルペノイド(アルキル側鎖を持つ炭素数 21 および 22 のテルペノフェノール化合物)である。大麻草からの抽出・単離、半合成、全合成、微生物工学(大腸菌、藻類、酵母など)の様々な方法でつくられる。

◆半合成カンナビノイド Semi-synthetic cannabinoids
THCやCBDの化学構造を維持し、薬理学的特性を改善するために小さな化学修飾によって生成されたもの。HHC、THC-Oアセテート、CBDD、2-HEC等の様々な誘導体が開発されている。カンナビメティック効果を目的としており、薬剤スクリーニングのカンナビノイド・テトラド試験などによる安全性及び有効性の評価が求められている。

◆合成カンナビノイド Synthetic cannabinoids
石油原料などから化学合成によって得られた、カンナビノイド受容体(CB1またはCB2)を選択的に活性化できる化合物。Δ9-THCよりCB1受容体の結合親和性が高いものを求めて開発されてきた。医薬品のセサメット(合成THC誘導体)、HUシリーズ、CPシリーズ、JWH化合物、AM化合物など。試薬として開発されたものが、喫煙用のミックス品(K2,スパイス等)として市販され、健康被害報告があったため、その一部が指定薬物(危険ドラッグ)となった。

半合成カンナビノイドの例
HHC, 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31824305/

●カンナビメティック効果 Cannabimimetic effect
大麻模倣効果と呼ばれ、狭義にはΔ9-THC模倣効果であり、広義にはカンナビノイド、テルペノイド、フラボノイド等の天然の大麻草に含まれる化合物の薬理学的及び毒性学的な効果を示す。

●カンナビノイド・テトラド試験 Cannabinoid tetrad test
薬剤スクリーニングに用いられる試験の一種で、齧歯動物にカンナビノイド受容体を介した運動低下、カタレプシー、低体温、痛覚抑制の四組(テトラド)の効果を評価する。



欧州の合成カンナビノイド・レビュー(2021年9月)

目次
2 方法と情報源
  エグゼクティブサマリー
5 背景
  合成カンナビノイドの開発の歴史
  合成カンナビノイドの合法的な使用法
6 国際的な統制手段
  欧州における合成カンナビノイド
  新規精神活性物質としての登場
  市場の有無と規模
9 合成カンナビノイドへの対応
10 代替
  物理的、化学的、薬理学的説明
  物理的および化学的説明
12 物理的および剤形
14 薬理学
21 健康および社会的リスク
  急性毒性
29 慢性毒性
31 心理的・行動的な影響
  依存性および乱用の可能性
32 機械の運転・操作能力への影響
   社会的リスク
32 使用範囲とパターン、入手可能性と普及の可能性
  使用率
33 使用のパターン
34 入手可能性、供給、組織的犯罪の関与
36 結論
37 参考文献
51 付録1. 選択された合成カンナビノイドのプロファイル
61 付録 2. EMCDDAが新規精神活性物質に関するEU早期警告システムを通じて監視し ている合成カンナビノド (2021年4月16日現在)


原文はこちら
Synthetic cannabinoids in Europe ? a review
https://www.emcdda.europa.eu/publications/rapid-communications/synthetic-cannabinoids-europe-review_en

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


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ダウンロード: LinkIcon 欧州の合成カンナビノイド・レビュー(2021年9月)

希少カンナビノイド:生合成、分子薬理学、治療応用の可能性


2022/01/09


〇主要なTHCとCBD以外のものは希少カンナビノイド

大麻草に特異的に含まれる120種類以上の生理活性物質の総称はカンナビノイドと呼ばれています。その中で、THCとCBDは、最もよく知られており、研究が進んでいる主要なカンナビノイドです。

それ以外のCBN,CBC,CBG,CBDA,CBGA,THCA, CBDV,THCVなどは「希少カンナビノイド」と呼ばれています。ここでは、米国のサウスカロライナ州立大学など研究者がまとめた希少カンナビノイドの現時点(21年12月)でわかっているエビデンスを仮訳紹介しています。


〇希少カンナビノイドの要旨

大麻草(Cannabis sativa L.)の医療利用は、数千年前の古代中国やエジプトにまで遡ることができる。近年、大麻草は慢性的な痛みや吐き気を抑える効果が期待されているが、スケジュール1の規制物質に分類されているため、大麻草の科学的研究は制限されている。

大麻草の薬理作用を理解する上で大きなブレークスルーとなったのは、植物性カンナビノイドであるトランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)とカンナビジオール(CBD)が分離され、その特徴が明らかになったことである。

その後、1990年代にカンナビノイドのCB1およびCB2受容体のクローニングが行われ、エンドカンナビノイド・システム(ECS)が発見された。大麻草では、主要な植物性カンナビノイドであるΔ9-THCとCBDに加えて、希少カンナビノイドやマイナーカンナビノイドと呼ばれる120種類以上のカンナビノイドが生産されている。

これらのカンナビノイドは、植物内で少量しか生産されず、Δ9-THCおよびCBDとともに前駆体カンナビノイドであるカンナビゲロール酸(CBGA)から生成される。

希少カンナビノイドの薬理作用に関する現在の知識は不完全であるが、研究によると、CB1およびCB2受容体、一過性受容体電位(TRP)チャネル、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)、セロトニン5-HT1a受容体などの複数の標的に対してアゴニスト(作動薬)およびアンタゴニスト(拮抗薬)として作用することが明らかになっている。

その結果、複数の細胞シグナル伝達経路が活性化され、それらが相乗的に作用すると考えられることから、治療効果のメカニズムが解明されている。これらのカンナビノイドは、神経因性疼痛、神経変性疾患、てんかん、がん、皮膚疾患などの治療に有効であることが、初期の臨床報告で示唆されている。本レビューでは、希少なカンナビノイドの分子薬理学に焦点を当て、これらの化合物の重要な治療用途を紹介する。

〇エビデンスを取り上げている希少カンナビノイド

目次
・はじめに
・植物性カンナビノイドの生合成
・エンドカンナビノイドシステム
 カンナビノイドのCB1受容体およびCB2受容体
 内因性カンナビノイド
・希少カンナビノイドの薬理学と治療学
・中性カンナビノイド
 CBN(カンナビノール)
 CBC(カンナビクロメン)
 CBG(カンナビゲロール)
・カンナビノイド酸
 CBDA(カンナビジオール酸)
 CBGA(カンナビゲロール酸)
 THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)
・バリン系カンナビノイド
 CBDV(カンナビジバリン)
 THCV(テトラヒドロカンナビジバリン)

注:マイナーカンナビノイドという言い方もありますが、ここでは希少カンナビノイドで統一しています。

希少カンナビノイド:生合成、分子薬理学、治療応用の可能性
原文
Kenneth B. Walsh,Amanda E. McKinney, Andrea E. Holmes. Minor Cannabinoids: Biosynthesis, Molecular Pharmacology and Potential Therapeutic Uses.Frontiers in Pharmacology, 2021; 12: 777804.
https://dx.doi.org/10.3389%2Ffphar.2021.777804

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。




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ダウンロード: LinkIcon 希少カンナビノイド:生合成、分子薬理学、治療応用の可能性(2021)

カナダのリスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)の推奨事項を更新


2021/12/23


2018年10月に嗜好用大麻を合法化したカナダでは、エビデンス(科学的根拠)に基づいたガイドラインを「リスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)」としてまとめています。このダイジェスト版であるカナダ保健省のQ&Aの仮訳は、本学会ですでに公表しています(※1)。

「リスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)」は、健康行動変容の概念と、公衆衛生の他の分野(例えば、低リスク飲酒ガイドライン、性の健康ガイドラン、栄養ガイドラン)で実施されているものと同様の位置づけです。

今回は、科学的根拠となった2011年及び2017年のLRCUG論文が、最新のエビデンスを評価して2021年8月にアップデートしたので、その仮訳を行いました。「リスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)」は、12個の推奨事項と3つの注意事項から構成されています(※2)。


●論文の概要

背景 大麻の使用は、特に若年層において一般的であり、様々な健康被害のリスクと関連している。最近では、公衆衛生上の目的から合法規制に移行している地域もある。大麻に関連する健康被害の修正可能なリスク因子を低減するために、エビデンスに基づく「リスク低減のための大麻使用ガイドライン」(Lower Risk Cannabis Use Guidelines:LRCUG)と推奨事項が以前に作成されたが、その後、関連するエビデンスが大きく進展した。我々は、新しい科学的根拠を検討し、このエビデンスに基づいて、推奨事項を含む包括的な最新のLRCUGを作成することを目的とした。

方法 使用者個人が修正可能な大麻関連の健康被害の主なリスク因子に関する文献(2016年以降)を対象に検索した。話題性のある分野は、LRCUGの過去のコンテンツから情報を得て、現在のエビデンスに基づいて展開した。検索では、システマティックレビューを優先し、主要な個別研究を補足した。レビュー結果は、エビデンスに基づいて評価され、トピックごとに整理され、叙述的に要約された。推奨事項は、科学的な専門家の合意を得るための反復的なプロセスを通じて作成された。

結果 大麻使用に関連する健康被害の修正可能なリスク因子が、様々なエビデンスの質で特定された。12の実質的な推奨事項と3つの予防的な声明が作成された。一般的に、現在のエビデンスでは、大麻の使用開始を青年期以降に遅らせ、高濃度(THC)の大麻製品の使用や高頻度の使用を避け、喫煙経路での摂取を控えれば、有害な健康被害のリスクを大幅に低減できることが示唆されている。若者は大麻に関連した害に対して特に脆弱であるが、他のサブグループ(例えば、妊娠中の女性、運転者、高齢者、合併症を持つ人)は、使用に関連したリスクに特に注意を払うことが推奨される。合法規制された大麻製品を可能な限り使用すべきである。

結論 大麻の使用は、主にリスクの高い使用をしているサブグループにおいて、健康に悪影響を及ぼす可能性がある。特定されたリスク因子を減らすことは、使用による健康被害を減らすのに役立つ。LRCUGは、大麻使用に関する包括的な公衆衛生アプローチの中で、ターゲットを絞った介入要素を提供するものである。LRCUGは、効果的な対象者の調整と普及、新しいエビデンスの入手に伴う定期的な更新が必要であり、その影響を評価する必要がある。

●カナダのリスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)

一般的な注意事項A:
大麻使用者(PWUC)は、大麻の使用の普遍的に安全なレベルがないことを知る必要があります。

推奨事項1:大麻使用の開始は、害に対する発達関連の脆弱性を減らすために、青年期後期または青年期完了後まで遅らせるべきです。
注:青年期(11〜20歳)、初期(11〜14歳)、中期(14〜17歳)、後期(17〜20歳)

推奨事項2:大麻使用者(PWUC)は「低濃度」の大麻製品、つまり、理想的には総THC含有量が低い、または高CBD/THC比率の大麻製品を使用すべきです(注3)。

推奨事項3:すべての主要な利用可能な摂取経路は、害のリスクを伴います。

推奨事項4:吸入による使用の場合、大麻使用者(PWUC)は、「深い吸気」、長時間の息止め、または同様の吸気方法を避けるべきです。

推奨事項5:大麻使用者(PWUC)は、頻繁(例えば、毎日またはほぼ毎日)または集中的な(例えば、酒類ような一気飲み)大麻の使用を控え、代わりに時々使用、またはたまに使用に自分自身を制限する必要があります。

推奨事項6:状況が許す限り、大麻使用者(PWUC)は、品質管理された合法的な大麻製品や使用器具を使用してください。

推奨事項7: 認知機能の低下を経験した大麻使用者(PWUC)は、大麻の使用を一時的に中止するか、強度(例:頻度や濃度)を大幅に減らすことを検討すべきです。

推奨事項8:大麻使用者(PWUC)は、急性障害と傷害や死亡を含む事故関与のリスクが高いため、大麻の影響下にある間、自動車や機械を運転しないようにする必要があります。

推奨事項9: 妊娠中や授乳中の女性が大麻を使用しないようにすることで、生殖や子孫への健康被害のリスクを軽減することができます

推奨事項10:大麻使用者(PWUC)は、他の精神活性物質と大麻を併用する際に一般的な注意をすべきです。

推奨事項11:特定グループの人々は、生物学的素因や併存疾患のために、大麻使用に関連する健康問題のリスクが高い。これらの人々は、必要に応じて(場合によっては医師の助言を得て)大麻の使用を避けるか、調整する必要があります。

推奨事項12:大麻使用による健康への悪影響のリスク因子の組み合わせは、深刻な害を経験する可能性をさらに高めるため、回避すべきです。

一般的な注意事項B:頻繁な大麻の使用、特に長期にわたる集中的な使用は、「大麻使用障害」(CUD)または大麻依存につながる可能性があり、治療が必要になる場合があります。

一般的な注意事項C:大麻使用者(PWUC)は他者に害を及ぼす可能性のある大麻使用を避けるために、社会的配慮と責任を果たすべきです。


※1 カナダのリスク低減のための大麻使用ガイドライン及びよくある質問(FAQ)の和訳を公表
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=99627

※2 Lower-Risk Cannabis Use Guidelines (LRCUG) for reducing health harms from non-medical cannabis use: A comprehensive evidence and recommendations update(2021)
https://doi.org/10.1016/j.drugpo.2021.103381  

注3 THCの低濃度と高濃度の定義
この論文では、事例として低用量10r、高用量25〜50r、低濃度10〜15%、高濃度20%または70〜90%含有のものを意味しています。低用量は、カナダの合法化している嗜好用大麻のカテゴリーである食用大麻(エディブル)基準などの上限値に相当しています。

エディブル(食用大麻):1包装当り10mg
大麻抽出物(経口):1単位(カプセル等)当りTHC10mg、1包装ごとにTHC1000mgまで
大麻抽出物(吸入):1包装ごとにTHC10mgまで
大麻外用剤(皮膚等):1包装ごとにTHC1000mgまで
注:10mg=0.01g 1000mg=1.0g


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。



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ダウンロード: LinkIcon 2021年リスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)

日本臨床カンナビノイド学会は厚生労働副大臣に大麻由来医薬品の早期薬事承認・保険収載を要望しました


2021/12/11


日本臨床カンナビノイド学会の太組一朗理事長(聖マリアンナ医科大学脳神経外科学准教授)、新垣実前理事長らは令和3年12月9日佐藤英道厚生労働副大臣に対して、カンナビノイド医薬品の活用を含むてんかん医療の充実を求める保険改正要望書を手交しました。

内容としては現在、医療アクセスが十分ではない知的障がい者への診療加算の充実、及び聖マリアンナ医科大学などのてんかん拠点病院を中心とし、今後の実施が計画されている大麻由来医薬品(エピディオレックス英国GW製薬)の臨床試験終了後の速やかな薬事承認・保険収載を要望するものです。

佐藤英道厚生労働副大臣からは、大麻由来医薬品については製薬企業への開発要請を含め、前向きに取り組んでいく旨の答申をいただきました。

本要望は2021年10月の役員交代により、新たに理事長に就任した太組一朗先生が、主任研究者として行った厚生労働科学研究(てんかんにおけるカンナビノイド(大麻由来成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握及び今後の方策に向けた研究・注1)の研究成果が反映されたものであり、当学会が保険改正要望書を提出するのは、今回が初めてのこととなります。

注1
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/145770

当日の様子の写真付きPDFファイルは、下記をクリックしていただければ表示されます。

写真付きPDFファイルの短縮URL 
 

カンナビノイド及び大麻に関連する研究者の学術論文投稿の支援額を5万円から上限20万円に増額


2021/12/10


本学会は、今月12月1日からカンナビノイド成分及び大麻植物の医療利用に関する日本在住の研究者への研究支援を従来の上限5万円から20万円に拡充しました。

カンナビノイドとは、大麻植物に含まれる100種類以上の特異成分であり、1990年代に内因性カンナビノイド・システムの発見によって神経及び免疫等の体内調節に重要な役割があることが解明されつつあり、この分野での研究が急速に進展しています。例えば、米国立医学図書館(National Library of Medicine)が作成している医学文献データベース「PubMed(パブメド)」では、“カンナビノイド”で検索すると、2008年以降、毎年1000件以上の学術論文が出版されていることがわかります。

内因性カンナビノイドに関する基礎研究は、大麻由来のカンナビノイドの取り扱うための大麻研究者免許が不要なため、比較的自由に研究ができます。例えば、日本学術振興会が実施している競争的研究資金「科研費」では、“カンナビノイド”で検索すると、2010年以降、302件の研究課題が採択されており、味覚、ストレス、神経科学、疼痛、薬物依存などの領域で基礎研究に取り組まれていることがわかります。

 一方、我が国では、1948年の大麻取締法による規制のため、海外で承認された大麻由来の医薬品輸入が禁止されており、ごく一部の薬学部を除いて、該当分野の研究があまり進展していませんでした。しかし、2021年1月から6月に実施された厚生労働省による「大麻等の薬物対策のあり方検討会」において、大麻由来の医薬品の合法化の方針(注1)が示され、2021年10月には厚生労働省研究班による大麻由来の医薬品の治験に向けた報告書が取りまとめられています(注2)。

 さらに、大麻草に含まれるCBD(カンナビジオール)は、我が国において、2020年4月から厚生労働省関東厚生局のホームページで輸入手続きが明文化(注3)され、食品・化粧品・電子タバコなどの製品として流通しており、新しい機能性成分としていくつかの大学で研究が進められています。

本学会では、このような状況を鑑みて、日本在住の研究者の能力向上及び人材育成のために、一定の条件を満たす医学・薬学系の研究者(大学院生及び学部生を含む)であれば、研究活動の一部を支援強化することを決定しました。今年度からは、従来からの国際会議参加支援に加えて、学術論文投稿支援額がこれまでの上限5万円を20万円に拡充しました。研究支援のメニューは、次の3通りになります。

募集期間:2021年12月1日から2022年6月30日まで
コース : (1)国際会議発表者、(2)35歳以下の若手参加者、(3)論文投稿者
支援額 : (1)上限20万円、(2)上限10万円、(3)上限20万円
対象費用: (1)(2)渡航費、宿泊費、会議参加費、(3)英語論文の翻訳/校正/投稿料

詳しい応募条件は、日本臨床カンナビノイド学会のサイトを参照してください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=27059

本支援がユニークなのは、(1)は自ら所属する専門学会の国際会議を認めている点であり、(2)の若手参加者には、国際会議発表を必須とせず、参加するだけでもよいというメニューであること、(3)は他の科研費などの支援金との重複や補完を認めていることです。研究者にとって非常に使い勝手がよい支援制度となっています。本制度に関心のある方、日本のカンナビノイドおよび大麻関連研究の進展に貢献したい方からのご応募をお待ちしています。

注1 大麻等の薬物対策のあり方検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html
 
注2 難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究(研究成果)
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=118353

注3 厚生労働省 CBD(カンナビジオール)を含有する製品について
https://www.ncd.mhlw.go.jp/cbd.html

CBD/カンナビノイド製品の米国ヘンプ・オーソリティ認証基準 3.0版を仮訳


2021/12/09


最近、米国では「米国ヘンプ・オーソリティ」のラベルやWEBサイトでの提示が増えています。本学会にお問い合わせがありましたので、その基準の原文を調べて、仮訳しましたのでご覧下さい。

米国ヘンプ・オーソリティ認証プログラムは、高い基準、ベストプラクティス、自主規制を提供し、消費者や小売業者にヘンプやCBD製品への信頼を与えるための業界の取り組みです。2018年5月にバージョン1.0がリリースされ、本件は、バージョン3.0(21年1月発行)を日本語仮訳したものとなります。

企業がこの認証を受けているということは、次のことを意味しています。

・その企業は、米国ヘンプ・オーソリティとライセンス契約を結んでいます。
・その企業は、最新の米国ヘンプ・オーソリティ・ガイドラインに準拠していることを確認するために、毎年行われる第三者監査に合格しています。
・この認証を受けることができる企業には、消費者ブランドオーナー、ヘンプ栽培者、ヘンプ加工・製造者の3つのカテゴリーがあります。農家から抽出業者、オンライン販売のCBDブランドまでが対象となります。

米国ヘンプ・オーソリティ認証のラベルをもつ企業の製品には、次のような属性をもちます。

複数の汚染物質について試験所で検査されている
合成カンナビノイドが含まれていない
米国連邦政府のTHC規制値を下回っている
「ブロードスペクトラム」または「フルスペクトラム」という表現が検証されている
ラベルと中身のカンナビノイド含有量が一致している
ロット番号やバッチ番号は、元のヘンプの原料まで完全にさかのぼることができる

CBDユーザーにとっては、安全で高品質な製品を手に入れるための調査の負担が軽減されます。米国ヘンプ・オーソリティ認証は、合法性と品質性を担保できるツールとして、米国における著名な認証制度の1つです。

参考ホームページ 
https://ushempauthority.org/


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

下記ダウンロードファイルの短縮URL

難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究(研究成果)


2021/10/03


解説:本学会は、6年前に設立して以来、初めて厚生労働省研究班の活動に参画することができました。本学会からは、太組一朗理事、正高佑志理事、アドバイザーに新垣実理事長が参画しました。厚生労働科学研究成果データベースに報告書が公表されましたのでお知らせします。本研究の成果を踏まえて、カンナビノイド医薬品を求める患者へ届けられるように取り組んでいきます。

研究目的
これまで国内で使用可能な抗てんかん薬・国内で施術可能な外科治療のみでは十分な発作抑制に至らず、依然として患者のQOLを確保できない難治てんかんに対して、さらなる標準的治療法開発が望まれる。米国FDA・欧州医薬品庁では難治てんかん治療において大麻由来医薬品を薬事承認している。

大麻由来医薬品は、大麻取締法第4条により医師が施用することも患者が施用を受けることもできないところ、治験実施可能であると厚生労働省から示されている。難治てんかんに対して、国内で提供できうる標準治療をもってもなお治療が難しい患者が大麻由来医薬品により恩恵をうけることがあるなら、正当な手続きを経て、大麻由来医薬品を患者に届けることが必要である。海外とのドラッグラグをなくし、難治てんかんに対する医療を発展させるためには、大麻由来医薬品の薬事承認を見据えた治験実施が必要である。

本研究は、諸外国で大麻由来製剤の適応となっている難治性てんかん患者に対する大麻抽出製剤治験するにおける課題抽出及び整理を行い、適応疾患の選定、治験薬候補の選出、治験実施施設要件、治験薬の管理・投与体制、治験プロトコール等の例示、他疾患における治験導入可能性の検証、患者ニーズ把握、海外情勢調査、調査を通じた啓発、等を行い治験基盤を醸成することを目的とする。医師はこれまで経験のない、大麻免許取得による治験に参画する。

研究方法
@てんかん診療拠点機関における治験体制構築の検証A治験対象疾患選択B治験候補薬剤評価C治験プロトコール策定・検証D患者ニーズ把握E海外調査と普及啓発等。調査は、文献調査・アンケート調査・設定課題に対する研究、等により検証した。

結果と考察
治験対象疾患は全年齢層における、ドラべ症候群・レノックス・ガストー症候群・結節性硬化症である。治験実施施設にはてんかん診療連携拠点機関(以下、拠点機関)を対象として選定する。大麻免許と拠点機関指定がともに都道府県知事により付与されることから整合性がある。米国FDA・欧州EMAの承認状況から考えても、治験候補薬剤はエピディオレックスが適当である。

保管体制および患者供給体制の検討では、治験薬紛失が発生する可能性のある工程を以下の5過程に分けた。すなわち@病院での治験薬の管理A病院で治験薬ボトルを被験者(家族)に手渡した後、帰宅するまで移動する際の管理B被験者の自宅での治験薬の管理C使用済み治験薬ボトルの返却のため被験者の自宅から病院まで移動する際の管理D病院での使用済み治験薬ボトルの管理。それぞれのリスク回避方法を示した。

依存症対策の観点からエピディオレックスは、適切な管理を行うことで安全かつ有効に治験を行うことができる。レセプトデータベースJMDCを用いた記述疫学研究により、てんかん治療領域においては、新薬が積極的に使用されていること、拠点機関のように施設規模が大きいほどガイドライン遵守率が高い。全ての拠点機関において対象疾患患者が治療を受けているが、治験担当医師に対しても正確な情報共有することが重要である。拠点施設における薬剤部も治験実施可能性が高いと考えていると判明した。当該機関薬剤部の治験協力体制は概ね整っている。

難病疼痛領域で大麻由来医薬品の適応検討を行う場合において、難治性静脈奇形患者(小学校入学前後年齢層を含む)が選定されうる。当該難病研究班との連携が求められる。精神医学の観点から、大麻由来医薬品の精神疾患に対する適応検討する余地がある。
治験対象患者投薬管理は家族・介護者が行なっている。教育対象者・啓発対象者となる。治験対象者の好事例調査を通じて、難治てんかん患者およびその家族には治験対象疾患として想定される疾患以外にも、大麻由来医薬品が必要となる難治てんかんが多数存在する。現時点で治験に参加したいと思わない考える家族は16%に過ぎない。

諸外国で流通する医療大麻を法区分に基づき製品を分類し、区分ごとの流通現状を示した。『大麻由来医薬品』を一般的にどのような名称で呼称すればよいか、解決されるべき余地がある。『大麻』との呼称はやや刺激的であるが、国民に対する正確な情報発信が求められるからである。

結論
難治性てんかんにおける大麻由来医薬品の治験は、国内で安全に実施しうることが示された。現在研究班による課題把握に並行して、大麻由来医薬品(エピディオレックス)製造販売業者であるGW製薬(Jazz製薬)は日本支社を設立した。万全の体制により、企業主導治験が実施される見込みである。治験により薬剤の有用性が示され薬事承認を得られたならば、国は法改正を行い、薬価収載へと手続きが進むことが期待される。当該薬品を必要とする患者に対して、1日も早くお薬をお届けすることが広く望まれている。


研究代表者(所属機関)
太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 医学部脳神経外科学、てんかんセンター)


I.総括研究報告
研究総括 ?---------------------------------------------------------- 1
太組 一朗

II.分担研究報告
1. 治験プロトコールの検証に向けて:日本での現状の抗てんかん薬での治験実態に
関する記述疫学研究 ------------------------------------------------- 16
川上 浩司
2. EpidiolexR
(cannabidiol)の薬理学的特性と米国における使用の現状 -------- 20
松本 俊彦
3. 治験候補薬剤評価 ------------------------------------------------- 34
山本 仁
4. 難治性脈管奇形(静脈奇形)の疼痛発生率解析について ---------------- 37
秋田 定伯
5. 精神障害に対するCannabidiol (CBD) ---------------------------------- 42
岸 泰宏
6. カンナビノイド製剤の治験実施における要件について -------------------- 47
山野 嘉久
7. 治験実施体制構築に関する基盤研究−治験担当病院の薬剤師を対象とした大麻由来
製剤治験に対する意識調査− ----------------------------------------- 52
松本 直樹
8. てんかん診療拠点機関におけるカンナビノイド由来医薬品の治験実施に向けた調査
---------------------------------------------- 57
清水 直樹
9. 難治性てんかんにおけるカンナビノイド由来医薬品に関する小児神経・てんかん専門施設へのアンケート調査 ------------------------------------------------ 62
浜野 晋一郎
10. カンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた難治性てんかん患者調査------------------------------------------------- 66
饒波 正博
11. 1) 諸外国における医療大麻の分類と法規制の枠組みに関する研究
----------- 72
2) 難治てんかんに対する大麻抽出医薬品治験における潜在的対象者の検討
(好事例調査) ------------------------------------------------------ 90
正高 佑志
12. 治験プロトコール要素検討 ---------------------------------------- 94
太組 一朗

III. 研究成果の刊行に関する一覧表 -------------------------------------- 98

研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度 令和2(2020)年度
研究終了年度 令和2(2020)年度
研究費 5,204,000円

各報告書のPDFファイルのダウンロードはこちらからお願いします。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/145770

若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に関する研究


2021/10/03


解説:日本の薬物教育の課題は、徐淑子「諸外国における大麻合法化の動きと日本の薬物乱用防止教育 :ヘルスコミュニケーションにおける「信頼」の問題」日本ヘルスコミュニケーション学会雑誌第 10 巻第 1 号 (2019)にまとまっている。
http://healthcommunication.jp/journal/vol010no01/vol10_p49-p54.pdf

この論文で指摘があるコミュニケーションの信頼性について、少しでも埋められるよう関係者は知恵を絞る必要性に迫られている。



研究目的

日本の薬物乱用状況は欧米等と比較すれば非常に低い割合となっている。しかし、近年、薬物をとりまく状況は、カナダで大麻の合法的な嗜好目的使用が可能になったり、インターネットにおいて薬物に関する様々な情報を容易に入手できるようになったり、大きく変化してきている。

現在、薬物乱用防止教育が学校において広く行われるなど、国内の様々な機関が連携して薬物乱用防止に努めているが、日本の若者で大麻の乱用が増加しているおそれがあり、また、このような若者が今後、大麻を継続的に乱用したり、大麻から他の薬物の乱用につながったりすることにより、将来、日本で薬物の乱用がさらに進むことが危惧されている。また、大麻草に由来する成分を含む医薬品が欧米で承認されるなど、大麻草由来の成分であっても医療で活用されているものがあり、日本でも、このようなエビデンスを踏まえた大麻由来成分の規制等が望まれている。

このような状況に対応するため、これまで、先行研究「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」では、大麻に関する情報収集や、地域における効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、その成果は小冊子としてまとめられ活用されている。しかしながら、現在においても、以下のような課題がある。

(1)大麻由来成分の医療での有用性等を含め、大麻に関する様々な研究開発が継続的になされており、それを収集し、根拠に基づく施策の立案等に活用していく必要がある

(2)例えばカナダの大麻規制の変更は若者における大麻乱用の防止等が目的とされているが、規制変更後、実際にどのような社会的影響を与えているか等、外国の状況を継続的に情報収集する必要がある

(3)若者を対象とした、より効果的な予防啓発方法を検討し、実施する必要がある
これらに取り組み、日本の若者による大麻等の薬物の乱用を予防していくことを本研究の目的とする。

I.総括研究報告
若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に
関する研究 ------------------------------------------------------- 2
永沼 章(公益財団法人 麻薬・覚醒剤乱用防止センター)
U.分担研究報告
1.若年者を対象とした効果的な薬物乱用予防に係る広報戦略の策定
に関する研究 -------------------------------------------------- 9
河井孝仁(東海大学文化社会学部広報メディア学科)
2.地域社会において「薬物乱用予防」を主体的に担うことのできる
ヒューマンリソースの開発・教育及び relation 形成の試み ---------- 15
鈴木順子(北里大学・薬学部)
3.若年者違法薬物使用防止の啓蒙活動のためのエビデンス収集 ---------- 34
関野祐子(東京大学大学院薬学系研究科)
4.大麻の実態調査,海外の規制情報の把握 ----------------------------- 40
花尻(木倉)瑠理(国立医薬品食品衛生研究所)
5.大麻を巡る国際社会の動向:米国及びカナダの規制状況について ------- 60
舩田正彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
6.テトラヒドロカンナビノイドの摂取感覚効果に関する研究 ------------- 72
森 友久(星薬科大学)
7.麻曝露によるヒトならびに齧歯類の生殖・周産期および発達過程に
及ぼす影響に関する調査研究 --------------------------------------- 75
山本経之(長崎国際大学大学院薬学研究科)
III.研究成果の刊行に関する一覧表 ---------------------------------- 89

研究年度:令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関):永沼 章(東北大学)
研究分担者(所属機関)
鈴木 順子(北里大学薬学部)
関野 祐子(東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
山本 経之(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
河井 孝仁(東海大学 文化社会学部広報メディア学科)

研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究

研究開始年度 令和2(2020)年度
研究終了年度 令和4(2022)年度
研究費 12,900,000円

原文のPDFファイルのダウンロードはこちら
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/149555

CBD使用者へのアンケート調査のお願い(8月31日まで)


2021/08/16


昨今、本邦においても様々なCBD製品が流通するようになり、CBDの扱いに関しても行政や国会議員の間で議論が始まっています。しかしユーザーがどのような目的で製品を使用し、どのような効果を実感しているかについての学術調査は本邦では未だ行われた事がありません。

そこで今回、日本臨床カンナビノイド学会は、一般社団法人Green Zone Japanとの共同でCBD製品の使用者(および家族・保護者)を対象とした無記名オンライン調査を行う運びとなりました。

本調査にて収集された情報は、研究以外の目的に使用されることはありません。得られた結果は学術雑誌に投稿の予定です。以下のURLから回答が可能です。よろしければご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

アンケート調査はこちらから実施できます。
https://forms.gle/htzXLY1CUZvhJFsq5



調査名:日本におけるCBDサプリメントの使用実態に関する横断調査

調査期間:2021年8月16日?同年8月31日

実施者:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会、一般社団法人Green Zone Japan

対象:日本国内在住でCBD製品の使用経験がある者(THCの影響を完全に除外するため過去1年以内に大麻の使用経験がある者を除く)

研究責任者:正高佑志

大麻、CBDオイル、THC-獣医師が知っておくべきことは?


2021/07/20


本学会に、犬や猫などの獣医系の文献のお問い合わせがありましたので、欧州獣医師連盟の方がまとめた2021年現在の新しいレビュー論文である”Cannabis, Cannabidiol Oils and Tetrahydrocannabinol-What Do Veterinarians Need to Know?” を仮訳しました。

要旨:大麻由来の製品が入手しやすくなったことで,獣医師が目にする中毒症状の症例が増えている。また、飼い主が自分のペットにこれらの製品を使用することへの関心が高まっている。本レビューでは、欧州および北米の状況、大麻および大麻由来製品の種類、動物への使用の歴史的な事例、および大麻産業について見ていく。また,医薬品やサプリメントとして人や動物に使用するための既存の規制の枠組みについても検討した。最後に、医療用大麻が認可されている臨床適応症のレビュー、中毒症の議論、医療用大麻の使用に関する推奨と警告を紹介する。

内容
1.はじめに
2.定義
3.獣医学における大麻使用の歴史(馬、犬、猫)
4.欧州(EU)および北米の大麻産業について
5.欧州(EU)および北米における規制の枠組み
6.薬物動態/トキシコキネティクス
7.ヒトと動物の医療における使用
8.違法な製品表示や不明な成分への懸念
9.獣医学における大麻の毒性について
10.結論と推奨事項


原文
Cannabis, Cannabidiol Oils and Tetrahydrocannabinol-What Do Veterinarians Need to Know?. Animals 2021, 11(3), 892; 
https://doi.org/10.3390/ani11030892
 
本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


FileName:
ダウンロード:大麻、CBDオイル、THC-獣医師が知っておくべきことは?

英国のCBD製品におけるTHC濃度の健康指針の概要


2021/07/16


英国の業界団体であるメディカルカンナビスセンター(CMC)、カンナビノイド産業協会(ACI)、保守的な薬物政策改革グループ(CDPRG)が共同で21年3月に「CBD製品におけるTHC濃度の健康指針-安全性評価と規制に関する推奨事項:Health Guidance Levels for THC in CBD products-Safety Assessment & Regulatory Recommendations」をまとめました。

本報告書は全40頁ありますが、本学会では、
その概要を仮訳しましたのでWEBサイトにて公表します。

概要
カンナビス・サティバ(Cannabis Sativa)という植物から抽出されるカンナビジオール(CBD)は、ウェルネス製品として消費者の関心が急速に高まっており、英国では年間約3億ポンド(約460億円)の市場規模があり、推定で130万人のユーザーがいると言われています。CBD自体は規制物質ではありませんが、CBD製品には、様々なテトラヒドロカンナビノール(THC)化合物を含む、少なくとも12種類の規制対象となりうる化学物質が含まれています。

ヘンプ、CBD、その他のカンナビノイドを含む製品の規制状況については、一般市民や英国企業の間で混乱が生じていますが、英国内務省の解釈では、規制管理された化学物質が検出されない場合でも、すべてのCBD製品が規制管理されていると推定されます。この推定は、科学的な慣習とは相容れないものであり、判例法とも相容れない可能性があります。

欧州のほとんどの国では、消費者向けの製品に含まれる規制対象のカンナビノイドについて、最大濃度が合意されています。これは、消費者向け製品中のTHCが0.001mg/kg(EU(EFSA)およびドイツ)から0.007mg/kg(スイスおよびクロアチア)までの範囲であり、またCBD最終製品中のTHCの制限値(オランダの0.05%からガーンジー島の<3%までの範囲)も含まれています。

英国の規制の異常性に対処するために、本報告書では、入手可能なすべてのデータを独自に検討し、THCの安全基準を0.03%または1日あたり21μgとすることを推奨していますが、これは次のように導き出されます。

・英国食品基準庁(FSA)によるCBDを安全に摂取する濃度1日当たり70mgまで

・ 2015年の食品チェーンのコンタミネーションに関する欧州食品安全機関(EFSA)パネルでは、THCの安全な急性参照用量を83μg(約1μg/kg/日)と報告しており、これに異議を唱える証拠は見当たりません。

・CBD製品に含まれる微量の他の植物由来の化学物質の薬力学的または薬物動態学的な影響の可能性については、2の不確実係数を加えます。

・消費者の中には、推奨一日摂取量を超えて製品を使用する人もいます。そのため、使用量の変化を考慮して、さらに不確実係数を2とすることを提案します。

・これらの追加の不確実係数(2×2=4)を欧州食品安全機関(EFSA)の急性参照用量(ARfD)に適用すると、CBDの最大1日投与量の0.03%に相当する21μgが閾値となります。

提案されている0.03%という安全基準は、CBD食品や消費者製品に含まれる規制対象のカンナビノイドの総量を考慮したものであることを推奨します(つまり、Δ9THCよりも一般的ではなく強力ではない他のTHCとCBNを含む)。このレベルのTHCは、THC薬物検査で陽性となる可能性は極めて低いものです。

入手可能な文献のギャップレビューに基づき、我々は以下の研究を推奨します。

精製したカンナビノイド製品および混合したカンナビノイド製品を動物およびヒトに経口、吸入、舌下、外用で投与した場合の急性および慢性毒性試験、CBDユーザーの人口統計および消費パターンの研究、CBD製品のフェーズ4(製造販売後臨床試験)スタイルの調査研究などです。

本報告書の文献調査と安全性評価に基づき、以下の政策提言を行います。

1.カンナビノール誘導体(THCおよびCBN化合物)の含有量が21μg以下、または総濃度が0.03%以下のCBDベースの製品を規制対象から除外する。

2.最終製品のカンナビノール誘導体の含有量が0.03%以下である、承認された大麻草の乾燥葉および花を規制対象外とする。

3.英国食品基準庁(FSA)は、CBDベースの製品の製造者に対し、必須の警告ラベルを記載し、事前に承認された消費者向けアプリケーションを通じて、疑わしい有害事象を追跡・報告することを義務付ける規制を設けること。

4.英国内務省は、CBD製品の法的規制を明確にするため、最新の公的指針を緊急に発行すること。

5.英国内務省と英国食品基準庁(FSA)は、CBDをベースにした新規および非新規の食品の輸出入、製造、供給に関する規制上の管理と要件について、産業界に共同で指針を発行すること。

補足事項
 本報告書の政策提言には、規制対象となるカンナビノイドを0.03%〜0.2%含むCBD製品は、2001年薬物乱用防止法のスケジュール5に分類され、英国内で合法的に店頭販売されるべきであると推奨しています。これは、世界保健機関(WHO)が行った、THCが0.2%以下のCBD製品を規制管理対象から外すという勧告は、乱用の可能性がないことを根拠にしています。


●欧州におけるCBD製品のTHC制限値

英国領ジャージー島、ガーンジー島 <3%
スイス              <1%
オーストリア、ルクセンブルク、チョコ共和国 <0.3%
ポーランド、ギリシャ、スペイン、ベルギー <0.2%
ルーマニア、ドイツ、デンマーク <0.2%
オランダ  <0.05%
フランス、スウェーデン、ノルウェー 制限値がない
英国、スロバキア  制限値がない
ブルガリア、イタリア 不明     

本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

原文
Health Guidance Levels for THC in CBD products-Safety Assessment & Regulatory Recommendations
LinkIcon https://theaci.co.uk/wp-content/uploads/2021/03/Joint-report-CMC-ACI-CPDRG-Health-Guidance-Levels-for-THC-in-CBD-products.pdf

禁止主義下での大麻使用 - 動機、文脈、主題の相互作用


2021/06/23


本学会に、大麻使用者の実態に関する文献のお問い合わせがありましたので、日本と同じように厳格な大麻禁止政策を採用しているスウェーデンの研究事例”
Cannabis use under prohibitionism ? the interplay between motives, contexts and subjects”を仮訳しました。


概要

人はなぜ精神作用物質を使用するのか、というのが薬物研究の重要な問題である。これまで、退屈、習慣、痛みの緩和などの多様な動機が説明されてきたが、スウェーデンのような禁止主義政策の下で、成人大麻使用者がどのように使用の動機付けをしているかについては、ほとんど知られていない。

本研究の目的は、スウェーデンの成人大麻使用者のサンプルが、自己使用に意味を持たせる際に、どのような動機を参照しているかを探ることである。彼らの説明では、大麻使用のどのような側面(薬物の効果、個人の特性、社会的背景など)が強調されているのか、また、そのような側面をどのように組み合わせて、動機や使用の正当性を説明しているのか、といったことが問われている。

本研究では、動機を文化的に位置づけられた行動として捉え、オンラインのテキストメッセージ(n=238)とインタビュー(n=12)に基づいて分析を行った。参加者は、使用状況の特徴(仲間、リラックス、社会的機能などの動機)や、個人としての自己の特徴(マインドフルネス、アイデンティティ・マーカー、身体的機能などの動機)を強調していた。彼らは、医療的動機と嗜好的動機を同じ説明の中で述べることが多く、自己を合理的な個人として注意深く表現していた。

これらの動機は、薬物言説が医療化されつつあること、現代社会では責任が重んじられていること、スウェーデンでは大麻使用が未だにスティグマ(負の烙印)化していることを反映している。

はじめに
調査方法
結果
・嗜好としての大麻使用
 リラックスと仲間(場面行為比)
 マインドフルネスとアイデンティティ・マーカー(作因行為比)
・医療としての大麻使用
 社会的機能(場面行為比)
 身体的機能(作因行為比)
考察
結論


原文
Cannabis use under prohibitionism ? the interplay between motives, contexts and subjects
Mats Ekendahl,Josefin Mansson &Patrik Karlsson, Drugs: Education, Prevention and Policy
Volume 27, 2020 - Issue 5, p.368-376, 2020
https://doi.org/10.1080/09687637.2019.1697208


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 禁止主義下での大麻使用(2020)

E-ラーニング講座「CBD医学実践コース開設」受講者募集スタート


2021/06/16


本学会では、昨年秋からMM411が提供するアメリカ医師会(AMA)認定の生涯学習教育(CME)コースをベースにした、「カンナビノイド医学基礎コース」のE-ラーニング講座を開設していました。

今回は、100種類以上あるカンナビノイドの中でも、CBDに特化した講座になります。
本学会会員が、所定の講座を取得すると、「登録医」又は「登録師」となります。
詳しくはこちらのサイトをご参照ください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=34332


●シラバス:カンナビジオール(CBD)医学実践コース

第1章:CBDについて知っておきたいこと
第2章:CBDの歴史と法的状況
第3章:CBDと身体
    エンドカンナビノイドシステム(ECS)を理解する
第4章:CBDと身体
    植物性カンナビノイドの生物学を理解する
第5章:CBDと身体
    CBDはどのような働きをするのか
第6章:CBDの使用方法
第7章:高品質のCBD製品の入手方法
第8章:投与量 自分に合ったCBD製品をみつける
第9章Part1:特定の病気のためのCBD
睡眠障害, 不安障害とうつ病, 社交不安障害(SAD), 心的外傷後ストレス障害(PTSD), 自己免疫疾患, 乾癬, 消化器疾患
Part2:ガンの管理, 膠芽腫, 肺ガン, 乳ガン, 神経変性疾患, パーキンソン病(PD), アルツハイマー病(AD), ハンチントン病(HD), 脳障害
Part3:てんかんと発作, 薬物依存症, オピオイド依存, 慢性・急性の痛み, 片頭痛, 線維筋痛症(FM)
第10章:よくある質問Q&A


本学会の正会員で受講希望者は、割引のクーポンコードを発行します。
カンナビノイド医学基礎コース
一般価格:5万円 → 割引価格:3万円
カンナビジオール(CBD)医学実践コース
一般価格:5万円 → 割引価格:3万円


ご関心のある方、体系的にCBDを学びたい方の受講をお待ちしています。
お問い合わせは、こちらへ
  jcac-office@umin.ac.jp


詳しい講座内容及び受講WEBサイトは下記になります。 

禁止主義の「科学」の政治的利用:大麻とサイケデリックの場合


2021/06/14


当学会に大麻禁止の歴史と科学についてのお問い合わせがありましたので、最近のレビュー論文から「The political uses of prohibitionist “science:” The case of cannabis and psychedelics」の仮訳をしました。

概要
本論文では、外在主義の視点を採用しながら、禁止主義の論理における政治的ツールとしての科学の利用を分析している。禁止主義は、その政治的・道徳的な教訓を科学的に、つまりイデオロギー的に中立な研究プロセスの結果として見なされるように努めている。この論文では、大麻とサイケデリックのケースを分析し、禁止主義がいかに自らの政治的・道徳的なアジェンダ(行動計画)を隠すために「科学」に頼り、自らの優先順位に合わない科学的研究の結果を無視してきたかを示している。最後に、薬物政策は、科学的根拠(エビデンス)、公衆衛生、社会的つながり、人権などの基本的な価値観に基づいて行われるべきであり、権力関係の観点から分析することで、科学と薬物政策の間の矛盾した関係をよりよく理解することができると主張する。

下記は、本論文の一部抜粋、詳しくはダウンロードのPDFファイルをお読みください。

大麻に対する政治的・道徳的聖戦

歴史的に見ると、世界的な禁止法が施行された後、大麻に対する覇権と制度的な科学の立場は、大きく変わった。禁止主義が覇権を握る前に、一流の科学者たちが、清教徒の酔狂な敵による大麻の荒唐無稽な説明に反論していた。最も声高な例は、インドの麻薬委員会報告書である。1893年、禁止運動家たちはイギリスの下院で、インドでの大麻使用に対する懸念を訴え、「...インドの精神病院には、ガンジャを吸う者がたくさんいる」と主張した(23)。このような主張を踏まえて、大麻使用の程度や身体的、精神的な影響を調べるために、インド麻薬委員会が設立されました。同委員会は英国政府に対し、いかなる制限的な措置も取らないようにと指示し、その通りにした。1925年、1931年、1933年のパナマ運河地帯報告書も、同じような結論を出している。アメリカでは好戦的な雰囲気が漂っていたが(パナマは1904年からアメリカの主権下にあった)、任命された委員会は3つの報告書すべてにおいて、大麻が軍隊や軍の規律に悪影響を及ぼすことはほとんどないと結論づけ、その結果、いかなる強制的な取り組みも排除すべきだと提案した。これらの報告書は、米国で最初の連邦大麻取締法である「1937年マリファナ税法」が施行される前に書かれたものである。1914年のハリソン麻薬税法のイメージでアンスリンガーが作成したこの法律は、政治家や科学者の間で、現実や科学からかけ離れた道徳的な前提に基づいていると疑念を抱かれた。1939年、ニューヨーク市長のフィオレロ・ラ・ガーディアは、ニューヨーク医学アカデミーにマリファナ(大麻)の社会的影響や医学的・臨床的側面についての調査を依頼した。その結果は1944年に部分的に発表され、アンスリンガーの信念に反するものだった。アンスリンガーと彼の麻薬局は、すでに大きな権力を持っていたため、報告書の結果を軽視し、さらには全米医学アカデミーに圧力をかけて、自らが編集する雑誌に社説を掲載させたため、報告書の影響力はゼロであった。

ラ・ガーディア報告書は、科学的報告書の政治的影響力の転換点となり、それ以降、科学的知識の生成過程が禁止主義者の利益に強く影響されるようになった。

20世紀に入ると、さらに多くの調査や報告が行われるようになった。それらはすべて、危険性がないことを指摘したり、少なくとも、逆効果の過大評価を指摘したりしている点である程度一致していた。ところが、大半は失脚しており、政治的影響力は皆無だった。例えば、イギリスのWootten Report(イギリス、1969年)、Le Dain Commission Report(カナダ、1970年)、Con-sumer Union Licit and Illicit Drugs(アメリカ、1972年)、National Commission on Marihuana and Drug Abuse(アメリカ、1972年)、Commission of the Australian Government(オーストラリア、1977年)、National Academy of Sciences Report(アメリカ、1982年)、Pelletier Report(フランス大統領、1978年)、Roques Report(フランス科学アカデミー、1998年)などがそうである。大麻(およびその他の薬物)の危険性を評価する科学的な報告書のうち、政治的に考慮されたものは、オランダで作成されたもの(1969年のHulsman委員会報告書および1972年のBann委員会報告書)だけであった。これらの報告書の政治的影響により、大麻は事実上非犯罪化され、その結果、いわゆるオランダのコーヒーショップモデルが導入された(24,25)。

1961年の麻薬に関する単一条約の実施当時、大麻をスケジュールI(中毒性が高いとされる物質)とスケジュールIV(治療効果のない薬物)に含めることを正当化する報告書は提出されなかった(18,19)。さらに、禁止主義の論理は、懲罰的な政策の有効性を評価することを妨げ、提案された目的が希薄で達成不可能であることを指摘する声を無視してきた(22,26)。麻薬取締局(DEA)が独自に設定した物質の生産と消費を根絶するための戦略に加えて、薬物問題を脱政治化し、禁止主義の道徳的前提に基づいて議論を「科学的」な領域に移行させる努力がなされてきた。科学的な禁止主義が自然化しようとした数多くの主張の中でも、大麻中毒に与えられたパブルは際立っている(27)。科学的な禁止主義者が主導した研究はすべて、大麻の有害な成分を強調し、ほとんどが微妙な意味合いの表現もなく、大麻の摂取と中毒を関連付けるものが多い(28)。誇張された発言もあり、大麻はヘロインと同じくらいの中毒性があると考えられている(29)。しかし、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)(30)の報告によると、ヘロインを使用した人の23.1%が何らかの依存症を発症しているのに対し、大麻の場合はその割合が9%にとどまっている。

科学的な禁止主義は、大麻を問題と関連づけたいがために、大麻と学校での失敗を関連づけるなど、さまざまな戦略をとってきた(31,32,33,34,35,36,37,38,39)。1971年にリチャード・ニクソン大統領が「麻薬戦争」を宣言すると、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)を中心とした米国の反ドラッグ専門家たちは、大麻の信用を失墜させるキャンペーンを微調整した(40)。さまざまな攻撃の側面の中で、彼らは、大麻の煙と学業不振との関連性が、社会政治的な信用を得るための強みになると考えた。それは、アメリカ社会に内在する深刻な社会的不平等を認めるのではなく、大麻を犯罪化し、スケープゴート(身代わり・生け贄)として、最も恵まれない青少年の学業成績が悪いのは大麻のせいだとすることであった(41,42,43)。その結果、禁止主義の科学は、人種差別や社会経済的地位を不幸の要因として考慮することなく、貧しい人々、特に黒人がマリファナ(大麻)を吸っているために学校を早期に退学しているという考えを広めることに成功した(33,34,44)。スペインのようにアメリカの政治的路線に乗っていた国も、すぐに同じ戦略を採用して国民を威嚇した。

(一部省略)

大麻の薬用・治療用の使用は、禁止主義の科学の最も不適切で乱暴な解釈である(59)。大麻は、国際的な政策によって治療効果が否定され、スケジュールWに収載された(18)。このようにして、禁止派の科学者たちは、大麻が本質的に有害な物質であることを補強する以外の経験的な証拠を組織的に否定するようになった。


原文
The political uses of prohibitionist “science:” The case of cannabis and psychedelics, Salud Colect. 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33147387/


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

FileName:
ダウンロード: LinkIcon 禁止主義の「科学」の政治的利用:大麻とサイケデリックの場合(2020)

薬物政策における非犯罪化を提唱.「収監に関する国連システムの共通見解」の和訳を公表


2021/05/28


この共通見解は、国連薬物犯罪事務所(UNODC)を筆頭に、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、平和活動局(DPO)の法の支配・治安機関担当室が共同で作成したもので、加盟国が現在の過剰な収監状態を再考することを支援するための国連の共同ビジョンとなっています。

国連システム全体として、(i)予防と非拘禁措置への政策転換、(ii)刑務所の状況改善と刑務所管理の強化、(iii)犯罪者の更生と社会復帰の促進を目的とした政策提言と技術支援を強化することを約束しています。

共通見解は、刑務所の改革と犯罪者の処遇を、緊急の司法と法の支配の優先事項として、また「誰一人取り残さない」という持続可能な開発のための2030アジェンダのコミットメントの不可欠な部分として、しっかりと位置づけています。具体的には、持続可能な開発のための2030アジェンダ「目標3:すべての人に健康と福祉を、目標16:平和と公正をすべての人に」が中心的なターゲットです。

オーストリアのウィーンにおいて2021年5月20日 第30回犯罪防止・刑事司法委員会(CCPCJ)の会期中のサイド・イベント(※)にて、国連薬物犯罪事務所(UNODC)のガーダ・ワリー事務局長は開会の挨拶で、共通見解の調査結果と提言が、

「人権とエビデンスに基づく政策を優先しつつ、収監と更生のための新たなアプローチに火をつけることになる」ことを切に望みました。

また、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の加藤美和オペレーション・ディレクターは、

「共通見解は、刑事司法政策や収監への依存に関して、パラダイムシフトを提唱することをためらわない」

と強調しています。
つまり、刑罰や社会的隔離から、予防、リハビリテーション、修復的司法、社会復帰への転換です。

共通見解において薬物政策は、下記のように明記されています。

p11
国連システムは加盟国に対し、法整備や、効果的な法的支援と安価な保釈金へのアクセスを対象とした刑事司法改革を通じ、公平性と適正手続の原則に導かれた各国の刑事司法制度の効率化を図ることで、公判前勾留の使用を狭義の状況に制限することを支援する。56

この趣旨は、犯罪の性質、重大性、事情、犯人の経歴等を踏まえ、転用等の非拘禁的措置の適切な配慮を確保するなど、比例的で個別的な量刑を推進するための取組に盛り込まれたものである。

薬物使用障害のある人の場合、このアプローチは、エビデンスに基づいた自発的な薬物治療のほか、地域社会レベルでの他の保健サービスへのアクセスを高めることも目的となる。このようなアプローチは、健康志向のアプローチが薬物使用の減少に最も効果的であり、それが引き起こす社会的危害を軽減することに最も効果的であるという明確なエビデンスによって支持されているだけでなく、国際薬物統制条約にも完全に遵守されている。57

薬物使用障害の現象は、公衆衛生上の問題であり、健康中心で倫理的基準に沿ったエビデンスに基づく対応を必要とする。

国連システムは、薬物関連の軽微な犯罪59 を含め、適切な場合には、比例的かつ個別的な量刑政策 58と、有罪判決や刑罰の代替手段を確保することを目的とした改革努力を支援する。また、国際人権法で保護されている行為の非犯罪化についても同様に提唱する。

タイトル:収監に関する国連システムの共通見解
内容

要約
目的及び範囲 p2
定義 p2
グローバルな刑務所の課題 p3
公判前勾留及び拘禁の乱用 p3
差別と不平等の拡大 p4
刑務所の過密 p5
放置と虐待 p6
主要な知見 p7
共通のアプローチ p8
予防・代替政策への転換 p9
刑務所管理の強化、刑務所の整備 p11
犯罪者の更生と社会復帰の促進 p14
行動指針 p16

原文
United Nations System Common Position on Incarceration
http://bit.ly/UNSCP-Incarceration

(※)2021年5月20日 第30回犯罪防止・刑事司法委員会(CCPCJ)の会期中のサイド・イベントについてはこちら 
https://www.unodc.org/unodc/en/frontpage/2021/May/the-united-nations-system-mobilizes-around-the-urgent-need-to-address-global-prison-challenges.html

国連の非拘禁措置に関する最低基準規則(東京ルールズ)
LinkIcon https://www.crimeinfo.jp/wp-content/uploads/2020/05/Tokyo-Rules.pdf

2015年に採択された新しい国連被拘禁者処遇最低基準規則
「ネルソン・マンデラ・ルールズ」日本語版
LinkIcon http://www.cpr.jca.apc.org/sites/all/themes/cpr_dummy/images/archive/Nelson_Mandela_Rules_Japanese.pdf

「矯正関係国際準則集」(四訂版)2020年2月版
http://www.kyousei-k.gr.jp/posts/product43.html 

用語解説

合法化 
大麻において国家レベルで全面合法化したのは、カナダ、ウルグアイ、アメリカ(15州)。EUでは、販売や使用にライセンスが必要な医療目的での合法化がなされている場合がある。

非犯罪化 
違法ではあるが、地域の法務当局の判断で摘発されない(オランダ)。全土で実質的に摘発が行われず、事実上の合法化の国もある(ポルトガル、スペイン、イタリアなど)。

非刑罰化 
違法だが、制裁として行政罰や軽い罰金刑で対応する(フランス)。少量の所持は起訴せず、警告や没収で対応する(イギリス)。



本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。



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2021年は2つの国際薬物条約の60周年と50周年記念


2021/05/26


2021年は、大麻草を麻薬原料植物として国際的な規制をしている麻薬単一条約が制定されて60周年、大麻草の成分であるTHCを規制している向精神薬条約が制定されて50周年です。

この機会に、国際薬物条約の監視機関である国際麻薬統制委員会(INCB)が60周年と50周年を記念した特別報告書を2021年3月に発行しました。本学会では、この特別報告書の仮訳を行いました。

特別報告書では、2つの条約が単なる薬物禁止を世界的に推進するだけの条約と思われていますが、人類の福祉と健康が中核であることを序文に明記しています。

「薬物統制システムは、公衆衛生と福祉の改善に向けたバランスのとれたシステムであり、比例性、集団的責任、国際人権基準の遵守という基本原則に基づいている。制度の実施とは、人類の健康と福祉を薬物政策の中核に据え、薬物政策の策定、人権基準の促進、予防、治療、リハビリテーション、薬物乱用の負の影響の軽減をより優先すること、共有する共通の責任に基づく国際協力の強化に包括的、統合的かつバランスのとれたアプローチを適用することを意味する。」

また、医療用大麻については、p29において、認められると明記されている。

「大麻草およびカンナビノイドの医療的使用は、国が非医療的用途への転用を防止するように設計された条約の要求事項を遵守している場合に限り、国際薬物条約に基づいて認められる。」

一方で、ウルグアイ、カナダ、アメリカ等の嗜好用大麻合法化の動きについては、p29において、強い批判をしています。

「非医療目的のための規制物質の合法化及び規制は、国際薬物の法的枠組みの明確な違反であり、合意された国際法秩序の尊重を損なうものであることは変わらない。」

薬物政策においては、2018年に国連31機関が、国連の1つの声として、「薬物政策に関する国連システムの 共通の立場」を発表しており、2019年に「人権及び薬物政策に関する国際ガイドライン」が国連諸機関によって発行されています。人権については、特別報告書p30に次のように明記しています。

「国際薬物条約の目標である人類の健康と福祉は、人権の完全な享受を含むと解釈することができる。薬物政策の名において人権を侵害する国の行為は、その目的のいかんを問わず、国際薬物条約とは根本的に矛盾する。」


タイトル:1961年麻薬に関する単一条約60周年記念及び1971年向精神薬に関する条約
50周年記念特別報告書

目次

I.背景 p1
II.1961年麻薬単一条約・1971年向精神薬条約の遵守状況 p7
III.医療及び科学目的の国際統制物質のアクセスの確保 p9
IV.薬物乱用対策 p13
V.システムの機能 p15
 A.統制範囲のスケジュールおよび変更 p15
 B.推定及び評価 p16
 C.生産・製造・在庫・消費統計 p17
 D.取引 p19
VI.1961年麻薬単一条約及び1971年向精神薬条約の規定遵守を監視し、その実施を確保する上で統制委員会が果たす役割 p21
VII.罰則  p23
VIII.その他の規定 p25
IX.課題 p27
X.結論 p31

原文
Celebrating 60 Years of the Single Convention on Narcotic Drugs of 1961 and 50 Years of the
Convention on Psychotropic Substances of 1971 (E/INCB/2020/1/Supp.1) 
LinkIcon https://www.incb.org/documents/Publications/AnnualReports/AR2020/Supplement/00_AR2020_supp_full_document.pdf


1961年麻薬単一条約及び1971年向精神薬条約の日本語訳はこちら
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mayaku/index.html

2018年11月 薬物政策に関する国連システムの共通の立場
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=89565
 
2019年3月 人権及び薬物政策に関する国際ガイドライン
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103026 

2019年10月
刑事司法制度と連携した薬物使用障害者の治療及びケア-有罪判決又は刑罰の代替手段
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=109437

2020年3月 薬物使用障害の治療に関する国際基準改訂版
実地試験の結果を取り入れる
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=106040


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。



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ダウンロード: LinkIcon 1961年麻薬に関する単一条約60周年記念及び1971年向精神薬に関する条約 50周年記念特別報告書

日本臨床カンナビノイド学会が厚労省「大麻検討会」に関する要望書を提出


2021/05/24


日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、21年1月から開催している厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会(以下、大麻検討会)」に対する要望書を5月24日(月)に同省の医薬・生活衛生局長へ提出しました。

大麻検討会とは、医学・薬学・法学の有識者12名で構成され、21年1月からこれまで6回開催され、下記のような議論が積み重ねられてきました。検討会は第7回で終了して本年6月に議論を取りまとめた報告書を作成する予定です。

第1回 2021年1月20日
(1) 座長の選出
(2)薬物対策の現状と課題 
(3)その他
第2回 2021年2月25日
(1)大麻を取り巻く環境と健康への影響
(2)大麻等の取扱いの変化による社会環境への影響−米国での状況について−
(3)薬物使用の疫学:大麻を中心に
(4)その他
第3回 2021年3月16日
(1)再乱用防止と依存症対策
(2)再乱用防止〜「需要低減」のための地域依存症支援〜
(3)その他
第4回 2021年3月31日
(1)薬物の適正使用
(2)医療用麻薬の製造・流通と適正管理について
(3)大麻由来医薬品の医療への活用
(4)その他
第5回 2021年4月23日
(1)日本の麻文化を守るために
(2)これまでの委員からのご質問に関する回答と追加説明
(3)とりまとめに向けた今後の検討課題
(4)その他
第6回 2021年5月14日
とりまとめに向けた議論
○大麻取締法のあり方 
○再乱用防止、社会復帰支援等 
○医療用麻薬及び向精神薬
○情報提供、普及啓発
第7回 2021年5月28日
とりまとめに向けた議論2
○大麻規制のあり方 
○社会復帰支援を柱とする薬物乱用者に対する再乱用防止対策
○医療用麻薬及び向精神薬の規制
○普及啓発及び情報提供

大麻等の薬物対策のあり方検討会https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html


本学会では、4月25日(日)の春の学術セミナー2021における大麻検討会に関する議論等を踏まえ、次の3点を要望しました。

1:大麻取締法第1条で定義されている現在の部位規制を廃止した上で諸外国に倣いTHC含有量の基準を設け、基準値以下のTHC含有品種に関しては大麻と別個にヘンプとして大麻取締法の規制対象から除外し、医療利用並びに産業利用の可能性を推進すること

2:カンナビジオール(CBD)及びCBDを主成分とする医薬品に関して、大麻取締法、並びに麻薬及び向精神薬取締法の規制物質から除外される旨を明示すること

3:THC及び大麻草の将来的な幅広い医療利用を見据え、大麻使用に伴う罰則の制定を見送ること

これらの内容を補足する添付資料として、令和2年度厚生労働科学特別研究事業「難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻由来成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究報告書」『諸外国における医療大麻の分類と法規制の枠組みに関する研究』を提出しました。


5月24日の提出の様子はこちらを参照
「大麻『使用罪』に反対」「大麻の柔軟な医療利用を」 
厚労省に弁護士有志と関連学会が署名や要望書を提出
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-kyokuchou

日本でも医療用大麻を適切に使えるようにして 
海外で使える薬で日本の患者が救えない理由
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-masataka


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ダウンロード: LinkIcon 厚労省「大麻検討会」に関する要望書

米国における各州のマリファナ合法化の影響:2021年の最新情報


2021/05/17


当学会に米国の合法化事情についてのお問い合わせがありましたので、最近のレビュー論文から「The Effect of State Marijuana Legalizations: 2021 Update」の翻訳をしました。


対象地域(合法化年)
コロラド州(2012年)、ワシントン州(2012年)、オレゴン州(2014年)、アラスカ州(2014年)、カリフォルニア州(2016年)、ネバダ州(2016年)、メイン州(2016年)、マサチューセッツ州(2016年)、バーモント州(2018年)、ミシガン州(2019年)、イリノイ州(2020年)。

調査背景
マリファナ合法化(嗜好用大麻合法化)の賛成者と反対者の主張が大きく異なる。
どちらの主張が正しかったのかを21年2月時点で評価する。

賛成者の主張
合法化が犯罪を減らし、税収を増やし、刑事司法支出を減らし、公衆衛生を改善し、交通安全を高め、そして経済を活性化する

反対者の主張
合法化がマリファナやその他の薬物やアルコールの使用に拍車をかけ、犯罪を増やし、交通安全を低下させ、公衆衛生を害し、10代の教育成果を低下させる

調査結果
合法化した11州の最新の科学的評価

成人マリファナ使用       増加
中高生の使用          横ばい
他の薬物・アルコール使用  横ばい
マリファナの価格   一時下落してその後一定
自殺率の増加          横ばい  
暴力犯罪の増加         横ばい
運転死者数の増加        横ばい
州の国民総生産成長率      横ばい
州の税収             増加
刑事司法支出          横ばい

注意:
先行して合法化している医療用大麻の影響は何も考慮されていない。

結論 
今のところ、賛成派も反対派もほとんど事前予想が外れている。
反対派による悲惨な予測を考えると、嗜好用大麻の合法化による重大な悪影響がないことは特に印象的である


原文
Dills, Angela, Sietse Goffard, Jeffrey Miron, and Erin Partin. “The Effect of State Marijuana Legalizations: 2021 Update,” Policy Analysis no. 908, Cato Institute, Washington, DC, February 2, 2021.
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3780276


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


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医療用大麻のハーブ製剤:処方医のための便覧


2021/05/14


広義の医療用大麻には、次のような4つがあります。
・カンナビノイド医薬品(GMP/GACP有)
・ハーブ製剤(GM/GACPP有)
・ハーブ大麻(GMP無し)
・ヘンプ由来CBD製品

本論文では、ハーブ製剤に焦点を当てたものです。
海外では「西洋医学」に加えて、代替医療や未承認薬の人道的使用(コンパッショネート使用)が普及しており、カンナビノイド医学及び医療の多様な面があることを知っていただければと思います。


医療用大麻のハーブ製剤:処方医のための便覧
Herbal Preparations of Medical Cannabis: A Vademecum for Prescribing Doctors
Pietro Brunetti , Simona Pichini , Roberta Pacifici , Francesco Paolo Busardo and Alessandro del Rio Medicina (Kaunas). 2020 May; 56(5): 237. 
https://dx.doi.org/10.3390%2Fmedicina56050237

概要
大麻草は何世紀にもわたって治療目的で使用されてきました。前世紀には、その高い乱用性と、健康上の利点が不十分であるとされていたために、この植物は悪魔化されていました。しかし、最近の非犯罪化政策と新たな科学的証拠により、大麻草の治療効果の可能性への関心が高まり、大麻草をベースとした製品の販売許可への道が開かれました。

現在、いくつかの合成品や標準化された製品が市場に出回っていますが、患者の嗜好は、取り扱いが容易で自己投与が容易なハーブ製剤に傾いています。文献検索は、学際的な研究データベース、国際機関や機関のウェブサイトで行われた。医療用大麻の人気が高まっているにもかかわらず、医療用大麻の抽出物の化学組成や調製方法に関するデータはほとんどありません。

著者らはここに、最も一般的な大麻草のハーブ製剤を報告し、その医学的な適応症、投与経路、推奨用量を提示しています。また、医療用大麻の様々な供給源から得られたハーブ製剤中の用法用量、滴定戦略、カンナビノイド量の提案など、処方医のための実用的で有用なガイドを提供します。

内容
・医療用大麻のハーブ製剤
・ハーブ大麻の開花頂部の煎じ薬の調製
・大麻草開花頂部の油分抽出物の調製法
・気化システムを用いた大麻草の開花頂部の吸入
・処方する医師のための便覧
・医療利用と医師の推奨
・投与量と滴定戦略



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ダウンロード: LinkIcon 医療用大麻のハーブ製剤(2020)

欧州連合司法裁判所の20年11月19日判決「CBDは麻薬ではない」


2021/01/26


2020年11月、欧州司法裁判所は、大麻植物から抽出されたカンナビジオール(CBD)は、1961年の国連麻薬単一条約の下での「麻薬」と見なされるべきではないと述べた判決を発表しました。

1961年の国連条約は、大麻草を規制する各国の薬物規制法のベースとなっています。「大麻草の花」および「大麻抽出物とチンキ」の無許可の販売は刑事罰の対象となるはずであり、これはその後、麻薬密売の罰に関する欧州理事会の枠組み決定2004/757に反映されました。

これらの花と抽出物にはいくつかの異なるカンナビノイドが含まれており、その濃度は植物の品種や栽培技術によって大きく異なります。最も広く研究されている2つのカンナビノイドは、テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)です。THCは大麻草の主要な精神活性成分であることが知られていますが、世界保健機関/依存性薬物専門家委員会(WHO/ECDD)のによる最近の科学的評価では、CBDには「乱用の可能性も依存を生み出す可能性もない」ことがわかっています。

欧州司法裁判所の判決は、フランスの裁判所から照会された訴訟がきっかけとなりました。2017年、フランスの裁判所は、チェコ共和国の大麻草全体から合法的に抽出されたCBDを含む電子タバコのカートリッジ販売者を有罪としました。

フランスでは、繊維と種子のみが合法的な大麻草であるためです。この訴訟は欧州司法裁判所に付託され(訴訟C-663/18)、2020年11月19日に裁判所は判決を発表しました。裁判所は、CBDによる健康へのリスクのエビデンスはまだ限られているが、予防的制限措置を正当化する可能性があるが、合成品が禁止ではなく、天然由来のCBDにのみ販売禁止を適用することは一貫していないと述べた。

欧州内での物品の自由な移動を制限するこれらの措置の合法性を検討し、裁判所は大麻草から抽出されたCBDは、1961年条約の意味する範囲内の薬物ではないと述べました。また、欧州の産業用大麻規制はCBD抽出物には適用されませんでした。これは、これらの規制の定義内の農産物ではないためです。


欧州司法裁判所 訴訟C-663/18
http://curia.europa.eu/juris/documents.jsf?num=C-663/18

判決文概要の仮訳は下記からダウンロードをお願いします。


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ダウンロード: LinkIcon CBDは麻薬ではない判決文概要

日本の大麻使用者実態調査への協力のお願い(1/21-2/3まで)


2021/01/21


大麻政策の動向に注目が集まる今日ですが、国内における大麻使用の健康への影響のデータは充分とは言えません。この点に関し、今回、当学会の正高理事らと国立精神・神経医療研究センターが共同で、オンラインアンケート調査を行う運びとなりました。

対象は過去に1回以上大麻を使用した経験のある方で、メールアドレスを含む一切の個人情報は収集しません。300名程度のサンプル数を目標としています。
以下のフォームから5分程度で回答可能ですので、該当する方はご協力頂ければ幸いです。

日本における市中大麻使用者の大麻関連健康被害に関する実態調査
締切:2月3日(水)午前10時まで
https://forms.gle/UuwZFUB8SgoWnn9X8


<調査概要>

研究課題:SNSを活用した市中大麻使用者における大麻関連健康被害に関する実態調査

調査対象:過去に一度以上、大麻を使用した経験がある方(CBD製品を除く)

調査人数:300名程度を目標

調査方法:匿名式WEBアンケート

調査期間:21年1月21日(木)午前10時から2月3日(水)午前10時まで:14日間

調査機関:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
 
調査窓口:正高佑志:日本臨床カンナビノイド学会理事
    
研究成果:医学系学術誌への投稿を予定

刑事司法制度と連携した薬物使用障害者の治療及びケア-有罪判決又は刑罰の代替手段


2021/01/18


この報告書は、世界保健機関(WHO)及び国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2019年10月に発行した“Treatment and care for people with drug use disorders in contact with the criminal justice system; Alternatives to Conviction or Punishment”の仮訳版です。持続可能な開発のための2030アジェンダ「目標3:すべての人に健康と福祉を、目標16:平和と公正をすべての人に」の基準となる基礎資料として利用することができます。

序文(一部抜粋)

国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界保健機関(WHO)は、2016年の第59回国連麻薬委員会(CND)において、「刑事司法制度と連携した薬物使用障害者の治療及びケア:有罪判決又は刑罰の代替手段」というイニシアティブを開始した。このイニシアティブは、有罪判決又は刑罰に代わる手段の知識、理解、範囲、可能性を高めることを目的としている。国際薬物統制条約や人権条約、国連の防犯・刑事司法の基準や規範など、国際薬物統制に沿って、刑事司法制度に関連する薬物使用障害者の治療に転用する選択肢を探求している。

その目的の1つは、刑事司法当事者が、治療がどのように機能するかを理解するのを助け、治療当事者が、刑事司法制度がどのように機能するかを理解するのを助けることである。最も重要なことは、薬物使用障害治療と刑事司法体制を整合させる機会を説明し、読者がその協力に関する複数の可能な視点を理解するのを助けることである。

内容(目次から抜粋)

第1章 有罪判決又は刑罰の代替手段としての問題の範囲及び治療の提供を検討する理由

有罪判決又は刑罰の代替手段として治療する理由
理論1:薬物使用障害者の多くは、刑事司法制度と接しており、その多くの人々は薬物使用及び薬物使用障害の病歴を有している。
理論2:有罪判決又は刑罰の代替手段として、薬物依存治療を提供することは、効果的な公衆衛生戦略である。
理論3:薬物依存治療を必要とする者に有罪判決又は刑罰の代替手段を適用することは、効果的な刑事司法戦略である。
理論4:有罪判決又は刑罰の代替手段としての治療は、公衆衛生及び公衆安全に統合的に寄与する。
理論5:有罪判決又は刑罰の代替手段としての治療は、国際的な法的枠組みに沿ったものである。

第2章 国際的な法的枠組みに沿った治療及びケアの選択

刑事司法制度と接する薬物使用障害者の治療に関する国際的な法的枠組みに定められた基本原則
原則1:薬物使用障害は、公衆衛生上の問題であり、健康面を中心とした対応が必要である。個人は、薬物使用障害のために罰されるべきではなく、適切な治療を受けるべきである。
原則2:薬物使用障害を持つ犯罪者に対する刑事司法制度の全ての段階で、有罪判決又は刑罰の代替手段が奨励されるべきである。
原則3:プロセスのすべての段階で比例性が要求される。
原則4:治療の変更は、対象者のインフォームド・コンセントを得て行われるべきである。 
原則5:有罪判決又は刑罰の実施の代替案の実施は、法的及び手続保障を尊重する必要がある。
原則6:特別な集団が差別されることなく、有罪判決又は刑罰に代わる治療へのアクセスができる。
原則7:薬物使用障害を持つ被収容者は、健康に対する権利を奪われることなく、一般市民と同じレベルの治療を受ける権利がある。

第3章 薬物使用障害のある犯罪者の治療及びケア

薬物使用障害の分類
刑事司法制度と接する薬物使用障害者の健康審査と評価
薬物使用障害の治療

第4章 有罪判決又は刑罰に代わる治療の選択肢

刑事司法制度には幅広い転用の選択肢がある
刑事制裁に代わる行政処分
公判前段階
裁判/判決段階
特別裁判所・訴訟書類
裁判後の段階

第5章 結論
a. 健康パラダイムを採用:薬物使用障害は健康志向の枠組みで治療できる
b. 刑事司法制度を治療のゲートウェイとして利用する:刑事司法制度は薬物関連介入の重要な場面である
c. 薬物使用障害からの回復がプロセスであることを受け入れる:薬物使用障害は再発性の症状である
d. 治療の多様化:薬物使用障害のあるすべての犯罪者が同じ強度の治療を必要とするわけではない
e. 有罪判決又は刑罰の代替は、国際的な法的枠組みに沿ったものである。
f. 転用機会への注力
g. 協力関係を構築する。すなわち、刑事司法制度及び治療サービスは、相互の原則を尊重しつつ、適切な役割の定義を考慮しつつ、協働することができ、また、協働すべきである。
h. 刺激的な環境を提供する

原文は、こちらのページよりPDFファイルでダウンロードできます。
https://www.unodc.org/unodc/en/drug-prevention-and-treatment/publications.html

LinkIcon https://www.unodc.org/documents/UNODC_WHO_Alternatives_to_conviction_or_punishment_ENG.pdf

この分野については、日本の法務省法務総合研究所研究部 研究部報告62 2020年3月
薬物事犯者に関する研究において、諸外国における薬物事犯者処遇(第4章):有罪判決や刑罰(司法モデル)ではなく治療等の代替手段によること(医療モデル)を紹介しています。 
http://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00025.html

コメント
本学会は、大麻草およびカンナビノイド医療に関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。


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カンナビゲロール(CBG)の薬理学的症例(総説)


2021/01/14


当学会にカンナビゲロール(CBG)についてのお問い合わせがありましたので、最近のレビュー論文から「THE PHARMACOLOGICAL CASE FOR CANNABIGEROL (CBG)」の翻訳をしました。

2020年11月末現在の情報としてダウンロードしてご活用下さい。

概要

テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)やカンナビジオール(CBD)などの個々のカンナビノイド及び医療用大麻は、メディアと科学論文の両方で注目を集めています。

しかし、大麻草は100種類以上のカンナビノイドを産生し、カンナビゲロール(CBG)は最も豊富な植物性カンナビノイドの前駆体分子としての役割を果たしています。CBGはカンナビノイド受容体においてΔ9-THCとCBDの間に親和性と活性の特徴を示すが、α-2アドレナリン受容体及び5-HT1Aとの相互作用において特異的なようです。

研究は、CBGが神経疾患(例えば、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症)、炎症性腸疾患の治療に可能性があることだけでなく、抗菌活性を有することを示しています。この規制されていない植物性カンナビノイドの商業的使用への関心が高まっています。

このレビューでは、CBGのユニークな薬理学、その可能性のある治療上の有用性に関する我々の現在の知見及びその潜在的な毒性学的な危険性に焦点を当てています。

CBGの潜在的な治療可能性

・神経保護とニューロモデュレーション(神経修飾)
・消化器疾患
・メタボリックシンドローム
・抗菌剤

今後の課題

CBGに関する研究はまだ初期段階にありますが、多様な治療ニーズに対応することが期待されています。ここでは、その薬理作用に基づいて、特定の疾患や病状に対する薬物治療レジメンを改善するためのCBG及びその誘導体の潜在的な適応症を強調します。しかし、これらの用途は、CBGがどのように安全かつ効果的に使用できるかをさらに理解するための追加研究に依存しています。
(省略)
ヘンプの規制緩和に伴い、規制されていないCBDオイルの使用が劇的に増加していることを考えると、薬理学の世界でもCBGの使用が爆発的に増加する前に、CBGの研究を行うことが望まれます。

原文
https://doi.org/10.1124/jpet.120.000340



FileName:
ダウンロード: LinkIcon カンナビゲロール(CBG)の薬理学的症例(2020)
 

有望な抗がん剤としてのカンナビジオール(CBD)(総説)


2020/12/31


当学会にCBDと抗がんについてお問い合わせがあったので、レビュー論文「Cannabidiol (CBD) as a Promising Anti-Cancer Drug」の翻訳をしました。
2020年10月末現在の情報としてダウンロードしてご活用下さい。


概要:近年、カンナビオール(CBD)や?9-テトラヒドロカンナビノール(THC)などのカンナビノイドは、集中的な研究の対象となっており、その精査が行われています。カンナビノイドには、ヒトで生理的に生産され、研究室で合成され、主に大麻草から抽出されたものを含む、幅広い有機分子が含まれています。これらの有機分子は、その化学構造だけでなく、タンパク質の結合プロファイルにおいても類似性を共有しています。しかし、作用機序や臨床応用には顕著な違いがあり、このレビューでは簡単に比較対照していきます。CBDの作用機序とがん治療への応用の可能性については、このレビュー記事の主な焦点となります。

レビュー論文によると、がんの種類で、研究が進んでいる8つの部位は次の通り。

1.膠芽腫 2.乳房 3.肺 3.大腸 4.白血病・リンパ
5.前立腺 6.頸部 7.胃部 8.膵臓

まとめと結論(一部抜粋)

上記の大量の文献からも明らかなように、CBDは培養がん細胞株とマウス腫瘍モデルの両方で、さまざまな種類のがんに対して強力な抗増殖効果とプロアポトーシス効果を示しています。それに比べて、CBDは一般的に同じ組織/器官からの正常細胞に対して穏やかな効果を持っています。

抗腫瘍メカニズムは腫瘍の種類によって異なり、細胞周期停止からオートファジー、細胞死、またはそれらの組み合わせにまで及びます。さらに、CBDはまた、腫瘍の移動、浸潤、および新生血管化(図5A)を阻害することができ、CBDは腫瘍細胞に作用するだけでなく、例えば間葉系細胞および免疫細胞を調節することによって、腫瘍の微小環境にも影響を与えることができることを示唆しています。

CBDのエンドカンナビノイド受容体であるCB1とCB2、またはカルシウムチャネルのTRPVファミリーへの依存性も様々であり、CBDは複数の細胞標的を持っている可能性があることを示唆しています。腫瘍の種類によっては、CBDは細胞の酸化還元の恒常性を乱し、活性酸素とERストレスを劇的に増加させると考えられています。

メカニズム的には、CBDは細胞の酸化還元恒常性を破壊し、活性酸素とERストレスを急激に増加させ、細胞周期停止、オートファジー、細胞死を引き起こす可能性があると考えられています(図5A)。

今後の研究では、活性酸素、ERストレス、炎症などの異なるシグナル伝達経路の相互作用を明らかにすることが重要であり、CBD治療が腫瘍細胞と浸潤細胞の両方の細胞の恒常性を破壊し、がん細胞の死や腫瘍の移動、浸潤、転移、血管新生の阻害につながることをよりよく理解することが重要です。

CBDをがん治療薬として開発するための最終ステップは、大規模でよく設計された臨床試験を経ることであり、これは緊急に必要とされています。


原文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33143283/

FileName:
ダウンロード: LinkIcon 有望な抗がん剤としてのカンナビジオール(CBD)(2020)

欧州のCBD製品に関する報告書「欧州の低THC大麻製品」が発行


2020/12/29


「欧州の低THC大麻製品」報告書は、欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)が2020年12月に発行した“Low-THC cannabis products in Europe”の仮訳版です。欧州のCBDオイルを含む低THC大麻製品の状況がわかる基礎資料としてご利用いただければと思います。

はじめに(本報告書から引用)

近年、ハーブ大麻や大麻オイルなどの大麻製品が欧州で一般販売されるケースが増えている。これらの製品は、低濃度のテトラヒドロカンナビノール(THC)のみが含まれていると主張している。THCは、大麻の精神作用の主な原因となる化学物質であるが、一部の国では薬物法の下で管理されていない可能性がある。このような状況により、これらの製品の法的地位と危害を引き起こす可能性の両方に関して、政策レベルでの懸念が生じている。政策立案者と低THC製品の供給を希望する者の両方が直面している特定の課題は、低THC製品の法的地位と、その販売に適用される規制の枠組みを確立することにある。特に、喫煙用混合物、オイル、エディブルなど、違法な大麻製品に類似した形態をとる低THC製品に関連した不確実性がある。これらの製品が本報告書の主な焦点である。

<解説>
「CBD製品」という表記にしないで、「低THC製品」で統一して表現しているのが発行元の欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)らしい。2020年11月19日に、欧州裁判所でCBDは1961年麻薬単一条約における規制薬物に該当しないという直近の判決も含めて、欧州でCBD製品の課題について全体像がつかめるように解説しています。

目次

4 はじめにと理論的根拠
4 低THC大麻製品とは何ですか?

5 低THC製品に関する欧州の状況

5 低THC製品の種類
6 欧州での低THC製品の販売
7 小売店の種類
7 製品の由来
7 製品の品質
8 低THC製品のマーケティング
9 製品のラベルと免責事項
9 低THC製品のユーザーの特徴と動機
10 低THC製品の規制状況

12 低THC製品の増加に対する最近の規制対応

12 国家レベルでのTHC濃度の規制
13 CBD製品の規制
15 品質管理と法執行

15 将来を見据えて:低THC製品にはどのような牽引力がありますか?

16 参考文献
17 リソース
17 謝辞

<解説>
CBD製品は、ハーブ(乾燥花)、樹脂、オイル、電子タバコ用e-リキッド、エディブル(食用)、結晶製品(アイソレート)、化粧品類などの様々な種類があります。本報告書を読むと、欧州において、これらに関係する法律は、7つあり、これに各国の国内法の規制がプラスされ、欧州諸国での統一的な法的位置づけが全くできていないことがわかります。

・医薬品2001/83/EC指令(医薬品指令)
・食品規則(EC) No 178/2002
・食品サプリメント指令2002/46/EC
・新規食品規制(EU)2015/2283
・化粧品規則(EC)第1223/2009号
・タバコ製品指令2014/40/EU
・食品の栄養と健康に関する強調表記規則(EC) No 1924/2006

特に、1997年5月15日以前には、EU内でヒトが著しく消費していなかった食品と定義される「新規食品」にCBD製品が2019年に分類されたことにより、新規食品として販売するための安全性評価が必須となっています。

原文は、こちらのページよりPDFファイルでダウンロードできます。
https://www.emcdda.europa.eu/publications/ad-hoc-publication/low-thc-cannabis-products-europe_en


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 欧州のCBD製品に関する報告書「欧州の低THC大麻製品2020」

厚生労働省の44年ぶりの大麻小冊子「大麻問題の現状」が発効


2020/12/12


「大麻問題の現状」は、2016年から4年間継続された厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」の研究成果を基に執筆され、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の監修下に本年3月に出版されました。

本書籍は、1976年に依存性薬物情報研究班および厚生省薬務局麻薬課が当時の大麻に関する情報を冊子「大麻」として発刊以来の新書です。

「大麻問題の現状」
企画・編集
厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)
「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」研究班
真興交易(株)医書出版部 全127頁
LinkIcon http://www.dapc.or.jp/torikumi/20200415.pdf


大麻問題の現状
目次
発行に際して・・・厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課・・・3

T大麻とは・・・花尻(木倉)瑠理,緒方潤,田中理恵・・・7

1 植物学からみた大麻
2 大麻の成分について
3 国際条約での規制
4 大麻に関する国内の法律

U 大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用:
基礎と臨床・・・・山本経之, 山口拓,福森良・・・18

1.はじめに
2 大麻/THCの作用
3 カンナピジオール(CBD)の作用
4 大麻の依存性とその特性
5. フィトカンナピノイドの医薬品としての有用性
6 おわりに

V 大麻による有害作用:臨床的特徴・・・舩田正彦,松本俊彦・・・33

1.はじめに
2 検索方法
3 大麻成分とその急性作用
4 大麻の慢性使用による影響
5 大麻使用と精神病の関連
6 心臓血管系と自律神経系への影響
7 呼吸器の影響
8 大麻使用と他の薬物乱用
9 青少年の大麻使用
10 おわりに

W 大麻草由来成分やその類似成分を用いた医薬品・・・鈴木勉・・・51

1 はじめに
2 ナピキシモルズ(ザティペックス)の臨床
3 ドロナピノール(マリノール)の臨床
4 ナピロン(セサメット)の臨床
5 おわりに

X 大麻と危険ドラッグ・・・舩田正彦・・・58

1 はじめに
2 危険ドラックとは
3 危険ドラックの種類とその健康被害
4 危険ドラックの包括指定
5 危険ドラックと大麻
6 おわりに

Y 世界の大麻事情

1 米国・・・富山健一, 舩田正彦・・・70
 1 はじめに
 2 米国の州における大麻使用の規制
 3 大麻に関する規制と違反時の罰則
 4 コロラド州に見る大麻合法化の社会的状況
 5 まとめ
2 力ナダ・・・鈴木勉・・・77
 1 はじめに
 2 カナタの「改正大麻法」
 3 今後の課題
 4 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠璃, 緒方潤・・・80
 1 はじめに
 2 産業用途の大麻について
 3 嗜好用途の大麻について
 4 まとめ

Z 大麻草およびその成分の医療での活用

1 米国・・・舩田正彦. 富山健一・・・88
 1 はじめに
 2 医療用大麻(medical marijuana)
 3 まとめ
2 力ナダ・・・ 鈴木勉・・・95
 1 はじめに
 2 カナダの医療用大麻
 3 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠理・・・98
 1 はじめに
 2 欧州における医療向けの大麻関連製品
 3 まとめ

[ 大麻問題に関する施策と教育啓発の現状・・・鈴木順子・・・105

1はじめに
2 本邦における大麻問題の現状
3政府の薬物乱用防止5力年戦略
4 国および地方自治体の薬物乱用防止に係る啓発・教育施策
5 代表的な関係団体の取り組み

あとがき・・・井村伸正・・・121
索引・・・123


あとがき

わが国における大麻の生涯経験率1%程度であり、いわゆる先進国の中で最も低い。しかし、最近の大麻事犯摘発件数は覚醒剤のそれに次いで多く、特に若年層の検挙数が著しく増加しており、危機的状況と考えざるを得ない。

一方、目を国外に転じると,一昨年秋に医療用大麻のみならず嗜好用の大麻についても規制を緩和する法制度の施行に踏み切った力ナダはじめ、米国やオランダ、英国、ドイツ等のヨーロッパ各国においても規制緩和が進行しているように見受けられる。この流れの速さからすると、遠からずわが国の大麻事情に影響が及す可能性も考えねばならないであろう。

1976年に厚生省薬務局麻薬課が当時の大麻に関する情報を冊子「大麻」にまとめて発行しているが,約半世紀が経過した現在の世界の大麻の状況を調査研究する企画が立てられ、2016年4月から4年間の研究成果を中心にまとめたのが本冊子である。

本冊子では,大麻(大麻草)の植物学的分類、成分の分析法の進歩、分子生物学的手法の導入による大麻草の形質変換の試み等、最新の生物工学的研究の成果、大麻の規制に関する国内外の基本的な法律の解説、次いで大麻・カンナピノイドの毒性と有益性についての基礎と臨床的特徴、若年層の大麻使用に関する直近の文献調査結果の紹介,大麻草からの抽出成分や化学的合成品からなる医薬品の解説の後、米国、カナダ、ヨーロッパにおける医療用大麻および晴好用大麻の規制緩和状況の詳細が示される。そして、最後はわが国の大麻問題!こ関する施策と教育啓発の現状について、日本政府の「薬物乱用防止5力年戦略」に沿って、国(文科省,厚労省)および地方自治体が行っている施策と関係諸国体の取り組みを列挙し、より有効な薬物乱用防止のための普及啓発手段開発の現状を評価している。

一方、国内の大麻事情としては、最近,芸能人,スポツ選手等の知名人による大麻所持,密輸等の法令違反が報道されたり、重大殺傷事件の裁判員裁判において,弁護人が、被告は大麻の乱用で精神障害を発症していたとして無罪を主張するなどの事例があり、大麻への関心が高まっている。

また、国の主導で行われてきた薬物乱用防止のキャッチフレーズ. 「ダメ。ゼッタイ。」に対する批判も聞こえていて、大麻使用の規制緩和を求める意見も散見されるようになった。このような事態に適切に対応するためには,大麻(大麻草)やその薬理活性を示す成分について正しいエピデンスに基づいた科学的知見を把握し、かつ、国外で進む規制緩和がいかなる経緯によるものなのか、科学的調査研究のみならず、社会・経済学的な解析が必要不可欠であろう。

この冊子の骨子となった直近4年間の調査研究事業の成果は,今後のわが国の薬物乱用防止政策策定に資するところはあろうが,変化の激しい国内外の薬物乱用の動向を引き続き精査していかなければなるまい。


<解説>
厚生労働省の補助金事業による研究調査で、危険ドラッグの枠組みで、産業用、医療用、嗜好用の3分野を含んだ大麻というテーマに焦点をあてて17年に126頁、18年に261頁、19年に201頁、20年に145頁の報告書を発行した。さらに、この研究成果を一般市民向けにやや平易に書いた全127頁の小冊子にまとめたことは、公的研究として非常に価値のあるものである。特に小冊子は、1976年以来の44年ぶりの仕事を成し遂げた快挙といえよう。

一方で、2年目、3年目の報告書で指摘されていた国際条約の規制や、米国のスケジュールTという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みを使って合法化しているという視点が抜けている。

また、国連および各国の薬物政策が、懲罰的アプローチ(司法)から健康アプローチ(公衆衛生)へとシフトしている視点や非犯罪化政策と合法化政策の違いについて全く触れられていない。

大麻問題の現状の小冊子のあとがき「エピデンスに基づいた科学的知見を把握し、かつ、国外で進む規制緩和がいかなる経緯によるものなのか、科学的調査研究のみならず、社会・経済学的な解析が必要不可欠であろう。」の部分で自ら指摘しているように、4年間の時間と予算を費やしたにも関わらず、十分な解析が成されたとはとても言い難いだろう。

不十分な視点の解決方法として、医学及び薬学者だけではなく、法学者、犯罪学者、社会学者、心理学者、代替医療学者、民族植物学者、医療政策学者、バイオ経済学者、科学コミュニケーターなどの学問領域を含む多様な専門家が参画した学際的アプローチが有効となるだろう。


大麻問題の現状 冊子ダウンロードはこちら
LinkIcon http://www.dapc.or.jp/torikumi/20200415.pdf

厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査(3)


2020/12/12


タイトル:危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究(2020年3月)
研究費:7,389,000円

解説:このタイトルだとこのテーマに関心の高い方が「大麻/カンナビノイド」で通常のWEB検索しても見つからないことが指摘できます。

危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究(2019年3月)
研究費:7,540,000円
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105266

危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2018年3月)
研究費:7,540,000円
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=104691

危険ドラッグ等の乱用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2017年3月)
研究費:7,898,000円
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201605014A#selectGaiyou

解説:この報告書は、17から19年の過去3年間で発表されたものと同類の4冊目です。厚生労働省科学研究成果データベースには掲載されておらず、薬物乱用「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーンを担う「公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の活動報告書として一般公開されています。

タイトル:厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」
(H29−医薬−指定−009)
令和元年総括・分担研究報告書
研究代表者 井村伸正
2020年3月
LinkIcon https://www.dapc.or.jp/torikumi/2019_houkoku_dapc.pdf

目次

T.総括研究報告書
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究・・・1
井村伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)


U.総括・分担研究報告書

1.欧州における医療向け大麻製品の現状と品質規格について・・・21
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所)

目的:前年度、国の政策として医療用大麻を認めていたオランダの現状を調査したが、今年度はオランダ以外の欧州での大麻製品(大麻由来医薬品を含む)の現状を調べた。また医師の処方箋により薬局で医療向け大麻を受領できる国が増加しているので、各国の薬局方等で定められている医療向け大麻の品質規格を調査した。

2.大麻の識別のための分析手法(文献情報)・・・29
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)

目的:大麻草及びそれに由来する製品が大麻である。大麻草にはカンナビノイドと総称される固有の化合物群が含まれている。これまでの報告では大麻草中には565種の化合物が含まれており、そのうち120種がカンナビノイドとされている。大麻草のケモタイプは、THCAとΔ9−THC を主体とするdrug-typeと主カンナビノイドがCBDAとCBDであfiber-type及び中間型のintermediate-typeに分けられる。これらのカンナビノイドの分析手法について文献調査を行った。

3.大麻の分子生物学的手法を用いた近年の解析手法や分析事例・・・37
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)

目的:次世代シークエンサーの開発により大麻の分子生物学的研究は著しい進展を見せている。2019年には遺伝子を導入された酵母株がガラクトース添加培養で大麻が産生する須要カンナビノイドを合成することや生物工学的技術による無細胞系でのカンナビノイド合成が報告された。分子生物学的技術やマーカーの開発は植物材料としての大麻の潜在的な機能を明らかにしてきた。そこで、近年の分子生物学的解析手法を用いた大麻の研究事例や分析技術の動向を調査し情報収集を図ることとした。

4.大麻草の成分分析、海外の規制情報の把握(総合研究報告書)・・・43
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)
(3年間の研究成果の要約)

産業用大麻は世界的に市場を拡大しつつある。欧州ではTHC0.2%以下という基準のもとに栽培・生産が行われている。EU内ではその基準を満たした68栽培品種が認証されているが年度ごとの分析で基準を超える品種には栽培禁止の措置がとられている。

他方、医療用大麻に関しては国によって大麻の法的位置づけが異なっており、オランダやドイツは医療向けの大麻(乾燥大麻の花穂またはその抽出物)の使用を認めているが、ブルガリや、ルーマニア、ハンガリーは医療向け大麻のみならず大麻由来医薬品(大麻成分含有製剤・合成カンナビノイド含有製剤)も使用が許されない。

5.米国における大麻規制の現状
カリフォルニア州とコロラド州における大麻合法化の社会的影響について・・・47
舩田 正彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

目的:世界的に大麻規制を緩和する流れが生じている。大麻の使用が連邦法である物質規制法により最も厳しいカテゴリーのScheduleTとして規制している米国でも州によっては医療目的または嗜好品目的の大麻使用を合法化する動きが活発化している。そこで、米国における医療用大麻法及びレクリエーション用大麻法について調査し、各州の医療用大麻及び嗜好品としての大麻の規制の現状を比較した。さらに、大麻をはじめとする薬物の濫用防止を目的とする薬物濫用防止教育の実態を調べた。

6.大麻および関連化合物の法規制と薬物乱用防止対策に関する調査研究
(3年間のまとめ)・・・67
舩田 正彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)


7.大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用に関する調査研究・・・81
山本経之(長崎国際大学大学院薬学研究科 薬理学研究室)

目的:国内外での大麻合法化の流れの影響を受けてか、国内で大麻に関する誤った情報が流布されていることから、大麻と大麻由来の生理活性を有する植物成分(フィトカンナビノイド)の有害性と医薬品としての可能性を最近(2016年〜2019年)の報告を中心に調査し問題点を考察した。

8.危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法・・・105
鈴木 順子(北星大学薬学部薬学教育研究センター社会薬学部門)

目的:2019年現在の薬物情勢の分析・検討を行うとともに、第五次薬物乱用防止五か年戦略の目標と想定される対策等との整合性を検証する。

9.危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法
(3年間の研究総括)・・・127
鈴木 順子(北星大学薬学部薬学教育研究センター社会薬学部門)

平成29年から令和元年までの3年間に行った研究の流れと成果を各年度にわけて骨子・総括として記述している。

10.大麻乱用防止を目的とした啓発資料の作製・・・137
鈴木 勉(星薬科大学薬学部)

目的:我が国における薬物乱用事犯検挙者数では覚醒剤に次いで多い大麻は特に最近若者層の乱用が問題となっている。覚醒剤に比べて大麻に対する禁制意識が低いこともその一因であると思われ、大麻について正しい情報を普及することが喫緊の課題となっている。

1976年に当時の厚生省薬務局麻薬が大麻に関する情報を小冊子「大麻」に纏めて発行したが、その後世界の大麻事情は大きく変化してきた。そこで、氾濫する大麻に関する誤った情報を正して乱用の拡大を阻止するために大麻乱用防止教育の啓発・広報の資料として小冊子(大麻問題の現状)を作成することになった。

解説:国際条約の規制や、米国のスケジュールTという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みを使って合法化しているという視点が抜けている。

また、国連および各国の薬物政策が、懲罰的アプローチ(司法)から健康アプローチ(公衆衛生)へとシフトしている視点や非犯罪化政策と合法化政策の違いについて全く触れられていない。


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究(2020年3月)

FileName:
ダウンロード: LinkIcon 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究(2017年3月)

国連は大麻及び大麻樹脂を附表Wから削除を決定。「最も危険で医療価値なし」という分類を変更し、医療価値を認める


2020/12/03


国連麻薬委員会(CND)は、12月2日に行われた第63会期で19月1月の大麻及び大麻関連物質のWHO勧告に対する投票を実施しました。国連麻薬委員会(CND)で投票権のある国は、53カ国あり、そのうち16カ国が既に医療用大麻が合法化しています。

1.経緯

大麻草を規制している国際条約は、1961 年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1971 年の向精神薬に関する条約(向精神薬条約)、1988 年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)の3つがあります。

スケジュール・リストとは、国際的に薬物統制するシステムのことであり、WHO(世界保健機関)の ECDD(依存性薬物専門家委員会)が薬物の有害性や医療価値についての評価を行っています。

WHO(世界保健機関)のECDD(依存性薬物専門家委員会)では、最初に日本政府から提案した決議52/5(2009年)を受け、第38会期ECDD(2016年)の第三者の審査呼びかけに応じて、2010年にWHO事務局で定められた精神作用物質の審査方法の手順に基づき、2018年に事前審査、批判的審査を経て、2019年1月24日にスケジュール変更について国連にWHO勧告として通知しました。

2020年3月に投票予定でしたが、議論が不十分として延期され、複数の会議を経て、20年12月2日に投票することになりました。

2.勧告と投票の結果の概要

単一条約は、スケジュール(附表)のW>T>U>Vの順番で精神作用物質の危険性の高さを表しています。特に附表Wは、最も危険で医療価値なしという位置づけで、大麻及び大麻樹脂、ヘロインなどの20の物質が分類されています。

今回の投票では、「勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。」を賛成27、反対25,棄権1で削除が承認されました。他の5つの勧告はすべて否決されました。

これまでの60年間、単一条約附表Wは、世界の大麻禁止政策の象徴となっていましたが、これが削除されたことにより、医療目的での研究および治療応用が進むことが期待されます。

一方で、他の附表変更の伴う勧告はすべて否決されたことにより、モルヒネやコカインと同じ厳格な管理を求められる単一条約附表Tのままであり、特に変更がないことを意味します。

3.WHO勧告と日本の法律について

WHO勧告で大麻及び大麻樹脂について、

「委員会は、大麻の治療効果に関する情報と、進行中の医学的用途について考慮した。幾つかの国々では、腰痛、睡眠障害、うつ、外的障害後の痛みや、多発性硬化症などの治療に大麻の使用を許可している。委員会に提出されたエビデンスでは、大麻と大麻樹脂が、他の附表VIにリストされている物質と類似した有毒性を認められない。よって、大麻と大麻樹脂を附表VIにリストしている事は、この附表の定義と一致しない」

と記されており、この勧告を国連が承認したということは、本質的な有害性が高くないことを認め、その薬効を認めたことになります。

これによって、日本の大麻の医療使用の禁止条文となっている

大麻取締法第四条
二. 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三. 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。

の両条文は、その根拠を一部失ったことになります。

4.勧告内容と投票結果(詳細)

●大麻および大麻樹脂

勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。

賛成27 反対25 棄権1
日本国:反対         

賛成国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、クロアチア、チェコ、エクアドル、エルサルバドル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、ジャマイカ、メキシコ、モロッコ、ネパール、オランダ、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、英国、米国、ウルグアイ

反対国:アフガン、アルジェリア、アンゴラ、バーレーン、ブラジル、ブルキナファソ、チリ、中国、コートジボアール、キューバ、エジプト、ハンガリー、イラク、カザフスタン、ケニア、キルギス、リビア、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、ロシア、トーゴ、トルコ、トルクメニスタン、日本

棄権国:ウクライナ

●ドロナビノール(Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC異性体)

勧告5.2.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)及びその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する。
勧告5.2.2:ドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択することを条件に、1971年向精神薬条約の附表IIからドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を削除する。
勧告5.3.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている6つの異性体を指す)に1961年麻薬単一条約の附表Iを追加する。
勧告5.3.2:テトラヒドロカンナビノールを1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている六つの異性体を指す)を1971年向精神薬条約から削除する。

賛成23 反対28 棄権2
日本国:反対          

●大麻エキスおよび大麻チンキ

勧告5.4:大麻エキス及び大麻チンキを1961年麻薬単一条約の附表Iから削除する。

賛成24 反対27 棄権2
日本国:反対

●カンナビジオール製剤

勧告5.5:1961年麻薬単一条約の附表Iに、「主たる成分がカンナビジオールで、Δ-9-THCが0.2%以下の製剤は国際的な統制を受けない。」という脚注を追加する。

賛成6 反対43 棄権4
日本国:反対    

●大麻およびドロナビノール(Δ-9-THC)の製剤

勧告5.6:化学合成または大麻由来の製剤として製造されたΔ-9THC(ドロナビノール)を含有する製剤であって、一つまたは二つ以上の成分を含む医薬製剤として配合しており、かつ、Δ-9-THCドロナビノール)が、容易に用いうる手段により又は公衆衛生に危険をもたらすような収量で医薬製剤を回収することができないものについて、1961年麻薬単一条約の附表IIIに追加する。

追加勧告を否決(投票なし)

参考資料
https://www.unodc.org/unodc/en/commissions/CND/session/63Reconvened_Session_2020/reconvened-session-63-of-the-commission-on-narcotic-drugs.html
UNITED NATIONS MEDICAL CANNABIS VOTE: THE RESULT
https://kenzi.zemou.li/cndmonitor-results/
歴史的瞬間:国連が大麻の麻薬分類を変更(日本語)
https://hemptoday-japan.net/9880/
日本政府の立場表明(英語)
LinkIcon https://www.unodc.org/documents/commissions/CND/CND_Sessions/CND_63Reconvened/statements/02Dec_partI/Japan.pdf


FileName:
ダウンロード:大麻関連物質のWHO 国連審査の概要と結果

“Project CBD” の日本語版公式サイト、2020 年 10 月オープン


2020/10/29


世界的な CBDブームの仕掛け人“Project CBD” の日本語版公式サイトが、2020 年 10月にオープンしました。

2010 年にカリフォルニアで設立された Project CBD は、医療大麻や CBD に関して科学に基づいた最新情報を伝える啓発・教育機関として、アメリカやヨーロッパで、一般読者はもとより医療従事者や研究者も含めて絶大の信頼を集める非営利団体です。

このたび、Green Zone Japan が事務局となり、日本語版 Project CBD 公式サイトがスタートしました。医療大麻研究、臨床利用、市場の成熟度、あらゆる意味で日本の先をゆくアメリカから、最も信頼できる最新情報をお届けします。


https://projectcbd.org/ja


■公開の背景

数年前にアメリカを中心に始まった世界的な CBD ブーム。Project CBD は、まだ CBD という言葉を知る人すら少なかった 10 年前、その健康的価値にいち早く気づいたジャーナリストらが立ち上げ、CBD の市場への普及と啓発を始めた非営利団体です。

現在、世界各地で驚異的な成長を見せている CBD 市場。最新の予測では、世界の CBD 製品市場は2027 年までに 1,230 億ドル(約 12 兆 8,000 億円)に達するとされています [*1]。2019 年以降、日本でもその動きが始まっており、今後ますます市場が拡大することは確実です。

急速に成長する過渡期の CBD 市場は、製品、情報ともに玉石混交。良質な製品を手にするためには正しい情報が必要です。Project CBD のウェブサイトには、マーティン・リーを中心に経験豊かなライターによる最新の科学的知見・市場や政治の動向に関する信頼できる情報が満載です。

一方、2017 年に日本で設立され、Project CBD と同様に医療大麻や CBD についての正しい知識を日本に普及させる活動を担っている一般社団法人 GREEN ZONE JAPAN は、かねてより Project CBD との交流を続けてきましたが、このたび Project CBD 日本事務局として、日本語版公式サイトを翻訳・運営することになりました。市場の拡大に先駆けて、科学的エビデンスに基づいた最新かつ正確な情報をお伝えします。

[*1]参照:Global CBD Oil & CBD Consumer Health Market 2020
https://bit.ly/3eedYdu


■Project CBD Japan の特徴

1. Project CBD の公式日本語版サイト
2. CBD ユーザー、輸入・販売企業から医療従事者・研究者まで、幅広い読者を対象とした無料コンテンツ
3. CBD に関する最新かつ正確な情報を提供

■今後の展開

ロンチ時には、10 年にわたる Project CBD の活動の中で集積されたコンテンツの中から日本の消費者・業界関係者が今最も必要としている情報を抜粋してお届けします。ロンチ後は、アメリカから届く最新のアップデートされた情報を継続的に翻訳してお届けし、健全な CBD 市場の育成と業界関係者の後方支援援を目指します。

また Twitter や Instagram、Facebook も併設して情報の発信を行う他、Project CBD Japan 主催のセミナーや講演会も予定しています。

Facebook: https://www.facebook.com/ProjectCBDJapan
Twitter:@projectcbdjapan
Instagram: @projectcbdjapan

運営:一般社団法人 GREEN ZONE JAPAN

10月25日(日)16時より開催 MM411×日本臨床カンナビノイド学会 合同ウェビナー


2020/10/22


MM411 Inc.(MM411)は、MM411日本サイト開設にあたり、日本臨床カンナビノイド学会との合同ウェビナーを開催いたします。

特に、最近日本臨床カンナビノイド学会の会員になった方、または今後会員になりたい方はぜひご参加いただければと思います。

●2020年10月25日(日) 16:00pm〜17:00pm 日本時間(UTC+0900)

テーマ:「カンナビノイド医学基礎コース」開講記念合同ウェビナー
場所 :ウェビナー形式(WEBINAR JAM)
講師 :新垣実(日本臨床カンナビノイド学会理事長、(医)新美会新垣形成外科院長)
参加費:無料
対象者:医療従事者の方から一般の方まで、どなたでも参加可能。
内容 :1) カンナビノイド医学(医療用大麻)とは (10分)
    2) 学会設立とこれまでの取り組み (10分)
    3) 世界との差、25年の遅れを取り戻すには (5分)
    4) カンナビノイド医学基礎コースについて (10分)
    5) チャット形式での質疑応答 (20分)
主催 :MM411 Inc.
協力 :日本臨床カンナビノイド学会

参加登録はこちらへ
https://event.webinarjam.com/register/1/5o577u3

「カンナビノイド医学基礎コース」について
https://medicalmarijuana411.jp/

大麻草の責任ある合法規制のための20の原則について


2020/10/02


大麻草は、アルコールとタバコを除いて、世界で最も広まっている薬物です。古い汚名(スティグマ)が崩れ、50カ国以上で医療用又は娯楽用の合法的市場が形成しつつあります。

国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)は、米国の一部やカナダでの大麻草の合法規制は、変革のための強力なツールであるが、銀の弾丸(一発解決できる方法)ではないことを指摘しています。合法規制は、欧米企業の利権の取り込み、対麻薬戦争の弊害の救済措置がないこと、大麻以外の薬物の扱いについて課題があり、これらへの対処が求められています。

大麻草の医療利用、成人用の非医療利用において合法規制を考える上での、20の原則を提案しています。

その原則は、薬物使用者の健康と人権の保護、懲罰的政策の弊害を修復するための社会正義の推進、合法的市場における公正な貿易、大麻以外の薬物の個人的使用の罰則の撤廃、ジェンダーに配慮したアプローチをカバーしています。

急速に立ち上がる合法的な大麻市場に対して、政策立案者が議論を深めるためのツールとなっています。日本では馴染みのない「非犯罪化」「合法化」「合法規制」という用語の意味を確認しながら、世界各地で社会実験が進む合法規制のあり方について、多様な論点があることを知るための原則となっています。

●目次

エグゼクティブサマリー
序章
薬物使用者の健康と人権

原則1 薬物使用者の権利を保護するために合法規制を利用する
原則2 公衆衛生を保護し、ハームリダクションアプローチを採用する
原則3 個人の自主性、自由、プライバシーの促進
原則4 アクセスしやすく、ニーズに基づいた合法的市場の創出

社会正義

原則5 政策決定プロセスに影響を受けるコミュニティを参加させる
原則6 インフォーマル市場に関与する者が合法的に移行できるようにする
原則7 中小規模の栽培コミュニティの参加を優先する
原則8 賠償、満足及び再発防止措置の策定
原則9 大麻の伝統的な文化的、薬用、宗教的用途の保護

グローバルなサプライチェーンを通じた包括的かつ公平な貿易政策

原則10 最も恵まれない人々に焦点を当てたインクルーシブなビジネスモデルを優先する
原則11 労働者の権利を擁護し、公正な労働慣行を促進する
原則 12 認証制度を通じた価値の最大化と権利の保護
原則13 世界的な薬物管理体制がもたらす国際貿易の課題に取り組む
原則14 気候を保護し、環境に配慮した持続可能な活動を推進する

合法的市場外での薬物活動への法的対応

原則15 個人的な薬物使用に関連した犯罪に対するすべての処罰を終了する
原則16 その他の薬物活動に対する刑事司法の対応が厳密に比例していることを保証する

ジェンダーに配慮したアプローチ

原則17 大麻栽培に携わる女性の特定のニーズに取り組む
原則18 薬物を使用する女性のための適切な保健サービスへのアクセスを確保する
原則19 法曹市場のあらゆる側面におけるジェンダーの不平等を終わらせる

学習と規制の改善

原則20 データを収集し、市場を監視し、コミュニティからのフィードバックを収集する


●20の原則で使われている用語集「非犯罪化」「合法化」「合法規制」

非犯罪化とは、特定の薬物行為-通常は個人的な薬物使用と個人的使用のための所持や栽培のような活動-に対して、刑務所などの刑事罰を取り除くことを意味する。非犯罪化は、合法化や合法規制とは独立して実施することができ、また頻繁に実施されている。非犯罪化は、懲罰的な薬物政策を終わらせ、健康へのアクセスを確保するために必要なステップである。現在、約30カ国が、個人的な薬物使用および付随的な活動の公式または非公式な非犯罪化の何らかのモデルを採用している。

合法化とは、通常は医薬品の製造、栽培、販売など、医薬品の供給に関連する特定の薬物活動を合法化するプロセスである。合法化は一回限りの介入であり、いったん実施された薬物市場がどのように機能するかを説明するものではない。

合法規制とは、自動車の運転からアルコールやスケジュール薬物に至るまで、リスクの高い合法化された製品や行動の市場をコントロールするために、国家が確立した規則の枠組みを指す。合法化は薬物の合法市場を作るという新規性を強調しているが、合法規制は、国家が何世紀にもわたって危険な行動のコントロールに成功してきたことを示している。合法化とは反対に、合法規制は継続的で反復的なプロセスであり、スケジュール薬物の合法的市場を作るために現時点で利用可能な政策の選択肢全体を明らかにするものである。

詳しくは、下記のPDFファイルをダウンロードして下さい。


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 大麻草の責任ある合法規制のための20の原則(2020年9月)

FileName:
ダウンロード: LinkIcon Principles for the responsible legal regulation of cannabis

カンナビジオール(CBD)の批判的審査報告書とWHO勧告

 

2020/09/21


日本政府から提案のあった2009年の国連麻薬委員会(CND)決議52/5(注1)により、大麻草の健康への影響が見直されていないことを指摘し、世界保健機関・依存性薬物専門家委員会(WHO/ECDD)に最新の報告書を提出するように要請がありました。

WHOは科学的根拠に基づいたプロセスで薬物審査を実施するために、ECDDメンバーが従うべき手順である「国際統制のための精神物質のWHO審査ガイドライン」(注2)という文書を2010年に採択しました。

ガイドラインによると、審査手続及び薬物評価は、事前審査(ピア・レビュー)と批判的審査(クリティカル・レビュー)で構成され、ECDD会議からの成果は、“WHO Technical Report Series Collection”の報告書で公式発表となります。

カンナビジオール(CBD)は、WHO/ECDDの2016年11月の第38会期報告に基づいて、審査手続きのプロセスに入り、2017年11月の第39会期に事前審査報告書が発行(注3)され、第39会期報告書に記載されました(注4)。

その後、WHO/ECDDの2018年6月の大麻及び大麻関連物質のみに焦点をあてた第40会期にカンナビジオール(CBD)批判的審査報告書を発行(注5)して、国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)へのレター(2018年7月23日)にて、「純粋なCBDであると考えられる製剤は、国際薬物統制条約の範囲内でスケジュールにすべきではないと勧告した。」ことを示しました(注6)。

ここでは、純粋なCBD、つまりCBDという物質そのものの依存及び乱用の可能性評価を行い、国際的な薬物条約の規制対象外であることが確認されたのです。

一方、CBDオイルやCBDベイプペンなどの大麻草由来のCBD製品は、第40会期WHO/ECDDに引き続き、2018年11月の第41会期の「大麻抽出物」「大麻チンキ」の枠組みで批判的審査が行われました(注7)。その結果、国連事務総長(アントニオ・グテーレス氏)へのレター(2019年1月24日)にて、次のような勧告を示した(注8)。

カンナビジオール製剤
? 勧告5.5:委員会は、1961年麻薬単一条約のスケジュールIに、「カンナビジオールが大部分を占め、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールを0.2%以下含む製剤は国際的な統制下としない。」という脚注を追加することを勧告した。
(参考:第40会期WHO/ECDD報告書:注9、第41会期WHO/ECDD報告書:注10)

よく間違えるのは、WHO勧告のTHC濃度0.2%は「製品基準」であって、大麻草の品種基準ではありません。例えば、米国やカナダでのヘンプ(産業用大麻)は、THC濃度0.3%以下をヘンプとし、それ以上をマリファナとしています。このときの0.3%は、農作物としての品種基準であって、CBDオイルなどの製品基準ではありません。

また、日本語で「製剤」とすると、医薬品又はその原料組成物の意味となりますが、国連の定義では、大麻草由来の成分を抽出した調整物を示しており、より一般的な製品も含まれています。

薬物の危険性を等級別(スケジュール)で管理している米国などでは、すでに食品や雑貨として流通しているCBDオイルが、「CBDオイル=大麻抽出物=スケジュールT=最も乱用する危険性があり、医薬効果なし」と機械的に当てはめています。そこから生じる様々な混乱は、すべて麻薬単一条約のスケジュールT/W規制に行き当たります。

麻薬単一条約のスケジュールの見直しの科学的根拠が、これまで紹介してきたWHO/ECDDの事前審査報告書、批判的審査報告書、WHO勧告となります。

長年、慣習的に大麻草を麻薬植物として撲滅運動を世界的にキャンペーンしてきた国際条約の実務上の変更を促すWHO勧告は、国際政治的に大きなインパクトがあります。

そのため、2020年3月の国連麻薬委員会(CND)では、大麻及び大麻関連物質のWHO勧告に対する投票(53カ国)を延期しました。それぞれの勧告項目で意見の不一致が見られることが国際的に明らかになったのです(注11)。

次回の投票となる国連麻薬委員会(CND)は、2020年12月3-4日に予定されています(注12)。

CBD製品のTHC含有量を0.2%まで認めるのかどうか、
それが、今年12月までに審議され、投票されるのです。

注1:
「不正目的のための大麻種子の使用に関するあらゆる側面の探求:改訂草案/アゼルバイジャンと日本」
Guidance on the WHO review of psychoactive substances for international control
https://www.who.int/publications/i/item/978-92-4-150055-5 
注3:
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=73799
注4:WHO Expert Committee on Drug Dependence Thirty-ninth report
WHO Technical Report Series No.1009 March,2018 p.41-43,46http://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/ecdd/TRS1009-39th-meeting/en/
注5:Critical review: Cannabidiol
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/ecdd_40_meeting/en/
日本語版: 当ホームページの下方のファイルをダウンロードして下さい。

注6:
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=83062
注7:The 41st ECDD technical documents / Extracts and tinctures of cannabis
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/ecdd-41-st-meeting/en/  
注8:Meeting outcomes / Cannabis: Recommendations
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/ecdd-41-st-meeting/en/ 
日本語版:
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=88243
注9:WHO Expert Committee on Drug Dependence Fortieth report WHO Technical Report Series No.1013  2019 p.13-17 
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/279948/9789241210225-eng.pdf?ua=1 
注10:WHO Expert Committee on Drug Dependence forty-first report WHO Technical Report Series No.1018  2019 p.34-55 
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/325073/9789241210270-eng.pdf?ua=1 
注11:

10年前に国連は、大麻などの薬物は、懲罰的アプローチから人権に基づく公衆衛生アプローチを勧告


2020/09/16


この報告書は、2010年の国連人権理事会及び第65会期国連総会に提出された「達成可能な最高水準の身体的及び精神的健康を享受するすべての者の権利に関する特別報告者の報告書」の和訳版です。国連人権理事会で報告された薬物問題と人権問題に関して包括的に取り上げた初めての報告書です。大麻などの薬物使用者には、有罪判決や刑罰を中心とした懲罰的アプローチから人権に基づく公衆衛生アプローチを勧告しました。2011年の薬物政策国際委員会(The Global Commission on Drug Policy)の報告書と共に、国際的に薬物の非犯罪化/合法化が進展するきっかけになりました。

●報告書の概要(全文)

現在の国際的な薬物統制システムは、ほとんど法執行政策と刑事制裁によって、薬物のない世界を作ることに焦点を当てている。しかしながら、このアプローチが失敗していることを示す科学的根拠が増えつつあるが、これは主に薬物使用及び依存の現実を認めていないためである。薬物は個人の生活や社会に有害な影響を与えるかもしれないが、この過剰な懲罰的アプローチは、定められた公衆衛生の目標を達成しておらず、数え切れないほどの人権侵害を引き起こしている。

薬物使用者は、刑事罰の恐れがあるためにサービスへのアクセスが妨げられたり、医療へのアクセスが完全に拒否されたりすることがある。犯罪行為や過剰な法執行行為は、健康増進の取り組みを損ない、汚名(スティグマ)を着せ、薬物使用者だけでなく全住民がさらされる健康リスクを増大させる。一部の国では、薬物使用者を投獄したり、強制的な治療を課したり、あるいはその両方を行っている。また、現在の国際的な薬物統制体制は、必要不可欠な医薬品へのアクセスを不必要に制限しており、これは健康に対する権利の享受を侵害している。

麻薬に関する単一条約 (1961年) の前文に述べられているように、国際的な薬物統制体制の第一の目標は「人類の健康と福祉」であるが、薬物の使用及び所持を規制する現在のアプローチはその目標に反している。薬物使用に伴う害を軽減するための介入 (ハームリダクション・イニシアティブ) の広範な実施と、薬物統制を管理する特定の法律の非犯罪化は、薬物使用者と一般住民の健康と福祉を明らかに改善するであろう。さらに、薬物を使用する人々の権利が尊重され、保護され、満たされることを確保するために、国際連合の諸機関及び加盟国は、薬物統制に対する健康に対する権利のアプローチを採用し、システム全体の一貫性とコミュニケーションを奨励し、指標及びガイドラインの使用を組み入れ、特定の違法薬物に関する新たな法的枠組みの開発を検討すべきである。 

●報告書目次

I.はじめに   p.4
II.健康に対する権利及び国際的な薬物統制  p.5
III.健康に対する権利の実現に及ぼす薬物統制の影響  p.8
A.サービス及び治療へのアクセスの抑止  p.8
B. 差別と汚名(スティグマ)  p.9
C. 薬物使用時に増えるリスク  p.10
D. 社会的弱者や社会から取り残されたコミュニティへの過度な影響 p.10
IV.薬物依存及び健康権侵害に対する強制的な取扱い p.11
V.規制薬物へのアクセス p.13
VI.薬物統制に対する人権に基づくアプローチ p.16
A. ハームリダクションと科学的根拠に基づく治療 p.16
B. 非犯罪化及び刑罰廃止 p.20
C. 人権指標及び指針の利用 p.22
D. 薬物統制のための代替的な規制の枠組み p.23
VII. 勧告 p.24

●勧告(全文)
加盟国は、次のことを行うべきである。

?薬物使用者、特に投獄されている人々に対して、あらゆるハームリダクションの方法(国連エイズ合同計画(UNAIDS)が箇条書きにした)と薬物依存治療サービス、特にオピオイド補充療法が利用可能であることを確保する。
?薬物の所持及び使用を非犯罪化するか、又は刑罰を軽くする。
?薬物使用者への必須保健サービスの提供を禁止する法律や政策を廃止又は大幅に改革し、人権上の義務を遵守するために規制薬物に関する法執行イニシアティブを見直す。
?管理された必須医薬品へのアクセスを拡大するために、法律、規制、政策を改正する。

国連の薬物統制機関は、次のことを行うべきである。

?法律、政策及びプログラムにおける薬物統制への対応に人権を統合する。
?薬物使用及び市場の影響並びに薬物統制の政策及び計画に関心を有する国連諸機関の間の一層のコミュニケーション及び対話を奨励すること。
?国際的な人権関係者が国際的な薬物政策の策定に貢献できる独立した委員会のような恒久的な機構の創設を検討し、薬物使用者とその居住地域の健康と人権を保護することを主要な目的として、国内の実施状況を監視する。
?人権に基づく薬物統制のアプローチをとることについて関係者に指示を与えるガイドラインを策定し、薬物統制と健康に対する権利に基づく指標を考案し、公表する。
?たばこ規制枠組み条約のようなモデルに基づいて、長期的な、代替的な薬物統制の枠組みの創設を検討する。


●国連システムにおける薬物問題と人権問題の報告書(英語版の原文)

2010年 達成可能な最高水準の身体的及び精神的健康を享受するすべての者の権利に関する特別報告者の報告書A/65/255 
https://undocs.org/A/65/255
 
2015年 世界の薬物問題が人権の享受に与える影響に関する研究 国連人権高等弁務官報告書A/HRC/30/65 → 健康、刑事司法、差別、児童、先住民などの点から調査し、翌年の国連薬物特別総会UNGASS2016へ提供
https://undocs.org/A/HRC/30/65
 
2018年 世界の薬物問題に効果的に取組み、対処するための共同コミットメットの実施と人権について 国連人権高等弁務官報告書 A/HRC/39/39
https://undocs.org/A/HRC/39/39


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 2010年健康を享受するすべての者の権利に関する特別報告書A_65_255

薬物使用障害の治療に関する国際基準改訂版(2020年3月)実地試験の結果を取り入れる

 

2020/09/08


この報告書は、世界保健機関(WHO)及び国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2020年3月に発行した“International standards for the treatment of drug use disorders matters: revised edition incorporating results of field-testing”の仮訳版です。初版は、2016年に発行されており、その改訂版となります。持続可能な開発のための2030アジェンダ「目標3.5:麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する」の基準となる基礎資料としてご利用いただければと思います。

第1章 序文

1.1 国際基準の目的と対象者
1.2 基準の策定
1.2 薬物使用、薬物使用障害および治療ニーズ

第2章 薬物使用障害の治療のための主要な原則と基準

原則1 治療は、入手可能で、利用しやすく、魅力的で、適切であるべきである
原則2 治療サービスにおける医療倫理の確保
原則3 刑事司法制度と保健・社会サービスとの効果的な連携による薬物使用障害の治療の推進
原則4 治療は科学的根拠に基づいて行い、薬物使用障害者を有する個人の特定のニーズに対応すべきである
原則5 集団グループの特別な治療・ケアニーズへの対応
原則6 薬物使用障害の治療サービスとプログラムの良好なクリニカルガバナンスを確保
原則7 治療サービス、政策、手続きは、統合された治療アプローチをサポートすべきであり、補完的サービスへのリンクは、常にモニタリングと評価を必要とする

第3章 薬物使用障害の治療体制 

3.1 サービス提供の体制レベル
3.2 治療体制の組織
3.3 治療体制の計画と資金調達
3.4 サービス組織のモデル
3.5 効果的な治療体制:結論

第4章 治療状況、治療法および介入

4.1 治療状況
4.2 治療法と介入

第5章 特別な治療とケアの必要性がある集団

5.1 薬物使用障害のある妊婦
5.2 薬物使用障害の小児および青年
5.3 刑事司法制度に接する人々の薬物使用障害

参考文献


序文(一部抜粋)

本基準は、薬物使用障害に対する治療サービス及び介入の政策策定、計画、資金提供、提供、モニタリング及び評価に関与するすべての人々を対象としている。

世界保健機関(WHO)は、国連薬物犯罪事務所(UNODC)と共同で作業し、基準の包括性、妥当性、有用性、実現可能性、評価能力を評価し、向上のための分野を特定するために、基準を実地試験した。実地試験で使用される方法には、調査、フォーカスグループ、専門家レビュー、及び試験サービスの基準への準拠が含まれた。現地試験は、オーストラリア、ブラジル、チリ、中国、インド、インドネシア、イラン、メキシコ、タイなど、医療体制の異なる国で実施した。1200人を超える保健専門家が実地試験調査に参加し、実地試験に参加した国の43人の専門家が基準案について詳細なフィードバックを提供した。

薬物使用障害に対する認識は、政策立案者、医療専門家及び一般の人々の間で近年変化している。薬物使用障害は、心理社会的、環境的、生物学的決定因子を有する複雑な健康状態であり、様々な施設や組織が協力して集学的、包括的、公衆衛生志向の対応を必要とするという認識がより深まっている。「自ら獲得した悪習慣」ではなく、薬物依存は、社会的不利や敵意を含む生物学的及び環境的要因の長期的な相互作用の結果であり、人々の健康及び公衆の安全性を改善するために予防し、適切に対処することができるという理解が高まっている。

残念ながら、薬物使用障害に関する古い見解は世界の多くの地域で持続している。薬物使用障害を有する個体、それらの家族、及びそれらと一緒に働く専門家は、一般に、非難及び差別に直面する。これは、質の高い治療介入の実施を著しく危うくし、治療施設の開発、保健専門家の訓練、ならびに治療及び回復プログラムへの投資を損なっている。

HIV感染症や高血圧などの慢性的な医学的問題と同様に、薬物や他の物質使用障害も公衆衛生システムの中で管理するのが最善というエビデンスが明らかになっている。それにもかかわらず、医療システムに薬物使用障害の治療を含めるという考え方は、科学を政策に移行すること、つまりはエビデンスに基づく臨床実践が遅れており、依然として抵抗に直面している。

いくつかの国では、薬物使用障害は、依然として、主として公共の安全及び刑事司法の問題とみなされており、司法又は防衛省の関連機関は、しばしば保健省又は他の公衆衛生機関の監督又は関与なしに、サービスを提供することによって薬物使用障害への対応を取り扱う。法執行戦略と排他的手段は、薬物や他の薬物使用障害に対する効果的な対応ではなく、公的資金を費やす費用効果的な方法でもない。

薬物依存を多因子性の健康障害と認める生物心理社会的治療戦略は、医学的アプローチ及び心理社会的アプローチを用いて治療可能であり、薬物関連のハームリダクションに役立つ。これにより、患者の健康、幸福、回復が改善されるとともに、薬物犯罪が軽減され、公衆の安全と有益なコミュニティの成果(ホームレス、社会福祉要件、失業など)が向上する。


大麻については、下記のように取り上げられている

4.2.3 エビデンスに基づく薬理学的介入
大麻使用による障害の管理のための薬理学的介入 (本文65頁参照)

現在までのところ、大麻使用障害に対する認可された薬理学的治療はなく、心理社会的治療が依然として主要な方法である。大麻離脱症候群の場合、必要に応じて対症療法を用いて離脱症状を管理することができる。しかしながら、臨床医は、長期の使用は耐性及び薬物誤用のリスクを高める可能性があるため、精神作用薬を短期間のみ処方し、治療反応を綿密にモニタリングすべきである。

世界保健機関(WHO)勧告
(精神保健専門家のいない保健医療の場における精神・神経・物質使用障害のための mhGAP(メンタルヘルス・ギャップ・アクション プログラム)介入ガイド、2.0版. WHO, 2016)

大麻依存のマネジメントには、認知行動療法(CBT)または動機づけ強化療法(MET)または家族療法に基づく心理社会的介入を提供できる。

原文は、こちらのページよりPDFファイルでダウンロードできます。
https://www.who.int/publications/i/item/international-standards-for-the-treatment-of-drug-use-disorders



FileName:
ダウンロード: LinkIcon 薬物使用障害の治療に関する国際基準改訂版(2020年3月)

医療用大麻に関する世界医師会(WMA)声明(後編)


2020/08/27


推奨事項


10.大麻研究

10.1  大麻草の健康への影響と治療効果に関する質の低いエビデンスを考慮すると、政府が医療目的の医療用大麻を合法化するかどうかを決定する前に、大規模なサンプルを含むより厳密な研究が必要です。比較対照者は、既存の標準治療を含めなければなりません。そのような研究の拡大を支援すべきです。研究では、大麻使用による公衆衛生、社会、経済への影響も調べる必要があります。

10.2  政府は、適切に計画された科学的調査研究が大麻草の健康への影響及び治療上の利益に関するエビデンス基盤を拡大することを可能にするために、研究用大麻の入手及び所持を規制する法律の見直しを検討することができます。


11.大麻草が医療目的で合法化されている国では、次の要件を適用する必要があります。

11.1 生産者及び製品の要件:

11.1.1 大麻植物製品の提供は、1961年3月30日に採択された麻薬に関する単一条約 (同条約の生産、貿易及び流通に関する規則を含む) に準拠したものでなければならない。したがって、医療のために提供される製品に含まれる大麻草は、条約の要件に従って提供され、取り扱われなければならないことが不可欠です。

11.1.2 要求事項は、大麻植物の栽培及び標準化のための適切な品質要求を満たすことを含まなければなりません。製造される大麻植物製品は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール (THC) 及びカンナビジオール (CBD) の含有量やこれらの効力表示など、成分の特定の表示がなければなりません。

11.2 医療目的の大麻の処方及び調剤の要件

11.2.1 大麻草は、最高レベルのエビデンスと国の規制枠組みに従って、認可された医師/処方者によって処方されなければなりません。

11.2.2 大麻製品を治療に使用する前に、承認された従来の薬剤による治療を行うことが推奨されます。

11.2.3 各医師は、入手可能な最良のエビデンスと国ごとに登録された適応症に従って、大麻製品の治療について責任を負い、決定を下さなければなりません。

11.2.4 医療目的の大麻草は、国の規制枠組みに従って薬局または認可された調剤業者のみで調剤しなければなりません。

11.2.5 医療用大麻の不正使用を防止するための効果的な管理措置を講じなければなりません。

11.2.6 大麻使用の普及率と利用パターンの傾向を監視する公衆衛生監視システムが必要です。


12.大麻草に関する政策と法律を検討する際には、政府、医師会、政策立案者、その他の保健関係者は、利用可能なエビデンスに基づいて、健康への影響と治療効果を強調して検討するとともに、規制上の能力、費用、社会的価値、国の社会的状況、公衆衛生と安全性が広範な人口に及ぼす影響など、様々な状況的要因を認識すべきです。



原文:WMA STATEMENT ON MEDICAL CANNABIS
https://www.wma.net/policies-post/wma-statement-on-medical-cannabis/

世界医師会(WMA)とは?
世界医師会(WMA)は、医師を代表する国際機関です。1947年9月17日に設立され、27か国の医師がパリのWMAの第1回総会で集まりました。この組織は、医師の独立性を確保し、医師による倫理的行動とケアの可能な限り最高の基準に常に取り組むために設立されました。WMAは、可能な限り最高の医療倫理基準を推進する組織として、宣言、決議、声明を通じて医師に倫理的ガイダンスを提供しています。資金はそのメンバーの毎年の寄付によって賄われており、現在では114の各国の医師会に増えています。
https://www.wma.net/ 

<解説>
医療用大麻に関する世界医師会(WMA)声明については、17年時点での評価であり、19年1月のWHO/ECDD(世界保健機関/依存性薬物専門家委員会)の大麻及び大麻関連物質の科学的評価勧告、カナダの18年11月の成人用大麻の合法化のベースとなるエビデンス、ニュージーランドの20年10月の成人用大麻に関する国民投票のベースとなるエビデンスなどの声明後のエビデンスについては考慮されていません。

また、この世界医師会声明への支持があるため、ニュージーランドの20年10月の成人用大麻に関する国民投票に対するニュージーランド医師会は、合法化反対の立場にあると推察されます。

但し、世界各国における医療用大麻および成人用大麻の合法化に対して、世界医師会が共通認識を示したことは大いに意義があります。

医療用大麻に関する世界医師会(WMA)声明(前編)


2020/08/27


2017年10月シカゴ、第68回総会で採択

前文
1.大麻草とは、世界各地に自生し、「マリファナ」「ダガ」 「ウィード」 「ポット」 「ハシッシュ」「ヘンプ」など多くの別名で知られている植物、カンナビス・サティバ (Cannabis sativa) の精神活性剤を指す総称です。

2.医療用大麻とは、専門家の監督の下で疾患の治療または症状の緩和を目的として、天然または合成の大麻草及びその成分を使用することをいう。しかしながら、合意された定義はない。

3.嗜好用大麻とは、医療上の必要性に関係なく、感情、知覚、感情を変化させる方法で精神状態を変えるために大麻草を使用することをいう。

4.この世界医師会(WMA)の声明は、医療用大麻の合法化についての見解を示し、嗜好用大麻に関連する有害な影響を強調することを目的としています。

5.嗜好用大麻の使用は、世界中で重要な健康と社会問題です。大麻草は世界で最も一般的に使用されている違法薬物です。世界保健機関(WHO)の推定によると、世界人口の2.5%にあたる約1億4700万人が大麻草を使用しているのに対し、コカインは世界人口の0.2%、アヘンは0.2%が使用しています。

6.世界医師会(WMA)は、精神疾患、致命的な自動車事故、依存症リスクの増加、ならびに言語学習、記憶及び注意における欠陥のような重篤な有害な健康影響のために、嗜好用大麻の使用に反対します。18歳未満で大麻草を使用すると、精神障害のリスクが2倍になります。お菓子や 「濃縮物」 のような食品に含まれる大麻草やその形態の入手容易性は、子どもや青少年に非常に魅力的であり、集中的な警戒と取り締まりを必要とします。

7.各国の医師会は、嗜好用大麻の使用を予防及び削減するための戦略を支援すべきです。

8.医療用大麻の使用に関するエビデンス(科学的根拠)

8.1 カンナビノイドは、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)の化学成分であり、類似した構造的特徴をもちます。化学成分の一部は、ヒトのカンナビノイド受容体に作用します。概念的には、それらの受容体を活性化するカンナビノイド は、他の内因性神経伝達物質 (内在性カンナビノイド) と同様に、(1)人体内に自然に存在します。(2)大麻植物 (植物性カンナビノイド) に天然に存在します。または(3)合成カンナビノイド[ドロナビノール、マリノール (TM)]、または関連化合物、ナビロン [セサミットTM] 、または植物カンナビノイドの抽出物(ナビキシモール [サティベックスTM])のいずれかを含有する医薬製剤があります。

8.2 植物性カンナビノイドは、天然のカンナビス・サティバに存在するデルタ‐9‐テトラヒドロカンナビノール (THC)が 、主要な生理活性カンナビノイド及び主要な精神活性成分であり、カンナビジオール (CBD) は二番目に豊富にあります。CBDは有意な精神活性特性を欠くが、鎮痛及び抗けいれん特性を有する可能性があります。

8.3 ヒトのエンド・カンナビノイド・システムは大麻草の精神活性作用を媒介すると考えられており、食欲、痛覚、気分、記憶などの様々な生理学的プロセスに関与しています。エンド・カンナビノイド・システムに影響する重要な医学的及び薬理学的治療の可能性は広く認識されています。

8.4 科学文献で報告されている大麻草の医学的有益性は、世界的に広く議論されています。大麻草は、多発性硬化症における重度の痙縮、細胞毒性薬による慢性疼痛、吐き気及び嘔吐、ならびにAIDSに関連する食欲不振及び悪液質の治療に使用されています。エビデンスによると、ある種のカンナビノイドは慢性疼痛の治療に、特にオピオイド耐性及び禁断症状の発現を回避できる場合に、オピオイドの使用の代替または補完として有効であることが示唆されています。医療用大麻を使用することを支持するエビデンスは、質が低いか中程度であり、一貫性がありません。その一貫性のなさは、部分的に大麻禁止に起因する可能性があります。一部の国では、違法物質に分類されているため、安全で質の高い臨床研究が制約されています。

8.5 大麻使用による短期的な有害作用は十分に報告されています。しかしながら、長期的な有害作用、特に依存症及び心血管疾患のリスクについてはあまり理解されていません。また、青少年や妊娠中または授乳中の女性のような脆弱な人々に対する公衆衛生上の重大な懸念もあります。

8.6 医療上の有益性を示すエビデンスは乏しいが、一部の国では医療用大麻が合法化されています。他の国では、医療用大麻は禁止されていたり、議論されたりしています。

9. 医療専門家は、大麻草が効果的な治療法である可能性がある患者に対する倫理的責任と、適用される法律の遵守とのバランスを取ろうとしており、医学的・法的ジレンマに陥ることがあります。このジレンマは、大麻使用が医学的に有益である可能性のある患者とそうでない可能性のある患者の両方で明らかになり、医療専門家に大麻処方するよう圧力をかけます。

後編に続く

薬物使用防止に関する国際基準(第2版)の和訳を公表


2020/08/22


この報告書は、世界保健機関(WHO)及び国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2018年11月に発行した“International Standards on Drug Use Prevention: Second Updated Edition”の仮訳版です。初版は、2013年に発行されており、その改訂版となります。持続可能な開発のための2030アジェンダ「目標3.5:麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する」の基準となる基礎資料としてご利用いただければと思います。

はじめに(抜粋)

この基準の初版は2013年に発行され、効果的な戦略を特定し、子どもと若者、特に最も社会から取り残された貧困層の人々が、成人期と高齢期になっても健康で安全に成長し続けることを確実にすることを目的として、世界レベルでの薬物使用防止のエビデンス(科学的根拠)をまとめたものである。

加盟国及び他の国内及び国際的な利害関係者は、このツールの価値を認識し、この基準は、科学的根拠に基づく予防の適用範囲及び質を改善するための有用な科学的根拠として、何度も認められた。さらに、2015年には、国連加盟国は、2030年までに達成される持続可能な開発目標及びターゲット3.5の中で、物質乱用の防止と治療を強化することを約束した。2016年4月、世界の薬物問題に関する国連特別総会は、バランスのとれた健康を中心としたシステム・アプローチにより薬物使用と薬物使用障害に対処する新たな時代の到来を告げた。

人々の健康と福祉へのこの新たな強調の文脈において、UNODCとWHOは力を合わせ、この最新版第2版を発表することを喜ばしく思う。第1版の場合と同様に、本基準は、最近のシステマティック・レビューの概要に基づいて、現在入手可能な科学的根拠を要約し、薬物使用の予防効果を改善することが判明している介入と政策を記述している。さらに、この基準は、効果的な国の予防システムの主要な構成要素と特徴を特定している。本研究は、薬物使用防止の様々な側面に関する他の基準やガイドラインを策定してきた多くの他の組織(例:EMCDDA、CCSA、CICAD、CP、NIDA )の研究を基礎として、認識し、補完するものである。

内容(目次より抜粋)

1.予防とは、子供の健康で安全な発達を図ること
2.向精神薬使用の防止
3.予防科学
4.国際基準

I.薬物予防介入と政策

幼年期及び幼少期の初期
幼少期の中期
青年期初期
青年期及び成人期

II.さらなる研究が必要な予防問題

放課後の活動、スポーツその他の計画的な余暇活動
医薬品の非医学的使用の防止
特に危険にさらされている子どもと若者を対象とした介入と政策
条約に基づいて規制されていない新しい精神作用物質の使用の防止
メディアの影響

III.効果的な予防システムの特徴

科学的根拠に基づく介入・政策の範囲
支援策と規制の枠組み
研究・科学的根拠に基づく強力な根拠
様々なレベルの様々な部門
デリバリーシステムの強固なインフラ
持続可能性


内容(本文より抜粋)

<専門家の協議に基づき、青年期初期予防教育において、効果や有効性のあるもの>
インタラクティブな方法を使用する
週1回の一連の構造化されたセッション(通常は10〜15)を通じて提供され、多くの場合、複数年にわたるブースターセッションを提供
トレーニングを受けたファシリテータ(訓練を受けた同僚も含む)が提供 
特に対処、意思決定、抵抗力のスキル、特に物質使用に関連したスキルを含む、個人的及び社会的スキルの広い範囲を練習し、学ぶ機会を提供する
物質使用に関連するリスクの認識に影響を与え、直ちに影響が出ることを強調する
物質使用に関連する規範的性質及び期待に関する誤解を払拭する

<専門家の協議に基づき、青年期初期予防教育において、効果や有効性がないもの>
講義などの非対話な方法を主要な提供戦略として使用すること
情報提供のみ、特に恐怖の覚醒
構造化されていない対話セッションに基づくこと
自尊心と情動教育の構築のみに焦点を当てること
倫理的/道徳的な意思決定または価値のみに対処すること
元薬物使用者を証言として用いること

原文は、こちらのページよりPDFファイルでダウンロードできます。
https://www.unodc.org/unodc/en/prevention/prevention-standards.html 


FileName:
ダウンロード: LinkIcon 2018年11月薬物使用防止に関する国際基準(第2版)

合法化した州:米国の大麻法的規制


2020/08/14


この報告書は、トランスフォーム薬物政策財団が、2020年6月に発行した“Altered States: Cannabis regulation in the US ”の仮訳版です。

序文(抜粋)

コロラド州とワシントン州は2012年に成人用・非医療用の大麻草を法的規制したため、米国の9州がこれに追随し、さらなる州が追随するようになった。多くの人が合法の医療用大麻の恩恵を受けているが、それは我々の報告書の焦点ではない。一連の急速な変化は、米国が大麻草の法的規制への世界的な変化の最前線に位置している。

州レベルでの変化にもかかわらず、大麻草の栽培、所持および販売は、連邦法では依然として違法である。これは、州が独立して行動していることを意味し、その結果、法管轄区域間で規制にかなりの差異が生じている。実際、一連の自然実験が行われており、それぞれが大麻草をどのように管理するかについて異なったモデルを提示している。

結果の完全な評価には時間がかかり、より長期の研究が完了するまで、詳細な結果を知ることはできないであろう。しかし、これまで大麻草の法的規制された州を横断することで、さまざまなモデルの背後にある原理を比較し、その当初の影響のいくつかを検討することができる。本報告書では、主要な法的規制問題をテーマ別に検討し、今後の政策改革に向けて得られる教訓の一部を概説する。


主要用語

非犯罪化: 個人の薬物所持に対する刑事罰を取り除き、生産と供給が違法なままである(民事上または行政上の制裁措置が残る可能性がある)

合法化: 生産、供給、所持するために違法な薬物を合法化すること。

法的規制: 合法化された薬物の製造、供給、使用に関する管理を実施すること。


目次 

医療市場からの移行・・・5

規制モデルの決定・・・7

免許の付与・・・8

市町村管理・・・10

課税水準・・・12

購入可能な製品の制限・・・14

包装、広告およびマーケティングに関する要件の強化・・・15

犯罪記録の削除(抹消)・・・18

社会的公正措置・・・21

教訓・・・26


教訓(一部抜粋)

大麻の法的規制は、まだ比較的新しい政策イノベーションである。しかし、すでに我々は、異なる規制モデルがどのように異なる結果をもたらすかを理解することができる。今後、大麻草を合法化しようとする州は、どのようにして自らの規制を実施し、公衆衛生を最優先にして、小売市場に対して、地域社会を念頭に置いて開発し、課税を広範な社会的利益を達成に役立てることができるかについて、実際の実例を持っている。

大麻を全く同じ方法で規制している州は1つもない。しかしながら、他の州の事例や経験を参考にしながら、ある程度の「政策移管」があったことは明らかである。例えば、マーケティング及び包装に関する規制は、全国的に類似している。この傾向は、大麻を法的規制する際に、公衆衛生の保護、犯罪の削減、子どもの保護のためだけでなく、一部の州では、社会的公正を積極的に推進するために、同様の政策目標が存在することを浮き彫りにしている。

州は、過去の大麻禁止の法執行によって不均衡な影響を受けた個人や集団との関係を修復し、有意義な参加を確保する機会として、大麻規制の重要性を認識するようになってきている。また、新たに規制を導入する州が利用するためのケース・スタディを提供する様々な措置が現在講じられている。法的規制がより広範に展開されるにつれて、これが重要な焦点となり、当初から法的規制に組み込まれたものとなることを期待したい。


コメント
本学会は、大麻草およびカンナビノイド医療に関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

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ダウンロード: LinkIcon 合法化した州ー米国の大麻法的規制(PDFファイル)

厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査(2)


2020/08/04


2018年時点でのカナダの医療用および嗜好用大麻、米国カリフォルニア州とコロラド州の医療用および嗜好用大麻、オランダの医療用大麻、欧州の産業用大麻などについて調査分析した201ページの報告書です。

タイトル:危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究
(2019年3月)

解説:このタイトルだとこのテーマに関心の高い方が「大麻/カンナビノイド」で通常のWEB検索しても見つからないことが指摘できます。


研究要旨
我が国における薬物乱用では覚醒剤に次いで事例が多かった所謂危険ドラッグの販売ルートが取締りの強化で地下に潜行し、一見流通が減少したかに見えたが、手段の巧妙化などにより相変わらず摘発件数も多く、対策の強化が求められている。

一方、大麻の事犯が増加し低年齢層の大麻汚染が憂慮すべき事態となっている。大麻に関する不適切な情報が氾濫する中、平成 28 年度の特別研究に引き続き 29 年度からの指定研究の 2 年目として海外の動向を含め正確な情報を収集・分析して我が国における薬物乱用に対する施策確立に資する目的で調査研究を行った。また、我が国の現状に即した薬物濫用防止活動の様態とそれを可能にするための一般市民対象の乱用防止教育のあり方に関する社会薬学的考察を加えた。

解説:医療用大麻だけでなく、産業用大麻(マリファナの主成分THCが少ない品種)、成人向けの嗜好用大麻についても海外の調査を実施しており、規制緩和状況の全体像をつかもうとしています。


調査研究の結論:
大麻草の成長過程や栽培条件によって大麻固有のカンナビノイド類の量やケモタイプがどのように変化するかについての文献調査の結果及び欧州で利用が拡大している産業用大麻について遺伝子操作の利用まで含む栽培品種改良への努力と各国の利用状況についての文献調査結果は、今後、我が国の大麻の取り扱いに関する施策の決定で重要な役割を果たすことになるであろう。

欧州、カナダ及び米国で医療用大麻のみならず嗜好用大麻の規制が緩和されている状況を現地調査した報告は偏見を排した科学的に正確な情報であり、その内容は、大麻の有害性と有益性を文献調査し薬理学的に詳細な検討を加えた結果とともに、我が国における大麻関連法制度を評価し運用する上で重要な示唆を提供したといえよう。 一方、この指定研究の課題となっている薬物濫用防止の有効な手法の開発に正面から向き合い、社会薬学的アプローチの開発を目指して立ち上げられた研究会があと1年と区切られた中で独創的な普及・啓発の手段に到達できることを期待したい。

解説:国際条約の規制や、米国のスケジュールTという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みをつくって合法化しているという視点が抜けている。国連および各国の薬物政策が、懲罰的アプローチ(司法)から健康アプローチ(公衆衛生)へとシフトしている視点や非犯罪化政策と合法化政策の違いについて触れられていない。


目次

T. 総括研究報告書
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究・・・・・・・・ 1
井村伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)

U. 分担研究報告書
1.成長過程や栽培条件における大麻成分の違い(文献情報)・・・・・・・・・ 13
花尻(木倉)瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部 室長)

2.欧州における産業用大麻の現状―栽培品種と各国の利用状況 ・・・・・・・ 21
花尻(木倉)瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部 室長)

3.欧州における医療用大麻の現状(オランダ)・・・・・・・・・・・・・・・ 29
花尻(木倉)瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部 室長)

4.米国における大麻規制の現状:
大麻合法化後のカリフォルニア州とコロラド州の社会的影響について ・・・・ 39
舩田正彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

5.カナダにおける大麻法改正後の大麻の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・ 53
鈴木 勉(星薬科大学薬学部)

資料1 カナダ政府認定大麻生産会社 CanniMedの取り組み
資料2 ポット(大麻)使用時の運転 よくある質問(FAQ)
資料3 大麻使用と運転 政策決定のためのQ&A
資料4 オンタリオ州 教育者用「大麻」情報
資料5-1 大麻トークキット 十代の子どもたちとの対話
資料5-2 大麻トークキット 十代の子どもたちとの対話

6.大麻/カンナビノイドの神経精神薬理学的作用と創薬への可能性に関する
調査研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141
山本経之(長崎国際大学大学院薬学研究課 薬理学研究室)

7.危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法に関する調査研究・・ 161
鈴木順子(北里大学薬学部 社会薬学部門教授)


引用:厚生労働省科学研究成果データベース
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究
H29-医薬-指定-009 平成30(2018)年度
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201824018A


解説:著者の調査分析レポートだけでなく、参考とした資料の翻訳を掲載しているのは評価できる。医療用大麻を含め、この分野の一次情報に触れる機会がない日本で、資料紹介していることは非常に価値が高い。

次回に同分野の調査研究するときは、これらの情報をアップデートし、規制緩和に関する社会経済的な分析、社会心理的な分析、スティグマ(負の烙印)の問題に対する分析をすべきである。


FileName:
LinkIcon 2018-1 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究

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LinkIcon 2018-2 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究

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LinkIcon 2018-3 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究

厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査(1)


2020/07/10


2018年10月のカナダの嗜好用大麻の解禁の話題、2017年のヨーロッパの産業用大麻国際会議に視察したときの話題、アメリカの医療用大麻、嗜好用大麻、CBDの州規制の状況について調査結果を261ページにまとめた報告書です。


タイトル:危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2018年3月)

解説:このタイトルだとこのテーマに関心の高い方が「大麻/カンナビノイド」で通常のWEB検索しても見つからないことが指摘できます。

【研究要旨】
平成 27 年夏以降店舗での販売拠点を失った危険ドラッグは販売手段がインターネット利用販売等に移り、新種の化合物の出現、あるいは大麻の使用増加等の現象が認められている。従ってこれら物質に対する新たな対策が求められるのは当然である。特に大麻は我が国においては覚醒剤に次いで濫用されている薬物であり、犯罪検挙状況から若年層での濫用割合が多くなる傾向が見て取れる。平成 29 年 1 月までの半年間では小学生、中学生、高校生による大麻濫用事例が発生するという危機的状況となっている。

そこで本研究事業においては 28 年度の特別研究の成果を引き継ぎ、大麻の薬理学的、臨床薬理学的知見及び大麻使用の規制状況の推移に関する国内外の最新の情報を収集し分析して、その結果に基づき国民に大麻の有害性に関する正確な知識を普及するための資料を提供することを目的としている。

具体的には大麻に関する規制の緩和が進行中の米国、カナダ、EU 等の制度設計の状況や医療用大麻、産業用大麻の最新の使用状況を精査・分析するとともに、国内での普及・啓発をより効果的に行うための基礎となる「地域に根差した薬物濫用防止意識の醸成」を目指した一般市民対象の濫用防止教育手法の探索及び地域包括ケア単位を利用した薬物濫用防止活動の可能性について検討することとした。

解説:医療用大麻だけでなく、産業用大麻(マリファナの主成分THCが少ない品種)、成人向けの嗜好用大麻についても海外の調査を実施しており、規制緩和状況の全体像をつかもうとしています。


【今後の課題】
我が国においては大麻の医療目的使用は認められていない。海外の大麻規制状況の調査結果ら、大麻の医療目的の使用(「医療用大麻」の使用)及び「産業用大麻」の使用については規制の緩和・合法化の流れがあることは否めない。

しかし、これまでの大麻の生理活性についての国外での臨床医学的検討結果は直ちに我が国で「医療用大麻」の規制を緩和するための evidenceとしては十分とは考えにくく、更なるより規模の大きい精細な臨床疫学的研究が必要であることが分担研究者による海外調査や文献調査によっても指摘されている。

欧米各国の国民医療費の節減、関連産業の収益増、国家・自治体の大幅な税収増加などの社会経済的状況が大麻規制緩和の要因になっているように見受けられる。このような視点からの調査、解析が今後求められると考えている。


解説:国際条約の規制や、米国のスケジュールTという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みをつくって合法化しているという視点が抜けている。


目次

I. 総括研究報告

危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究 ・・・・ 1
井村伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)

II. 分担研究報告

1. 大麻の成分に関する文献調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
花尻瑠理(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第 3 室)

2.欧州における産業用大麻の現状について ・・・・・・・・ 41
花尻瑠理(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第 3 室)

3.カナダにおける医療用大麻の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
鈴木 勉(星薬科大学薬学部)

資料1Cesamet セサメット(ナビロン)制吐作用を有する合成カンナビノイド製剤 
資料2Sativex 大麻草由来THC/CBDを有する多発性硬化症痛み改善薬
資料3CanniMed 医療用乾燥大麻製品、医療用大麻オイル製品
資料4HerbShop  
ペットのための大麻に、マリファナ&ブレックファスト、大麻に適した運動
資料5PhrPrac 大麻療法で患者をどのように手助けできるか
資料6カナダ政府HP 大麻の合法化および規制
資料7大麻法Q&A カナダ「大麻法」の導入: 関連する質問への回答 

4.米国における大麻規制の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161
舩田正彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

5.大麻関連成分の生体作用に関する文献調査・・・・・・・・・・・・・ 169
カンナビジオール(CBD)の生体に及ぼす影響について
舩田正彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

6.大麻の有害性と医療適用への可能性に関する調査研究 ・・・・・・・ 175
山本経之(長崎国際大学薬学部)

7. 薬物濫用防止のより効果的な普及啓発に関する社会薬学的研究 ・・・ 191
鈴木順子(北里大学薬学部薬学教育研究センター 社会薬学部門)

V. 参考資料

ドイツ連邦共和国 麻薬取引に関する法律 (黒澤睦 監訳)

引用:厚生労働省科学研究成果データベース
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2018年3月)
平成29年度総括・分担研究報告書
厚生労働行政推進調査事業費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201824018A

解説:著者の調査分析レポートだけでなく、参考とした資料の翻訳を掲載しているのは評価できる。医療用大麻を含め、この分野の一次情報に触れる機会がない日本で、資料紹介していることは非常に価値が高い。
次回に同分野の調査研究するときは、これらの情報をアップデートし、規制緩和に関する社会経済的な分析も行うべきである。

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ダウンロード: LinkIcon 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2018年3月)

大麻による健康被害研究の決定版。ニュージーランド疫学調査から得られた知見


2020/07/09


2020年9月19日(土)、ニュージーランドでは、大麻合法化の是非を問う国民投票が行われます。国家単位で大麻の合法化が国民投票にかけられるというのは世界で初めてのことです。

https://www.referendums.govt.nz/?gclid=Cj0KCQjwuJz3BRDTARIsAMg-HxVLuU0hzLD8pinPK0iDd1F_U8Cr7BlMm745YWoyRZtkShz2W_M2yHIaAlhpEALw_wcB

賛成派と反対派が拮抗している中で、投票に向けて、オタゴ大学の Richie Poulton 教授らが、国民の判断材料とするために、大麻に関する健康被害のデータをまとめたレビュー論文を発表しました。この内容が包括的かつ優れているため、今回、教授の許可を得て、日本語にしてご紹介します。(翻訳全文は、下記PDFファイルをダウンロードしてください)

原文
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03036758.2020.1750435


タイトル:ニュージーランドにおける嗜好大麻の使用とその影響ー2020年国民投票に向けて

1:はじめに
大麻が人体に与える影響の研究において、実はニュージーランドは世界最高の優れたデータベースを有しています。というのはダニーデン研究とクライストチャーチ研究という、1970年代に始まった1000人規模の二つのコホート研究に登録された参加者の多くは、大麻の人体への影響を評価するに十分な量と期間、大麻を使用していたからです。このデータベースを用いて過去に行われた数々の解析結果をサマライズする形で、今回の論文は書かれました。

ダニーデン研究は、ニュージーランドのダニーデン近郊で 1972年 4月 1日から 1973年 3月 31日までに生まれた 1,037人(地域の全出生数の 91%)を、その後の人生の各段階(3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, 18, 21, 26, 32, 38, 45歳)毎に、今日まで追跡しています。最新の調査でも登録者の 94%がフォローされており、93%が MRI 検査も受けています。調査対象群はニュージーランド南島の居住者の ”縮図” として、あらゆる社会背景の人々を含んでいます。人種的には主に白人に占められていました。

もう一つのクライストチャーチ研究は 1977年 4月から 8月の間にクライストチャーチ近郊で生まれた全人口の 97%に相当する 1,265人(男性 635人、女性630人)を、一生涯に渡って追跡するという研究です。これまでに出生時、生後4ヶ月、1歳から16歳までの毎年、および18歳、21歳、25歳、30歳、35歳、40歳時に調査が行われています。参加者の大半は民族的にはヨーロッパ由来ですが、13%はニュージーランド先住民(マオリ)でした。

2:研究デザイン上の長所

3:研究デザイン上の短所

4:大麻の喫煙率について

5:メンタルヘルスへの影響
 A:依存症の診断について
 B:大麻とハードドラッグの関係
 C:統合失調症様の精神障害
 D:その他の精神障害

6:身体的な健康への影響
 A:呼吸器系への影響
 B:口腔衛生への影響
 C:心血管系への影響
 D:認知機能への影響
 E:教育への影響
 F:雇用への影響
 G:運転への影響
 H:法適用の偏りについて

I:結論

現在、中年期に差し掛かっているニュージーランド人の大半が、人生のどこかの段階、特に10代後半から20代にかけて大麻を使用していました。大麻使用者の大半は咎められることもなく、深刻な健康・社会被害とも無縁でした。

大麻使用にまつわるリスクは

(1) 10代の早期から使用開始
(2) 使用頻度が高い
(3) 依存している

上記のいずれかに当てはまる場合に限られていました。

これらに当てはまるごく一部の人々は、以下のようなマイナスの影響を被っていました。

a. 精神機能障害
b. 認知機能低下
c. 呼吸機能と口腔環境への影響
d. 学業、雇用と就業、生活保護受給、逮捕投獄などの社会的影響

しかし、これらの影響は全て、大麻が違法であった時期にもたらされたことを意識することは非常に重要です。大麻を違法にしておくことは、使用者を大麻から遠ざけることにつながらず、逮捕投獄も使用減少にはつながりません。さらに薬物を違法にしておくことは、使用者を社会的・医療的支援から遠ざけます。厳罰を処す国では仮に法律が改変されれば、医療へのアクセスが増えると見込まれています。さらにこのレビューで述べたように、ニュージーランドの大麻取締法は人種的な観点から偏りをもって運営されています。著者らは四半世紀に渡って、大麻使用に伴う健康被害の問題は司法問題でなく健康問題として扱われるべきで、科学に基づいた予防と早期治療の重要性を説き続けています。例えば、年齢ごとに適切な教育を施すことが考えられますが、これは大麻が違法であるがゆえに実現していません。

今回、ニュージーランド政府は国民投票において、単純な二択を用意しました。

A:現状を維持する
B:完全合法化

の二つです。

現在の大麻登録管理法の草案は以下の目的でデザインされています。

1. 大麻の違法供給を制限すること
2. 20歳以上のみに使用を制限し未成年を保護すること
3. 大麻供給業者にライセンスを発行しTHC濃度、広告、販売方法を規制すること
4. 大麻の公衆衛生上の問題を伝え、使用者を保護すること
5. 大麻関連で困っている人が医療・社会サービスへアクセスしやすくすること

現在の法案は THC濃度の上限や、企業の利益誘導に繋がらないように配慮されていますが、価格設定や大麻関連前科の抹消の有無に関しては未定です。

著者は有権者に、最低限、単純使用に対する罰則の撤廃に関して検討してもらいたいと考えています。なぜなら、犯罪歴は人生のチャンスを著しく損ない、雇用に影響をもたらし、21世紀の世界において移動の自由を減ずるからです。犯罪歴は差別、偏見、社会的制裁に直結します。

また、理論的には、ミニマリスト的スタンス[訳注:民間の活動に対する政府の関与を最低限にすべきという立場]をとれば、第3の選択肢があったかもしれません。

それは

C:全面合法化には反対だが単純使用は非犯罪化する

という選択肢です。この選択肢にはいくつかのメリットがあります。

1. 一般的な行動(大麻の喫煙)で人生の可能性が制限されるリスクがなくなる
2. カナダやUSの各州、ウルグアイなどの先進地域の政策の影響を観察、判断する時間的な猶予が生まれる
3. 法律の変化によって使用量や乱用率に大きな変化がないことを確認できる
4. 使用増加に伴うリスクの増加に対応する猶予が得られる
5. 制度設計について詳細な議論を行なう猶予が得られる
6. 大麻に対する現実と思い込みをすりあわせる時間が得られる

合法化が選択されたとして、政府には注意深い運用を求めたいと思います。合法化された世界ではアルコール業界のような十代に向けたポップな商品開発が予想されます。この点について研究から得られるメッセージはシンプルです。商業主義から子供達が守られることが最優先されるべきでしょう。


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LinkIcon ニュージーランドにおける嗜好大麻の使用とその影響ー2020年国民投票に向けて

過去10年間の国際的な薬物政策について、国連全体の知見を整理した報告書の和訳を公表。


2020/05/22


長年、国際的な薬物政策では、3つの国際条約を基盤とする薬物統制システムと、国連エイズ合同プログラムの現場の声としての人権擁護システムがお互いの目的のために矛盾した取組みをしていました。前者は懲罰的アプローチ、後者は公衆衛生アプローチと呼ばれています。

しかし、2001年以降、国連システム内の決議や政治宣言で、人権擁護と健康対策に焦点を当てた公衆衛生アプローチに変化してきました。2016年の世界薬物特別総会(UNGASS2016)の成果文書を踏まえ、2018年には、国連システム事務局長調整委員会(CEB)にて、「効果的な国連機関間の連携を通じた国際薬物統制政策の実施を支援する国連システム共通の立場」を全会一致で支持し、この年に初めて国連全体で、実質的に人権擁護と健康対策に焦点を当てた公衆衛生アプローチが薬物政策の中心となりました。

本レポートは、国連システム事務局長調整委員会(CEB)がタスクチーム(作業部会)を編成して、2019年3月14日から22日にかけてオーストリア・ウイーンで行われた第62回国連麻薬委員会(CND)の会合で発表されたものです。

本学会がテーマとするカンナビノイド及び大麻については、下記のように指摘しています。

「情報に基づいた政策決定を行うために必要な科学的根拠を生み出し、大麻に関連するものを含む薬物規制の新たなアプローチのリスクと利点をよりよく理解するためには、国際的な基準と最優良事例に基づいて、国、地域、世界レベルでのデータ収集、分析、研究に投資することが必要である。」付録 II 薬物関連事項に関する国連システムによって生み出され、得られた知見に基づく主要メッセージの概略より抜粋。

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。


タイトル:
過去10年間に私たちが学んだこと:
国連の薬物関連制度によって得られ、生み出された知見の要約

発行元:国連システム事務局長調整委員会(CEB)
発行日:2019年3月

序章
1.はじめに

2.規制薬物のアクセス及び使いやすさを含む健康
2.1概要
女性の薬物使用
医療目的、特に疼痛治療のための規制薬物へのアクセス
健康に対する権利
2.2違法薬物使用及び薬物使用障害の防止並びに異なるレベル及び部門におけるより健康的な集団の促進
2.3. 薬物使用障害の治療、リハビリテーション、回復、社会復帰
2.4 薬物使用による健康への悪影響の最小化:HIV、ウイルス性肝炎、その他の血液感染症及び結核の予防、治療及びケア
2.5 刑務所における薬物使用、依存、注射、予防及び治療
予防と治療の費用対効果と投資収益率
汚名(スティグマ)と薬物政策の汚名は薬物対応の有効性に影響を及ぼす

3. 効果的な法執行と脆弱なコミュニティの保護
3.1 薬物犯罪の防止
3.2 薬物犯罪への対応
3.3 麻薬及び向精神薬の取引の防止
3.4 比例的かつ効果的な政策と対応(薬物使用の投獄と非犯罪化/非犯罪化       の代替に関する科学的証拠を含む)
3.5 刑事司法手続及び司法分野に関する法的保証及び保障措置(法的援助と公平な裁判を受ける権利を含む)
3.6 薬物取引と平和・安全保障との関連性への対応(マネーロンダリング、汚職、武力紛争、政治的脆弱性及び安定性)

4. 代替開発

5. 分野横断的 (又は局所的)な問題
5.1 新精神作用物質(NPS)
5.2 薬物の非医療使用
5.3 薬物関連の活動におけるインターネットの利用
5.4 社会的包摂
5.5 情報 (モニタリング、疫学、統計)

6. 国際的な薬物政策に関する条約及び決議

7. 最終見解

付録 I 効果的な国連機関間の連携を通じた国際薬物統制政策の実施を支援する国連システムの共通の立場
付録 II 薬物関連事項に関する国連システムによって生み出され、得られた知見に基づく主要メッセージの概略
付録 III 薬物関連に関する国連機関間の共同プログラムの例

国連システム
「国連システム」は、国連ファミリーに属する機関で構成される。それには国連事務局、国連の諸計画や基金、専門機関、その他の関連機関が含まれる。専門機関はそれぞれの特別協定によって国連に結びついており、経済社会理事会および/もしくは総会に報告する。

国連システム事務局長調整委員会
国連システム事務局長調整委員会(United Nations System Chief Executives Board for Coordination(CEB))は、国連システムの最高の調整機関である。事務総長が議長を務め、そのメンバーは国連の主要な機関のリーダーたちである。加盟国の共通の目標が達成できるように国連システムの活動を調整する。年に2回開かれ、その作業はハイレベル計画委員会とハイレベル管理委員会の支援を受ける。

参加機関は下記の31機関。
国際連合(UN)、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、国際民間航空機関(ICAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、国際海事機関(IMO)、国際電気通信連合(ITU)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人口基金(UNFPA)、国連人間居住計画(UN−HABITAT)、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN−Women)、世界観光機関(UNWTO)、万国郵便連合(UPU)、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)、世界知的所有権機関(WIPO)、世界気象機関(WMO)、世界銀行(World Bank)、世界貿易機関(WTO)、国連プロジェクトサービス事務局(UNOPS)、国際移住機関(IOM)


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LinkIcon 2019年国連システム 過去10年間に私たちが学んだこと

カンナビノイド定量化のための標準試験法の性能要件の和訳を公表


2020/05/14


カンナビノイドとは、大麻草に含まれている特異的な成分の総称です。現在までに100種類以上発見されています。2019年に施行された米国改正農業法で、ヘンプ(低THC品種の大麻草)の栽培が合法化されたことに伴い、その大麻草に含まれるカンナビノイド分析を実施する試験室の性能要件が求められていました。

分析化学分野の規格・標準化などで実績のあるAOAC INTERNATIONALでは、大麻草分析科学プログラム(CASP)を立ち上げて、2019年9月に公式基準を発表しました。この基準は、米国農務省のヘンプ生産プログラムの暫定暫定規則(2019年10月29日)のガイドラインで試験室が満たすべき基準として指名されたものです。

米国連邦法では、ヘンプをTHC濃度が0.3%未満と定義されており、主にCBD製品に加工するために栽培されています。

カンナビノイド定量化のための標準試験法の性能要件では、14種類のカンナビノイドを取り上げ、定量限界(LOQ)を0.05%以下、分析範囲を0.05〜5%(CBD/CBDAを除く)とし、回収率や標準偏差などを定めています。

今後、AOAC INTERNATIONALでは、大麻草の植物中の水分測定、大麻草及びその製品のサルモネラ菌の検出、重金属の定量などの標準試験法などを規格化していく予定です。

米国内ヘンプ生産プログラム(米国農務省)
https://www.ams.usda.gov/rules-regulations/hemp 

AOAC INTERNATIONALについて
 分析科学分野で分析法のバリデーション,分析の実務,精度管理等に携わる官民の科学者,行政官,その他組織から構成されており,米国を中心に約90ヶ国,3,000名以上の会員がいる。設立は1884年,米国内の肥料検査法統一化組織に遡り,1965年,Association of Official Analytical Chemistsとなり,分野が拡大しました。1970年には北米以外の会員加入,1980年には地域セクションの設立と活動の場を広げ,現在(2014年4月),北米,南米,欧州,アジアに16のセクションがある。
https://www.aoac.org/   

大麻草分析科学プログラム
https://www.aoac.org/scientific-solutions/casp/  


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LinkIcon カンナビノイド定量化のための標準試験法の性能要件

大麻及び大麻関連物質のWHO勧告と日本国政府の立場


2020/05/06


2020年3月2〜6日にオーストリア・ウィーンで行われた第63会期国連麻薬委員会(CND)において、大麻及び大麻関連物質のWHO勧告に対する投票を延期しましたが、事前準備の段階で、各国がWHO勧告に対しての意見および賛成、反対、保留、どちらでもないという立場を表明しています。

国連麻薬委員会(CND)で投票権のある国は、53カ国あり、そのうち16カ国が既に医療用大麻が合法化しています。

<勧告の内容と主要国と我が国の立場>

●大麻および大麻樹脂

勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:賛成
日本国          :保留

●ドロナビノール(Δ9-THC)

勧告5.2.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)及びその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する。
勧告5.2.2:ドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択することを条件に、1971年向精神薬条約の附表IIからドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を削除する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:賛成
日本国          :どちらでもない

●テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC異性体)

勧告5.3.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている6つの異性体を指す)に1961年麻薬単一条約の附表Iを追加する。
勧告5.3.2:テトラヒドロカンナビノールを1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている六つの異性体を指す)を1971年向精神薬条約から削除する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:賛成
日本国          :どちらでもない

●大麻エキスおよび大麻チンキ

勧告5.4:大麻エキス及び大麻チンキを1961年麻薬単一条約の附表Iから削除する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:賛成
日本国          :どちらでもない

●カンナビジオール製剤

勧告5.5:1961年麻薬単一条約の附表Iに、「主たる成分がカンナビジオールで、Δ-9-THCが0.2%以下の製剤は国際的な統制を受けない。」という脚注を追加する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:保留
日本国          :反対

●大麻およびドロナビノール(Δ-9-THC)の製剤

勧告5.6:化学合成または大麻由来の製剤として製造されたΔ-9THC(ドロナビノール)を含有する製剤であって、一つまたは二つ以上の成分を含む医薬製剤として配合しており、かつ、Δ-9-THCドロナビノール)が、容易に用いうる手段により又は公衆衛生に危険をもたらすような収量で医薬製剤を回収することができないものについて、1961年麻薬単一条約の附表IIIに追加する。
EU加盟国/米国を含む25カ国:反対
日本国          :反対


<CND事務局メモとして公開された我が国の立場>

8.日本国政府は、附表調整の結果が十分に評価されるまで、附表調整の勧告に関する投票はCNDにより再度延期されるべきであると述べ、個々の附表調整の勧告について以下の点に留意した。

(a) 日本政府は、1961年条約の附表IVから大麻及び大麻樹脂を削除することについて、大麻の医療上の使用の有効性に関する科学的根拠が不十分であったこと、大麻の使用に対する国民の認識に影響を及ぼし、規制の緩和や公衆衛生上の危険をもたらす可能性があることから、明確な立場をとることができなかった。

(b) 日本政府は、加盟国による条約の規制措置の実施に関する新たな基準及びガイドラインが最初に策定される限り、1961年条約の附表Iへのドロナビノール及びTHC異性体の追加並びに1971年条約からのこれらの物質の削除を受け入れることを検討することができる。

(c) 1961年条約から「エキスとチンキ」が削除されたことについて、日本国政府は、勧告を受け入れることを検討することはできるが、まず、国際的な薬物統制条約の実施及び運用への影響を分析したい。

(d) 日本政府は、重大な懸念が残っているため、カンナビジオール製剤に関する脚注の挿入を受け入れることはできないと述べた。「preparations」という用語は非医療用製品にも適用されるため、法執行の能力を損なう可能性がある。さらに、この勧告にはTHCの管理を緩める可能性のあるリスクが含まれており、これは公衆衛生へのリスクを不注意に増大させる可能性がある。また、THCの推奨0.2%閾値は、将来のCBD医薬品の研究と開発の障壁となる可能性がある。したがって、閾値は特定されるべきではなく、各締約国の薬事規制に委任されるべきである。WHOが大麻植物原料の総重量に占める乾燥重量の割合を示していることから、閾値についてはさらに明確化する必要がある。

(e) 現時点では、ドロナビノール製剤を1961年条約の附表IIIに追加することは、「製剤;preparation」及び「医薬製剤;pharmaceutical preparations」の用語が曖昧であることから、THCの乱用につながる可能性があるため、日本政府としては受け入れられなかった。

参考サイト
国連麻薬委員会(CND)の第63会期
https://www.unodc.org/unodc/en/commissions/CND/session/63_Session_2020/session-63-of-the-commission-on-narcotic-drugs.html

※他国の詳しい内容は、下記の仮訳ですが、日本語訳となったPDFファイルをご参照下さい。

WHO/ECDDにおける大麻及び大麻関連物質の国際的な議論が活発になるつれて良質なレポートが多数発行されています。すべてのレポートを翻訳することはできませんが、少しでも多くの医療従事者の目に触れるよう取り組んでいきます。
※翻訳対象となったレポートの中身については本学会のなんらかの社会的立場を表明するものではありません。


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LinkIcon 第63会期国連麻薬委員会(CND)の時点での評価及び立場(投票国53カ国中)

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LinkIcon 第63会期CNDスケジュール勧告事務局メモ1(2020年1月)

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LinkIcon 第63会期CNDスケジュール勧告事務局メモ 各国編(2020年2月)
 一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会事務局
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生二丁目16番1号
聖マリアンナ医科大学脳神経外科学講座内